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「雨が降らなくても、会いたいと思った」

その日、夕方。
ちょうど屯所の仕事が片付いたころ。

(行こう)

気づいたら、足が向いていた。
あのビルの近くの通り。
彼女がよく、店の帰りに通る裏道。

今日が出勤日かどうかも、正直わからない。
でも、会えるかもしれない。
そう思うだけで、鼓動が早くなる。

時間が過ぎ、
空の色が深まっていく。

(いないか……)

そう思ったときだった。

ビルの横から出てきた、小さな影。

(いた)

彼女だった。
髪をひとつにまとめて、肩からショールをかけている。

帰り道の、そのほんの数歩手前。
自然なふりをして、声をかけた。

「……こんばんは」

驚いたように、でもすぐ笑ってくれた。

「山崎さん。また、偶然ですね」

「……今日は、偶然じゃないです」

一拍、間が空いた。
彼女の目が、すこし大きく見開かれる。

(やばい。言い方、ストレートすぎたか……)

そう思って、慌てて補足した。

「あの、いや……もう、雨を待つのも、変かなと思って」

「……うん」

彼女が、小さく頷いた。

「わたしも、そう思ってたところです」

その言葉だけで、
胸が、ふわっと軽くなる。

(……伝わった)

よかった。
この想いは、ちゃんと届いてる。
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