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「ただ傘を返されただけ、なのに」

ふと彼女が言った。

「……また、雨が降ったら。借りてもいいですか?」

(借りて、って言った。貸して、じゃなくて)

ほんの少しの違いに、胸がぐっと締めつけられる。

(“また会いたい”って、そう言ってるのと同じだ)

「……降らなくても、渡しますよ」

そう返した自分の声が、
少しだけ震えていたのは、気づかれただろうか。

彼女は、笑った。

その笑顔だけで、
また何日も頑張れてしまいそうだった。
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