このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

「ただ傘を返されただけ、なのに」

あの夜のことが、
ずっと頭から離れなかった。

傘を差し出して、
彼女と肩を並べて歩いた、たった数分の距離。

ほんのわずかな時間だったのに、
掌にも胸にも、やけにぬくもりが残っていた。

(……返すって、言ってたな)

傘のことだ。
別に返してくれなくてもいいと思ってた。
言い訳を作ってでも、また渡しに行けるし、何ならまた新しいの買えばいい。

でも。
ちゃんと彼女は、それを“返す”って言った。

律儀な人だ。

だからこそ、今日――
彼女は、仕事の合間にわざわざ屯所の前まで来ていた。

1/3ページ
スキ