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「触れたのは、手より先に、たぶん心でした」

風が少し冷たく感じる帰り道だった。
昼間は暖かかったのに、夜になると急に空気が変わる。

横を歩く彼女が、小さく息を吐いて、肩をすくめた。

「今日、風、冷たいね」

「ですね。手、冷えてませんか?」

「ちょっとだけ」

そう言って、彼女は自分の手を袖の中に引っ込めた。
その仕草が、なぜだか無性にいとおしくて、
つい言葉が出た。

「……よければ、その、ポケット……使いますか?」

「え?」

「オレの、コートの。手……入れてもらっても」

彼女は立ち止まって、
少し驚いたようにこちらを見た。

「あ、あの、嫌だったらもちろん……!」

「……山崎さんは? 嫌じゃない?」

「オレは、むしろ……すごく、してみたいって、思ってました」

その言葉に、彼女はふわっと笑って、
ゆっくりと、オレのコートのポケットに手を伸ばした。

やがて、ふたりの手が、ポケットの中でそっと重なる。
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