Ⅰ
name change
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#ifのお話。和解しないまま兄に内緒で付き合う2人。
「莉緒」
そう彼女の名前を呼ぶと俺が惚れた笑顔はなく、目だけは俺を映してくれる彼女の反応に少しだけ胸が痛む。が、自分の事を好いて付き合う事を了承してくれたあの頃の彼女を頭に思い浮かべながら、隣に座る。
『涼太くん、お仕事は?』
隣に座ると同時に表情を取り戻した顔で俺を見る彼女。その手にはボロボロになった紙。どうやら俺が声を掛けるまで彼女の仕事でもある小説家としての新しい作品のネタ作りをしていた様だ。結果はあまり芳しくないけれども。彼女と初めて出会ったあの頃では考えられない距離感と関係性の変化にふと、疑問に思った事を尋ねることにした。
「午前中までだよ。それよりもひとつ聞いてもいい?」
『なあに?』
「どうして俺の告白を受け入れてくれたの?」
『・・・』
ずっと疑問だった。彼女からすれば俺を含めたほかのメンバーは彼女がこの世で唯一無二と言える兄である伊緒を彼女から奪った存在に等しいのに、彼女は俺の恋慕に拒絶はせずに、自分も同じ気持ちと受け止めて告げてくれたのだから。条件としては伊緒には内緒と言う事で、彼女と付き合う事を知っているのはメンバーの中でも俺の幼馴染である翔太だけである。
『涼太くんはメンバーの中でも私を伊緒と混同せずに、私を見つけてくれたから。だから、最初は戸惑ったけど。気づけば、あれだけ見るのが嫌だった涼太くんたちが出てる音楽番組とか、冠番組?も観る様になって、・・・自分でもいつの間にか、涼太くんが出てる番組を録画したり、締切近い時とかも、涼太くんの声を聴きたくてCD屋さんに行ったりしてシングル?アルバム?を買ってる自分がいたの。』
あまり自分の感情を文字以外で表すのが苦手な彼女の口から聞いた言葉たちは俺の燻っていた不安を取り除くには十分過ぎる威力で、気づいたら彼女の華奢な身体を引き寄せて強く抱きしめていた。
『んわ、涼太くん?』
「好きだよ。莉緒・・・誰よりも。」
『わ、わ・・・耳はだ、め。うん、///ッ、ひゃ』
「耳弱いもんね。ねえ、ネタ作りやめて、俺と甘い事しない?」
『甘い、こと?ちゅー?』
抱きしめたまま俺の腕の中で考え込むように俺の言葉の意図を理解しようと言葉を紡ぐ彼女の唇を彼女の言葉通り塞いだのは言わずもがなである。
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