12の式神が紡ぐ物語
『清須の部屋で会議』
これは、お嬢が4歳の頃の話だ。
「これから第1回目の会議を始める」
俺が開会の言葉を述べると、清須の部屋に集められた十二天将達は静まる。清須は、俺の自室の名前だ。
今回のテーマは「どうやってお嬢の男性恐怖症を治すか」。
俺と葵はお嬢に仕えているのだが、自分達を現世に召喚した晴明の手によって男性恐怖症になってしまった。
しかも微妙なものに。それを今度は、産まれたばかりの詩織にも教え込ませようとしていると一華から報告が上がっている。
なんて奴だ。昔は頭がキレる真面なやつだったのに。
「で、何をすれば治ると思う?」
俺が問うと、母さんが答えた。
「男性陣が皆、女装すればいいんじゃない?それなら、治りが早いと思うし」
それを聞いた時、俺は石のように固まってしまった。俺は女装経験が一番多い。男性陣の中で。
女装と言うワードを聞くと、俺は一目散で逃げてしまう。この前、葵にうさぎか!と突っ込まれたが。
「じゃあ…マジックハンドで手を繋ぐとか?」
「それじゃ猛獣使い…」
弥一の提案に、葵が突っ込みを入れる。皆次々と提案するも、誰かの突っ込みで却下の繰り返し。
俺と葵の目は死んだ魚の目に突入する寸前だった。そろそろ誰かいい案を…と思っていた時、姉貴が提案をした。
「それじゃあ…あたしが男装しようか?」
それを聞いた瞬間、俺と葵の目を丸くする。そんなの全く聞いた事がないぞ!?姉貴が医大に行った事は知っていたが。
「え、わり。それ、初めて聞くんですけど…」
「とは言っても、明治の時だよ。今みたいに男女一緒に医者の勉強が出来なかったからねぇ。大学受験する時、男装して入ったんだから」
姉貴の話に俺達は頷く。これは使えるかもしれない。
「姉貴…」
「なんだい?てか、母さんまで…」
そして俺達は姉貴に向かって、頭を下げた。しかも土下座。
「お嬢の男性恐怖症治療の為に、男装してください!」
「あたしは医者だけど、専門が違うからねぇ。まぁ、お嬢の今後に関わる事だから。それに…」
「それに…?」
俺達は首を傾げて、姉貴に尋ねる。あ、これ…絶対ヤバいやつだ。
「晴明は一発、殴らないと…ねぇ?」
とてもいい笑顔で鉈を手に姉貴は答える。おう、そうですな。あの人は一度、姉貴に治療されればいいと思う。鉈で。またはチェンソーで。
珠洲達にも男装をさせようと思ったが、却下される。理由を聞くとこうだ。
珠洲「男装が出来たとしても声がショタ」
一華「珠洲ちゃんと同じく、男装が出来たとしてもボクっ娘。そして声がショタに」
母さん「やっても面白くないわよ。だって私は、着せ替えと調達専門だもの」
そして俺達は、目標と治療内容を決めた。
目標は「お嬢が小学校に入学するまで」。
治療内容
①マジックハンドで手を繋ぐ練習をする。
②殴りそうになったら、柔らかいクッションを渡す。(または投げる)
③女装した俺(または葵)か男装した千津と一緒に1日過ごす事。
「皆、絶対にお嬢の男性恐怖症を治すぞ」
「おぉー!」
全員、拳を突き上げてこの日の会議は終了した。
その翌日から、昨日決めた事をお嬢に話した。お嬢も「さっさと男性恐怖症を治して、姉御と一緒にハレ兄、ぶっ叩く!」と宣言。
滅茶苦茶いい笑顔で言うものだから、かなり驚いた。背筋も凍ったが。葵に関しては、カタカタと震えている。
お嬢は積極的に、治療に専念した。本当は小学校入学式までには完治させたいと思っていたのだが、ハルやマー坊が協力してくれたお陰で
幼稚園卒園する1ヶ月前に完治してしまった。本当に驚きだ。
しかしお嬢の治療に時間をかけていた所為か、気付けば詩織嬢がかなり重度の男性恐怖症になってしまった。
あぁ、やっちまった…。また清須会議行わければ…。葵と一華と協力して資料も作ろう。
そんな事を考えながら、俺は青い空を見上げる。
「一度、姉貴に治療されればいいのに」
END
ちーちゃんさんリクエスト
テーマ「十二天将、シャロの男性恐怖症を治す」
十二天将達がシャロの為に奮闘する話でした。
ちなみに千津姉さんは、大学の医学校予科に入学する際、男装して潜り込んでいました。(明治時代に)
多分今男装しても、シャロから黄色い悲鳴は止まらないと思います。恐らく。
シャロの男性恐怖症が完治したと思ったら、今度は詩織が被害に…。
ちなみに今度は一華の部屋で第2回目の会議が行われる(予定)。
リクエスト、ありがとうございました。またリクエストしてくださいね。
2017ー10ー12
