オリジナル①
夢小説設定
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それから数ヶ月。季節は桜の季節から雨の季節に変わっていた。
中間試験が近づくにつれて、教室全体が妙に静かになってきた。
私はというと……筆記用具を持つ手が重かった。
特に数学。文字と数字がぐるぐるするばかりで、公式はすぐに頭から抜けていく。
「ねえ、宮坂。今日、放課後、うち来る?」
彼女が何気ない顔で言った。
「数学、私得意だし、教えてあげようかって」
「……ほんとに? それ、助かる」
彼女の部屋に行くのは、これが初めて。
少し楽しみな自分がいた。
***
彼女の部屋は、私の部屋と間取りがほとんど同じなのに、どこか落ち着いた空気が流れていた。
机の上に整然と並んだ教科書とノート。
綺麗な字で書かれた解説に、ちょっとだけ感心する。
「ここの因数分解、パターンがあるから、慣れれば大丈夫だよ」
「うん……うん……なるほど、あっ、それならわかるかも」
説明はすごく丁寧で、わかりやすくて。
その声を聞いてると、不思議と焦りも薄れていく気がした。
「じゃあ、ちょっと休憩しよっか」
彼女がそう言って、紅茶を淹れてくれた。
カップを受け取るとき、指先がふれて、また心臓が跳ねる。
そして、彼女がぽつりと呟いた。
「今日、親いないんだ」
一瞬、時が止まった気がした。
意識しちゃいけないのに、意識してしまう。
紅茶の湯気が、やけにまぶたに染みる。
「……えっ……」
情けない声が漏れたのを、どうにかごまかそうと視線をそらしたそのとき、
「……冗談だよ。勉強、再開しよ」
彼女はくすっと笑った。
私はカップを持つ手を慌てて机に戻し、ノートを開くふりをした。
でも。そのあとからのページは、何を見てもまったく頭に入ってこなかった。
“冗談だよ”――
たったそれだけの言葉が、心に残って離れない。
数字も文字も、彼女の横顔にかき消されていく。
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