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12の式神が紡ぐ物語


『俺とお嬢の話』

「ねぇ、ねぇ。朱鷺君とシャロってどうやって主従関係になったの?」

「あ、俺も知りたい。物心が付いた時には、一緒にいたもんね」

「あのね、主従関係なんかじゃないから!」
 愛海嬢とマー坊の問いに、お嬢は訂正をする。周りを見渡すと姉貴や珠洲、一華が知りたそうな顔をしていた。あと母さんも。少し考えた後、話す事にした。

それは、ちょうど主が産まれる一週間前だった。

「朱鷺君、ちょっといいかしら?」

「はい、どうしたのですか?満様」
 満様に呼ばれ、俺はリビングに向かう。リビングに着くとお腹の大きな満様が椅子に座っており、伊万里嬢は満様の補助をしていた。

「ねぇ、朱鷺君はどっちだと思う?」

「えっ、どっちとは?」

「赤ちゃんの性別よ。私も一考さんも産まれるまで楽しみにしてようって、聞いてないの。他の子達にも聞いたから、朱鷺君にも聞きたいなって」

「それじゃ、俺が答えても正解かどうか分からないじゃないですか」
 俺がそう言うと、満様は「そうよね」と苦笑する。

「私は、女の子がいいな。妹が欲しい」

「あらあら、伊万里は一考さんと同じなのね」

「お母さんは、男の子がいいの?」

「私は、元気に産まれてきてくれたらどっちでもいいわ」
 伊万里さんと満さんの話を聞きながら、俺の頭の中に1つの想いが出てきた。それは、産まれて来る子が女の子だったら守ってやりたいと…。しかし、俺は騰蛇。全てを焼き付くしてしまう忌み嫌われた存在。そんな俺が誰かを守りたいなんて笑われるだろう。

 でも、やっぱり思い出すな。平安時代に現界した時、俺は他の皆に嫌われているとずっと思っていた。ずっと、姉貴の後ろにいた。嫌われるのが怖くて、誰かに自分の存在を否定される事が怖くて――――いつもどこかに隠れて泣いていた。
 でも、そんな俺に母さんはこう言ってくれた。

「貴方にはいつか、守る人が出来る。だから、大丈夫。貴方の力は、その守る人を守る為に振るわれるのだから」

 あぁ、もしかしたら母さんは俺の未来を予測していたのかもしれない。来年の母の日は、大量のカーネーションを贈ろう。

 そう言えば、満様が懐妊したと聞いた時、女の子だったら絶対に他の男は近づけないと言う話を聞いた。それに関して、母さんは随分怒っていたな…。

「朱鷺君、どうしたの?」

「もしかして、赤ちゃんが産まれたらいなくなっちゃうとか言わないよね」

「違いますよ。もし…女の子だったら、俺に守らせてくれませんか?傷付けたりするもの、すべてから守りたいんです」
 俺の言葉に、満様と伊万里嬢は目を丸くする。そんなに意外だったのか?

「いいわよ。女の子だったら守護四神も付けるつもりだったし、それに朱鷺君が一緒に守ってくれるなら安心だわ」

「私も賛成!女の子だったらよろしくね」
 それから一週間後、満さんは女の子を出産。生年月日により、守護四神は葵になった。
その間、俺と葵はお嬢を怯えさせないようにずっとぬいぐるみで練習した。子育て経験が豊富な母さんと姉貴と陸の援助を受けて。

お嬢が二歳の誕生日に俺と葵は、挨拶をしに行った。

「お嬢、俺は朱鷺だ。ずっと傍にいたの分かってたか?」

「しっちぇるー!いちゅも、いたー。とーたん、よろちくねー」
 怯える事もなく、葵に見せた同じ笑顔を俺にも見せてくれた。その時、俺は心に強く決めた事がある。それは、あの人を近づかせない事。

 しかし、隙を付いて来て微妙な男嫌いになってしまったが。なんとか、真琴や遙達のおかげでお嬢の男嫌いは小学校に上がる時には克服された。

 話し終わると、お嬢が俺の方をじっと見ていた。

「どうしたんすか?お嬢」

「これからも、葵達と一緒に私の傍にいてね。凛がいない時に守ってくれるから、凄い嬉しいよ。いつもありがとう」
 お嬢の言葉が、俺の心を潤す。お嬢、様ありがとう。

 ついでに、俺達を呼び出してくれたあの人にも少しだけ感謝だ。こんなに可愛い主に出会わせてくれたからな。



 朱鷺とシャロの話でした。
何かと主従、いつ組んだの?聞かれる事が多い朱鷺。案外、朱鷺と陸は似た者同士…。


2017’10・1
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