Ⅰ
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#双子の兄と和解前に偶然出会ってしまう2人。
執筆活動に少しだけ行き詰ったのもあって、四季さんの了承を得て一週間ぶりに家の外に出た私。春を感じる桜並木のある公園でお気に入りのクリーム色のワンピースを着た私は何処からどう見ても女なのに、公園に入って数分後。
『あの、何か?』
私の手を掴む青いフレームのサングラスと黒の帽子にラフな白のシャツを着た肌がつやつやな男性に声を掛けた。
「伊緒?」
『・・・え、違いますけど。』
どうやらこの男性は私の”この世で嫌いな兄”と私を勘違いしている様だ。恰好から見て女だとわかるはずなのにな、と思いながらも、腕を離してくれない気配に少しだけ嫌気が差す。
「え、?え、ウソ。パニックなんだけど。」
『パニックも何も、人間似た顔の人なんて2~3人いますよ?』
「・・・それもわかるけど、おねーさん俺のいるグループのメンバーにそっくりで、つい。」
「腕掴んじゃってすみません。」と漸く納得したのか離してくれた男性、もといい確か、兄のいるグループに所属する渡辺?さんは律儀に帽子とサングラスを外して頭を下げてくれた。
『いえ。それじゃあ、私用事あるので。』
公園に咲いてる桜を遠目に見ながらも、兄と一緒のメンバーに偶然とは言え会ってしまったことに少しだけ気落ちしたのもあって帰ろうと踵を返すが。
「あの、!」
がしっ、!とさっきよりも強めに掴まれた私の腕。この人は一体何がしたいんだろうか。少しだけ不機嫌になりそうなのを堪えつつ振り返ると、申し訳なそうに眼を伏せる渡辺さん。
「実は迷子になってまして・・・大通りまで連れて行ってもらえませんか?」
『え?』
話を聞くと仕事終わりにマネージャーさんの運転する車の車窓から見えたこの公園の桜を見ようと途中下車したのはいいが、自分の家から随分離れた場所だったのもあって、誰かに声を掛けようにも自分の素性がバレるのが怖くてうろうろしていたところに兄と同じ顔をした私がいたので安心が来て無我夢中で私の腕を掴んでしまったらしい。
『その、・・・マネージャーさんに連絡すればよかったのでは?』
「ほかのメンバーの現場に行くって言われて捕まらなくて。」
『なるほど。』
助ける義理はないのだが、目の前で捨てられた子犬のような目で私を見るものだから、『私の車でよければ近くまで送りますよ。』と伝えると目をきらきらと輝かせて笑う渡辺さんの警戒心の無さに呆れつつも、私の顔が兄とそっくりなのも要因かとひとり納得し、公園の近くに停めた自分の車まで一緒に歩いてもらうことにした。
「おねーさん、俺の顔見ても驚かないね。」
車の助手席に乗るのは流石に遠慮したのか、後部座席に座ると寛ぎ出した渡辺さんの言葉に『あまりテレビとか見ない生活なので。お兄さんが芸能関係の人?なのかなぐらいしかわからないです。』とウソを吐きながらも車のエンジンをかける。
「渡辺翔太。一応これでもアイドルです。」
『お名前は憶えておきます。迷子さん。』
「んな!」
自分の名前を教えたのに対して、自分の失態に塩を塗るような言葉で返す私の言葉に少しだけ口を尖らせた顔をルームミラー越しにするものだから、少しだけ笑ってしまった。その後も色々と自身のことやほかのメンバーの事も話ながらも自分の家の最寄りの駅までで大丈夫だというので言われた駅名に車を運転する。
『次は迷子にならないでくださいね。』
「また会う時は名前教えてくださいね、おねーさん。」
駅のロータリーで降ろすと同時にそう投げかけると苦虫を潰した顔で私を見ながらも次会う時はと、さらりと言われた言葉ににこりと営業スマイルを浮かべて車を出したのだった。
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