このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

「これ、受け取ってもらえますか?」

屯所の裏手で、休憩中の山崎さんを見つけた。

自販機の横、日陰のベンチ。
背筋を伸ばして、タブレットを見ている横顔は
どこかいつもより少し、疲れて見えた。

「……山崎さん」

声をかけると、
彼はタブレットを閉じて、すぐに顔を上げる。

「おつかれさまです。……どうかしました?」

「ちょっとだけ、お時間いいですか」

バッグから、
手提げを出して、差し出す。

彼の眉が、少しだけ動いた。

「これ……?」

「こないだ、傘を貸してくださったお礼です。
ほんの、気持ちだけですけど」

彼は驚いたように目を瞬いてから、
そっと受け取ってくれた。

紙袋を持つ指先が、
わたしのより大きくて、あたたかそうだった。

「……そんな、気を遣わなくても」

「いえ。わたし、うれしかったんです。
山崎さんがいてくれて。
だから、ちゃんと伝えたくて」

そのとき。
山崎さんの目が、少し揺れた気がした。

「……ありがとうございます。
あの日、偶然でも……あなたに会えてよかった」

静かな声。
でも、真っ直ぐでやさしい響きだった。

わたしは少しだけうつむいて、
こっそり笑ってしまった。

(お妙さんが言ってた通り……ちゃんと伝わったかもしれない)
2/3ページ
スキ