第一章.
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柔軟剤の爽やかな香りに包まれた微睡み、寝返りを打つと薄ぼんやりと冴えて来た脳内に聞き慣れない声が響いた。
「...から、......で」
寝ている私を気遣ってか、密やかに紡がれる複数の声。しかし、一度耳に入るとその声の主に意識が向いてしまうのは人間の性というもので。
「...んん、」
重い瞼を開くと天井、次に飛び込んで来たのは四方を囲まれた白いカーテン。眠りに就く直前まで居たはずの廃墟とは打って変わって治療の為⎯⎯、そうまるで診療所のようなこの場所に意識が混濁とする。
誘拐?いや、もしかして変な人体実験でもされるのだろうかなんて、一瞬で脳内に駆け巡った不穏な思考。
上体を起こすと同時に勢いよく開かれたカーテンレールの音にびくりと肩を揺らすも、その先に立ち尽くしていたのは泣きぼくろの似合う少女だった。
「あ、目覚めた?気分はどう?」
不意に投げ掛けられた問いにハッと意識を取り戻せば、彼女の一歩後ろに大柄な青年が一人。そう、最初に出会った彼がこちらを覗いている。
二度寝したせいか、幾分か頭はすっきりとしていて最初よりも周囲を見渡す余裕が生まれてきた。
予感はしていたが、ここは案の定病室のようだった。というよりは少しばかり懐かしさを感じる、なんだか保健室のような⎯⎯。
「...ここは、どこですか?」
部屋を一瞥しながら彼女に訊いてみる。慣れきったとばかりに迷いもなく近場の棚へと歩み寄り、引き出しから何かを取り出したかと思えば私に差し出したのは体温計だった。
「保健室、って言えば馴染みがあるかもしれないけど少し違うかもね。ここは色んな奴が治療に来るから」
「治療?」
「そ、民間じゃとてもじゃないけど治せない特殊な治療」
もしかして私の記憶喪失も治せるのかもしれない、と淡い期待を込めて視線を送るも思考なんて簡単に読まれてしまっていたのか、ゆっくりと首を横に振られた。
「...そう、ですか。私、これからどうなってしまうんですかね?」
「それは...」
言葉に行き詰まったとでも言わんばかりに視界の先に佇む二人は顔を見合わせると、それ以上続くものはない。
......どうやらかなり妙なことになったらしい。記憶喪失なんてまともじゃない。
せめて名前以外に、住所でも思い出せはしないかと思考を駆け巡らせてもやはり思い当たるものなんてなかった。
いつまでもここでお世話になるわけにもいかない、かといってこの先あてがあるかと問われればそういうわけでもない。
途方に暮れる思いで再び部屋を一瞥すると、風に揺れるカーテンの端っこで眩しい何かがさっと横切っていくのが見えた。
なんだろう、今のは。
「...あの、今何か見えたんですけど」
「何か?ここには呪霊なんか出ないから安心していいよ」
「...じゅ、?いや...その、なんか眩しいキラキラした何かが見えた気がして...」
輝く粒子の残滓が消えないみたいで、目がチカチカとする。そのまま二人へと視線を送れば、呆気に取られた顔をしていた二人の表情が一気に崩れ去った。
「ああ、キラキラね!そういえばアイツのことも一応紹介しておかないと。仲間外れだって煩くなるから」
今連れて来てあげるから待ってて、と少女に続いて告げた青年はふらりとカーテンの向こう側へと姿を消した。
連れてくる?今の得体の知れないキラキラを?
「ここにはもう一人、私たちの同期がいるんだ」
青年の後ろ姿を共に見送りながら告げる少女の言葉を深く考える間もなく、誰かの腕をがっしり掴んだ青年が瞬く間に帰還した。
「...から、......で」
寝ている私を気遣ってか、密やかに紡がれる複数の声。しかし、一度耳に入るとその声の主に意識が向いてしまうのは人間の性というもので。
「...んん、」
重い瞼を開くと天井、次に飛び込んで来たのは四方を囲まれた白いカーテン。眠りに就く直前まで居たはずの廃墟とは打って変わって治療の為⎯⎯、そうまるで診療所のようなこの場所に意識が混濁とする。
誘拐?いや、もしかして変な人体実験でもされるのだろうかなんて、一瞬で脳内に駆け巡った不穏な思考。
上体を起こすと同時に勢いよく開かれたカーテンレールの音にびくりと肩を揺らすも、その先に立ち尽くしていたのは泣きぼくろの似合う少女だった。
「あ、目覚めた?気分はどう?」
不意に投げ掛けられた問いにハッと意識を取り戻せば、彼女の一歩後ろに大柄な青年が一人。そう、最初に出会った彼がこちらを覗いている。
二度寝したせいか、幾分か頭はすっきりとしていて最初よりも周囲を見渡す余裕が生まれてきた。
予感はしていたが、ここは案の定病室のようだった。というよりは少しばかり懐かしさを感じる、なんだか保健室のような⎯⎯。
「...ここは、どこですか?」
部屋を一瞥しながら彼女に訊いてみる。慣れきったとばかりに迷いもなく近場の棚へと歩み寄り、引き出しから何かを取り出したかと思えば私に差し出したのは体温計だった。
「保健室、って言えば馴染みがあるかもしれないけど少し違うかもね。ここは色んな奴が治療に来るから」
「治療?」
「そ、民間じゃとてもじゃないけど治せない特殊な治療」
もしかして私の記憶喪失も治せるのかもしれない、と淡い期待を込めて視線を送るも思考なんて簡単に読まれてしまっていたのか、ゆっくりと首を横に振られた。
「...そう、ですか。私、これからどうなってしまうんですかね?」
「それは...」
言葉に行き詰まったとでも言わんばかりに視界の先に佇む二人は顔を見合わせると、それ以上続くものはない。
......どうやらかなり妙なことになったらしい。記憶喪失なんてまともじゃない。
せめて名前以外に、住所でも思い出せはしないかと思考を駆け巡らせてもやはり思い当たるものなんてなかった。
いつまでもここでお世話になるわけにもいかない、かといってこの先あてがあるかと問われればそういうわけでもない。
途方に暮れる思いで再び部屋を一瞥すると、風に揺れるカーテンの端っこで眩しい何かがさっと横切っていくのが見えた。
なんだろう、今のは。
「...あの、今何か見えたんですけど」
「何か?ここには呪霊なんか出ないから安心していいよ」
「...じゅ、?いや...その、なんか眩しいキラキラした何かが見えた気がして...」
輝く粒子の残滓が消えないみたいで、目がチカチカとする。そのまま二人へと視線を送れば、呆気に取られた顔をしていた二人の表情が一気に崩れ去った。
「ああ、キラキラね!そういえばアイツのことも一応紹介しておかないと。仲間外れだって煩くなるから」
今連れて来てあげるから待ってて、と少女に続いて告げた青年はふらりとカーテンの向こう側へと姿を消した。
連れてくる?今の得体の知れないキラキラを?
「ここにはもう一人、私たちの同期がいるんだ」
青年の後ろ姿を共に見送りながら告げる少女の言葉を深く考える間もなく、誰かの腕をがっしり掴んだ青年が瞬く間に帰還した。