Ⅰ
name change
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*考えすぎて変に意地張って八方塞がりになる翔太。
「・・・」
『・・・・・・』
メンバー1、意見がぶつかることが多い俺ら。そんな俺らが他のメンバーの制止を無視して睨み合うのには理由がある。それはレコーディングでの出来事で紗雪のアドバイスを無視して強引に喉を傷める歌い方で俺が歌ったからだ。俺だっていつもだったら素直に紗雪のアドバイスを受け止めて挑むのだが、前日に見るつもりもなかったファンのコメントに頭から離れなくて素直に受け入れられなかったのだ。俺よりも遥かに技術も歌唱力もある紗雪の言葉が。—”俺より紗雪の方がメインボーカルとしていい”と言う言葉に俺は縛られてしまった。
『翔太の好きにすれば。』
「なんだ、それ。」
『だって私の指図は聞きたくないからあんな歌い方したんでしょ?』
いつもなら名前を呼ばれる事に心地のよさは感じても今呼ばれた名前を俺の胸をぐさりと傷つけるにはキツくて。突き放された事は今まで喧嘩した中では今回が初めてで。売り言葉に買い言葉だったのだとしても、冷めた顔で声で言われるのに耐え切れなかった俺は逃げる様に楽屋を出て行った。
「今日のレコーディングやばかったね」
「あ~、渡辺くんだっけ?」
「橘さんが止めなかったらあれ喉潰してたでしょ。」
「だとしても、レコーディングって分かっていて調整怠った彼も悪いでしょ」
楽屋を出ると同時に落ち着ける場所が無くて彷徨った俺の耳に飛び込んできたスタッフさんの話し声に混み上げる涙を堪えて楽屋に戻ってふて寝してやろう、と振り返ると同時に引っ張られた。その時に感じたのはついさっき俺を突き放した紗雪が最近好んでつける香水の香りと彼女の温もりに包まれたのだった。耳元で聞こえた声は『言い過ぎたごめん。あと、あのスタッフさんたちの声は無視して忘れて。翔太なりに頑張ったのはわかってるから。ごめんね。泣くほど追い込んだ』と優しくあやすような声に俺は彼女の胸の中で静かに泣いた。
『翔太。』
「ん、まだ抱きしめてて」
『わかった。』
「レコーディングの時は俺もごめん。嫌なコメント見てそれが残ってて、紗雪に八つ当たりした。」
『そっか。今度からは私でもいいし、メンバーの声だけ信じてね。』
泣き止んだけど、彼女が自ら俺を抱きしめてくれることはあまりないからそれを理由に彼女を引き止める。その間に、俺の悪口を言っていたスタッフさんたちが俺たちの横を気まずそうに通った時に『悪口言うくらいだったらちゃんと撮る努力してほしいんですけど』と満面の笑みで言い切った紗雪の声にまた泣きそうになるの堪えるのが大変だった。
「喉、ケアの方法いいのない?」
『ん~、私のおすすめでいいの?』
「・・・紗雪がすすめてくれたのがいい。」
『はいはい。』
「む、面倒くさがんな。」
『面倒くさがってないよ。一緒にファン湧かせる歌声届けよ?』
楽屋に戻るとほかのメンバーに一言謝り終えると俺の機嫌がまだ完全に戻っていないと理解していたのか、紗雪は傍で俺の言葉にひとつひとついつもの声で返してくれるもんだから、暫く独り占めしたのは言うまでもない。
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