「ただ傘を返されただけ、なのに」
あの夜のことが、
ずっと頭から離れなかった。
傘を差し出して、
彼女と肩を並べて歩いた、たった数分の距離。
ほんのわずかな時間だったのに、
掌にも胸にも、やけにぬくもりが残っていた。
(……返すって、言ってたな)
傘のことだ。
別に返してくれなくてもいいと思ってた。
言い訳を作ってでも、また渡しに行けるし、何ならまた新しいの買えばいい。
でも。
ちゃんと彼女は、それを“返す”って言った。
律儀な人だ。
だからこそ、今日――
彼女は、仕事の合間にわざわざ屯所の前まで来ていた。
ずっと頭から離れなかった。
傘を差し出して、
彼女と肩を並べて歩いた、たった数分の距離。
ほんのわずかな時間だったのに、
掌にも胸にも、やけにぬくもりが残っていた。
(……返すって、言ってたな)
傘のことだ。
別に返してくれなくてもいいと思ってた。
言い訳を作ってでも、また渡しに行けるし、何ならまた新しいの買えばいい。
でも。
ちゃんと彼女は、それを“返す”って言った。
律儀な人だ。
だからこそ、今日――
彼女は、仕事の合間にわざわざ屯所の前まで来ていた。
