Ⅰ
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#本当に偶然居合わせたちゃった2人。まだまだ距離感は遠目。
オフを有意義に過ごすのはメンバーによって違うけど、伊緒くんの妹さん―莉緒と出会ってからメンバー同士で過ごす時間が減ったのは確かやった。伊緒くんと莉緒さんの距離感をどうにかして戻したいメンバーは事あるごとに伊緒くんに内緒で莉緒さんのマネージャーを捕まえてはオフの日に突撃することも多いらしい。莉緒さんのマネージャーでもある鈴さんは日に日に俺らに対して冷たいのはしゃーないけど。俺はそんなに莉緒さんに絡む事ないから完全にとばっちりってやつやった。
「大丈夫なん?」
『・・・向井さん。』
「鈴さんとはぐれてもうた?」
『そんなとこです。』
「・・・偶然やな。」
『ですね。』
カメラの調子が悪くて、少しだけ遠出をした俺の目の前には今まさに頭の中で思い浮かべていた内のひとりで。伊緒くんそっくりな顔できょろきょろと辺りを見渡して困った雰囲気に声を気づけば掛けてもうてた。
「連絡はしたんやったら、こんなとこにおらんで分かりやすいとこおった方がええで?」
『・・・お、伊緒のファンの方にも追われていて。』
街中の分かりにくい裏通りに面したところで佇む莉緒さんの言葉に、初めて会うた時も思ったけど、洋服は今は女性ならではの恰好だから莉緒さんって判断つくけど、なんも知らん伊緒くんのファンからすれば、番組の企画で伊緒くんが街中でロケと言う名目で女性の恰好しとると勘違いもしてもしゃーないほどに2人は似とる。でも、そのせいで莉緒さんは苦労してるのはメンバーの話を聞いて知ったのもあってこのまま放っておけるほど薄情ない俺は・・・。
「一緒にカメラ屋さんまで付き合うてや。」
『え・・・、あ!あの、ちょっ』
「メンバーと一緒やったら目撃情報出たとしても伊緒くんと俺ってことで誤魔化せるやろ?」
『だとしても、オフの邪魔になるでしょう?』
慌てた顔で繋がれた手を見つめる莉緒さん。ころころ変わる伊緒くんの表情とは違って、よーく見ないと感情の変化がわからない彼女の表情を変えたのが自分だと思うと少しだけ笑うてくる。俺の言葉に困惑しながらもほかに手だてがないのか大人しくついて来てくれたのである。手を繋いだ時に感じた莉緒さんの手の冷たさに少しだけ驚かせた自分がいたことは内緒や。
『ありがとうございます。』
ぺこり。無事に俺のカメラの調子もお店の人に見てもらって一緒に来てくれた莉緒さんは本格的なカメラ屋さんに入るのは初めてだったのか、距離がある俺に恐る恐る質問を何個か投げかけてくれて、カメラが戻ってくるまでに無言は無くてお互いに気が楽やった。その後、鈴さんの連絡がきたのを確認した莉緒さんは律儀に俺に頭を下げると『初めて会った時は驚かせてごめんなさい。』と罰の悪い顔で謝るものだから。
「莉緒さんが良かったらなんやけど、カメラ今度触ってみます?」
我ながら、発した言葉に驚きながらも店内でキラキラと新しい知識に出会った!と言わんばかりにスマホのメモ機能を利用して俺が言うた事を事細かに打ち込む莉緒の姿に感化されてしもうたのかも知れない。少しだけ驚いた顔で俺を見る莉緒さんは『向井さんが嫌じゃなければ。もちろん、兄抜きで』と伊緒くんとの距離感はまだまだ遠い事をわかる言葉とともに交渉成立したことに小さく笑ってしもうたのだった。
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