Unbelievable girl
name change
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今思えば若さゆえの出来事だったんだろうけど。
こうして色んな人に関わる仕事に就けたことは幸福と呼べるのかも知れない。
2002年1月20日
祖父に連れられて、早めの誕生日プレゼントを買ってもらうために都内を歩いていた。幼い頃に父と母を失った私からしてみれば、隣を歩く祖父だけが私の家族で。お互いに言葉足らずなところはそっくりなものだから、会話は少ない。だけど、祖父の手は変わらず温かくて私を包み込んでくれる優しさを感じられるから好き。そんな祖父とのひと時を私に声を掛ける声に驚くのは仕方ないと思う。
「君、芸能界とかに興味ない?」
『・・・』
あからさまなスカウトは結構受けて来た。自分で言うのもなんだが、この歳にしては大人びた顔立ちに身長も女子にしては高いもので、同学年の同性の子たちからは「王子」なんてあまり嬉しくないあだ名で呼ばれているし、同学年の男子からはよくケンカを売られるものだから学校に行くと何かしら怪我をしたりさせたりするものだから、担任の先生は勿論、祖父に怒られる事もしばしば。と意識をループさせていると。私だと話にならないと判断したのかスカウトの人は祖父に声を掛けなおす。
「孫がそんなにいいんですか。」
「ええ、原石そのものです。是非ともオーディションだけでも。」
「・・・」
『おじいちゃん、?』
考え込む仕草を見せる祖父。そんな祖父の手にはスカウトの人が渡したであろう名刺。その名刺を見て祖父は私と名刺を交互に見てから一言。
「オーディションだけならいいでしょう。」
『え!』
「ありがとうございます。このままご案内してもよろしいでしょうか?今日ちょうどこの後ありまして。」
「儂も同行してもいいなら行きましょう。」
『おじいちゃん、ねえ!』
繋いだ手をそのままに祖父は私の意思を無視して、スカウトの人の後をついていく。普段なら私の意思を尊重して、スカウトの類は断ってくれるのに今回はなんで了承したのかわからずに祖父を呼ぶが、祖父は「お前の世界が変わるかも知れない。」と意味深な事を言った後に滅多に見れない笑顔で笑うものだから黙ってついて行くしかなかった。だって、祖父の笑顔は私は大好きだからである。
『おじいちゃん、私の性別わかってるよね?』
「わかってる。でも、オーディションだけでも受けて驚かせればいい。」
『楽しんでる?』
「まさか。孫の成長の為に来ただけだ。」
私と祖父が案内された場所には私と同い年の子だったり年上の子だったりと何人かいるが全員「男の子」である。ちなみにいうと私は「王子」と言うあだ名を貰う位なので間違えられることはあるが、正真正銘の「女の子」なのである。なのに、祖父は帰る気は一切ないし、私たちを案内してくれたスカウトの人は私に番号の入った名札を渡して列に並ぶように指示して居なくなってしまうし。
「なに、お前。
『・・・』
「おい、聞いてんのかよ!」
『煩い。集中してるから話かけないで』
隣に立つ恐らく年上の子に喧嘩を売られるけど、祖父が意味があって私をこのオーディションに混ざらせたのならやることは一つ。集中している私に声を掛ける相手には悪いが、相手をしている暇はない。何を審査するのかわからない以上、私より先にオーディション内容を受けている子たちの動きや審査員の視線を追って理解するのが先決だからだ。
「ッチ、大した顔でもねーくせに。生意気言ってんじゃねぇよ。」
折角私が無視しているのに、私の態度が気に食わなかったのか隣の奴は暴言の嵐。なんとも不愉快である。だから決めた。此奴も含めて今日オーディションを受けた奴らの息の根を止めようと。
『実力で黙らせる系です。』
私たちの番が来て軽く自己紹介と一言と言われたので、その一言だけ言うと、遠くで見守っていた祖父は私の言葉に口角を上げて笑っていた。今日は、祖父の笑顔が見れる良い日だなと心の中で思いながらざわつく周りを無視して、流れてくる曲を自分のモノにしようと一心不乱に教わったダンスを披露する。勿論、同じ組の子たちも含めてこの場に来たオーディションを受けに来た奴らを食らう勢いで。
「本気出すのも大概にせい。」
『だって、ムカついたんだもん。』
結果を言えば、満点合格。その後スカウトの人が戻って来てすぐに事務所に所属してほしいと言われたものだから祖父が「孫は
「運命のいたずらってやつだね。まさか、Youの孫が此処に来るとは」
「久しいの、老けたんじゃないか?」
「んな、!まだまだ現役だよ。僕は!」
スカウトの人が連れて来たのだから社長さんなんだろうが、祖父と知り合いのようで、祖父はおちょくるようにその人と会話を進める。祖父の交友関係を間近で見る機会がなかった私は驚きつつも静かに祖父の隣でその人を観察する。するとその人と目が合うとその人は目を一瞬だけ大きくした後、サングラス越しでもわかるくらい目に涙を溜めて泣く始めるものだから、不安に思い祖父に助けを求めようと視線を送ると。
「泣くほど似ておるじゃろ。」
「うん。似ているね。—生き写しかと思ったよ」
『おじいちゃん、?』
誰の生き写しなのかと疑問に思ったが祖父とその人の空気感を壊すのはいけない気がして大人しくすることにした。数分後、落ち着いたその人—ジャニさんは祖父と古くからの友人で、私の顔立ちが亡き父にそっくりで懐かしさから泣いてしまったらしい。祖父がなぜ今回このオーディションを受けたのか理由も同時にわかってほっとしたのも束の間。
「Youはこの世界で一番になる気はないかい?」
『・・・でも、ここ男の子の事務所だ、よね?』
「無理に奴に敬語使わなくていいぞ。」
「僕、社長だからね!最低限のマネーはさせてよね!!」
『やれるだけやってみたい。』
祖父の言葉がこびりついて離れなかった私は決めた。この世界で、いろいろこれから起こるであるこの世界で私を証明してやろう、と。
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