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12の式神が紡ぐ物語



『刀の意味』


「そういや…朱鷺って、なんで刀袋を何時も持ち歩いているの?」

「え」
 お嬢に聞かれ、俺はサラダを作る手を止めた。俺は何時も肌身離さず刀袋を持ち歩いている。

「あ、確かに!今まで私も謎だったの!お兄ちゃんって、刀使うっけ?って思ってたから」
 珠洲にも言われる。まぁ、ちゃんとした理由を話してなかったからな…。

「とりあえず話すのは話す。昼飯食ってからでもいいだろうか?」
 とりあえず昼飯を食ってから話をする事になった。

 
 昼食後、片付けを終えて珠洲やお嬢達が集まる。

「話す前に、珠洲。ちょっとこれ袋から出して、中の剣抜いてみろ」

「え、私が?」
 目を丸くして珠洲は尋ねる。

「姉貴や母さん達に持たせるのは問題はないが、鞘から抜く時にかなり体に負担がかかっちまうんだ。同じ火将なら、問題はないからな」

「うん、わかった。じゃあ…出して剣を抜くね」
 珠洲はおずおずと赤い竹刀袋から剣を抜き出すと、ゆっくり鞘から引き抜いた。俺の体が一気に紅蓮の炎に包まれる。服装が一気に変わる。

「これが刀に封印していた正体だ。ヒノカグツチノカミ」
 
「ヒノカグツチノアミって確か、日本神話にと登場する火の神様だよね。確かイザナミが火傷を負ったってみたような…」

「そう、その神様だ」

「でも、なんで朱鷺が所有してるんだい?」
 姉貴に尋ねられ、一瞬俺は口籠る。

「話せば長くなる。あれは平安時代の頃で、俺と母さんが博雅様と共に解決した事件だ」
 俺は一度咳払いをして、話し始めた。 


 時は平安時代。
 都である事件が起きていた。それは夜な夜な火の化け物が出て、貴族達を驚かせているという話。

 晴明はそれに対し、俺と母さんをこの依頼に任命した。

 ある日俺達は博雅様の護衛をしていた時に、その火の化け物が現れた。そいつが火車だって事がわかると母さんは拳でそいつを地獄へ殴り飛ばした。しかも流星のように飛んで行った。
 同じ火を扱う者としては、同情したが。

 でもそん時だ。突然誰かに体を乗っ取られて、俺はそこで意識を失った。

 気付けば布団の中で、4日も寝ていた。あの時俺はヒノカグツチノカミに体を乗っ取られたらしい。母さんがバイオレンス方法で聞き出したものによると「俺が憎かったらしい」。

「憎かった?どういう事」
 お嬢が尋ねると、母さんが答えた。

「朱鷺は誰かに認めて貰う事が出来たけれど、ヒノカグツチノカミの場合は怒りによって父のイザナギに殺された。要は朱鷺が羨ましかったって事よ。それに体を乗っ取って朱鷺の絶望する顔を拝んでやろうと思っていたみたいよ」



「その後母さんによって治められ、こいつは俺を器として選び、必要最低限の事ではないと出てこれないように設定された。出て来るとすれば戦闘だな。しかし炎の制御が全く出来なくて、結局これに力を封印する事になった」


 これで話は分かっただろうか?と俺は尋ねる。

「だから、刀を抜くとカグツチとして炎を操れるんだ。格好も自動的にカグツチのものになる」
 刀を鞘に収めると、俺の姿はいつものつなぎの姿に戻った。あぁ、つなぎはいい。

「朱鷺、羨ましーぞ!俺、そんなのぜんっぜん使えないんだからね!」
 弥一がぶーぶー言いながら、俺を小突く。痛い、痛い。

「でも、この鞘の模様…どこかで見た事、あるような…」
 刀マニアの葵が呟く。おう、それが気になるんすか。

「その梵字は不動明王だ。あの事件の数日前に、夢に不動明王が出てきたんだ。『何時かは必要になるかもしれぬ。主は私と何処か同じ匂いがする』って」

「あぁ、炎の世界に住んでいる時点で…「住んでねぇよ」」
 今日は弥一のボケが冴えている。恐ろしい。

「なるほど。でも最近朱鷺の炎って綺麗よね、穢れがないというか。とても洗練されているわ」

「え、そうだろうか?あんまり意識した事がない」
 炎を操っている時は、かなり集中しているものだから、あまり意識した事がない。

「まぁまぁ、これから知っていけばいいんじゃないかな?新たな魅力を見つけるって、事で」

「なるほど…」
 お嬢の話に相槌を打つ。そんな考え、今までした事がなかったし。

 時折、自分を嫌いになる事がある。この炎は何時かは誰かを傷付ける。だから誰も守れない。と。

けれどお嬢の言う通り、俺は自分の良さを探そうとはしなかった。悪い部分を探す事に必死になっていた。

時間は掛かるかもしれない。少しずつ自分の良さを見つけたいと思う。

 この話す機会をくれたお嬢には、感謝しないとな。

「あ、でも冬寒そうだから、マントか何か作るね」
 笑顔で言われ、マジで泣いた。


END



  お題:朱鷺の刀の秘密

 ちなみにヒノカグツチノカミの衣装は少年陰陽師の紅蓮をモデルにしています。

 刀は青の祓魔師の燐が所有する降魔剣(倶利伽羅)が元ネタで、鞘や柄、房飾りは赤や青色です。
「朱鷺ってどうやって炎を操るんだっけ?あと戦闘は?」という疑問から生まれて書きました。
神仏習合させてしまいました。もしかしたら、神仏習合シリーズ増えるかもしれないっす。

 久しぶりに青エクの歌をカラオケで歌っている時に「朱鷺っぽいな…」と思いながら、「降魔剣を朱鷺に持たせたい!」という考えに至りました。
同時に朱鷺のイメージソングも作って置いておきます。

・CORE PRIDE UVERworld
・IN MY WORLD ROOKiEZ is PUNK'D

サントラはMe & Creed 澤野弘之

 「と、朱鷺じゃぁ…」と思う事、間違いなし。


2017-10-31
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