山崎退視点 「気づいたら、笑ってたんです」
その夜。
自分の部屋に帰ってきたのは、いつもより遅かった。
隊服を脱ぎ、軽くシャワーを浴びて、
机の上に置いたままの紙袋を、ふと見つめる。
(開けるのが、惜しかったのかもしれない)
渡された瞬間から、ずっとあたたかくて。
それを開けてしまったら、
どこか夢から覚めてしまうような気がして――
ずっと、手をつけられずにいた。
でも、いま。
部屋にひとりきりでいる時間の中で、
その袋の存在が、やたらと大きく感じた。
そっと、紙袋を開ける。
中から出てきたのは、小さな和菓子の箱。
上品で、でもどこか素朴で、彼女らしい選び方だった。
(……甘いもの、好きなの覚えてたのか)
それだけで、思わずふっと笑みが漏れる。
さらに、箱の底には――
手書きのメモが添えられていた。
「あの日の傘、ありがとうございました。
すごく助かりました。
甘いもので、すこしでもお疲れ癒せますように」
たった三行。
それだけなのに、心の奥が、じんと熱くなった。
彼女がこの紙に向かって、
文字を書いている姿を想像してしまう。
少し緊張して、
でも、丁寧に選んだ言葉で――。
自分の部屋に帰ってきたのは、いつもより遅かった。
隊服を脱ぎ、軽くシャワーを浴びて、
机の上に置いたままの紙袋を、ふと見つめる。
(開けるのが、惜しかったのかもしれない)
渡された瞬間から、ずっとあたたかくて。
それを開けてしまったら、
どこか夢から覚めてしまうような気がして――
ずっと、手をつけられずにいた。
でも、いま。
部屋にひとりきりでいる時間の中で、
その袋の存在が、やたらと大きく感じた。
そっと、紙袋を開ける。
中から出てきたのは、小さな和菓子の箱。
上品で、でもどこか素朴で、彼女らしい選び方だった。
(……甘いもの、好きなの覚えてたのか)
それだけで、思わずふっと笑みが漏れる。
さらに、箱の底には――
手書きのメモが添えられていた。
「あの日の傘、ありがとうございました。
すごく助かりました。
甘いもので、すこしでもお疲れ癒せますように」
たった三行。
それだけなのに、心の奥が、じんと熱くなった。
彼女がこの紙に向かって、
文字を書いている姿を想像してしまう。
少し緊張して、
でも、丁寧に選んだ言葉で――。
