夢主達の設定です。
ハーツラビュル篇
夢主の設定
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オイスターソースタルトの件から数日後、アリスはようやく傷も良くなり、医務室から解放された。
アリスは当初、実家か麓の病院で療養、という話になっていた。だが、オイスターソースタルトの件の際、学園保健医に「安静」を命じられていたのに勝手に抜け出した。そのことから、ナイトレイブンカレッジの医務室で絶対に抜け出せないように監視されていたのだ。
「内申点に響く」等学園長に脅されたこともあり、流石にアリスも、抜け出したりせずに、大人しく医務室で療養していた。
その間、エース達やトレイ達が毎日見舞いに来てくれていた。特にエースには「決闘の時、初めから別の作戦で行くつもりだっただろ」と詰め寄られ、なんで言えばいいか分からずにたじろいだ。だが、エースは庇って貰ったこともあり、「次からはちゃんと言えよ、友達なんだから」とあっさり許してもらえて、アリスは驚いた。そして、「友達」と言ってもらえたことを心の中でとても喜んだ。
そして、寮に戻った日の夜、アリスはリドルに呼び出された。その時丁度エース達と居たので、「お前、医務室を抜け出したことを怒られんじゃね」と笑われながら、リドルの部屋へ向かった。
ドアをノックし、「どうぞ」と聞こえてきたので少し怯えながら入るアリス。エース達の言うように、安静指示が出ていたのに、医務室を抜け出したことを怒られるのではないかと思っていたのだ。
しかし、そうではなかった。リドルの部屋に入ると、リドルに包み紙を渡された。
「リドル寮長、これは?」
「……キミへのお詫びの気持ちだよ。キミの病気のことは知っていたのに、ボクは」
「そんな!あれは決闘中の出来事ですから、仕方のないことです。それに決闘を申し込んだのは私の方ですから」
リドルはすまなさそうな顔をして「ごめん」と言おうとしたが、アリスはそれを遮った。確かにアリスの言う通りである。そして、「お詫びの気持ち」のプレゼントの受け取りを拒否しようとしたが、そこはリドルに押し切られた。
「分かりました。有り難く受け取ります。……あの、ここで中を開けてもいいですか?」
生まれて初めてリドルにプレゼントを貰ったアリスは、中身が気になって仕方がなかった。リドルはアリスがあまりにもそわそわとしているので、その場で開けることを許可した。アリスが中身をそっと開けてみると、中には黒いリボンが入っていた。
「リボン?」
「そうだよ。……キミに似合うと思って」
そう言うリドルは少し照れ臭そうにしている。アリスがリボンを隅々まで見ると、隅に小さく、赤い薔薇の刺繍がされていた。
「これ、もしかして……」
「ボクが魔法で刺繍をしたんだ」
そう言われて、アリスは心から喜んだ。産まれてから今まで家族に疎まれ、クリスマスプレゼントすら貰ったことがないアリスにとっては、これが「初めてのプレゼント」だった。しかもその「初めてのプレゼント」を、アリスにとって大事な人から貰ったのだ。もう故人となった兄から過去に教えられた通り、普段はあまり笑わないように、凛々しい表情を意識しているアリスも、表情が緩み、微笑んだ。
刺繍をじっと見つめて微笑むアリスを見たリドルは、「アリスがちゃんと笑った顔は久々に見た」と思った。
「リドル……寮長。ありがとうございます。とても嬉しいです」
アリスはあまりの嬉しさに、素に戻って「リドル」と言いかけた。だが、ここは学園で、ハーツラビュル寮であることを思い出して、「寮長」を付け足した。そしてその言葉を言うアリスの顔は、とても嬉しそうに笑っていて、リドルは体温が上がるのを感じた。
アリスはここで一つ「我儘」を思いついた。
「お詫びの気持ちっていうなら、私の髪にリボンを結んでくださいよ」
昔、髪の長さを整えてくれた魔法をかけてくれたことを思い出しながら言うアリス。これがアリスの「リドルへの初恋」なのだ。
「えぇっ?!まぁ、いいけど……。じゃあそこの椅子にお座り」
「はい」
リドルはアリスの要求に驚いていたが、その要求を飲んで、椅子に座るよう促した。そして、櫛でアリスの髪を綺麗に梳かしてから、頭の上でリボン結びをした。
「ボクは女の子の髪をちゃんと扱ったことがないから、これくらいしかできないけど……」
と自信なさげに言うリドル。アリスはポケットの中から古い手鏡を出して、結んでもらったリボンを見てこう言った。
「これがいいです。可愛い……。あっ、リドル寮長、昔、私の髪を魔法で整えてくれた時に言ってたじゃないですか。『ボクがやったんだから可愛くて当然』って」
アリスがリドルの口真似をしながら言うと、リドルは少し「うっ」と言う顔をした。
「む、昔の話じゃないか……。でも、そんなことも言ったね。まぁ、このボクがやったんだから可愛くて当然さ」
そして、昔と同じように言ってみせた。アリスはその言葉にクスリと笑って、久々に心の中が満たされるのを感じた。
そして、話をするならこのタイミングか、と思い、手鏡をポケットにしまい、椅子から立ち上がった。アリスはリドルと向き合い、目線を上に上げ、目を合わせて話を始めた。
「リドル寮長。寮長は自分にも他人にも厳しいところがいいところですけど……今回みたいにやりすぎはよくないですよ。あと、寮生 の話もですけど、友達の話はちゃんと聞いたほうがいいですよ」
アリスが言いたかったことは、殆どトレイが言ってくれたが、念の為もう一度釘を刺すように言った。アリスのいう「友達」はトレイ達のことである。
「……うん。そうだね。分かったよ。これからは注意する。……アリスは友達が出来たかい?」
今度はちゃんとアリスの声が届いた。そして、リドルは昔、アリスにトレイ達のことを話して「アリスもそんな友達が欲しい」と嘆いていたことを思い出した。なのでアリスに「友達はできたか」と問いかけたのだ。
「はい。……とびっきりの、私を退屈させない友達ができました」
アリスは、エース達を思い浮かべながら言う。クラスは違うが、一緒にいたら楽しいと思える友達が。この時、ようやくリドルにアリスの"声"が届いた瞬間だった。
アリスがリボンのことで、ニコニコとしていると、急にリドルがしょんぼりとした顔でこう言ってきた。
「アリス。……ボクはキミを知らなさすぎた。正直、驚いたよ。あんなに強くなっていたなんて」
アリスはそう言われて、表情を引き締める。そしてリドルに「無知」であったことを謝まった。
「私も、リドル寮長のことを知らなさすぎました。パーティーで会ってもいつも自分のことばかりで……もっとリドル寮長の話を聞けばよかったと後悔してます。そうすれば、リドル寮長が辛い思いをしていることにもっと早く気がつけたのに……ごめんなさい」
「……お互い様だね」
「……」
リドルは優しい目をしているが、アリスの目は寂しい目をしていた。まだ過去を後悔しているのだ。
「アリス、これからはちゃんとキミ自身のことを見るよ。だってキミはボクの」
婚約者、と言いかけたところでアリスが自分の人差し指をリドルの唇に当てた。
「それは『親同士が勝手に決めた』婚約者でしょう。……私のことを見てくれるんだったら、そう言うの抜きで見てほしいです。……"アリス"自身を」
アリスがいきなり自分の唇に指を当ててきたことに心臓が跳ね上がる思いをしたリドルだが、アリスの言葉は真剣そのものだった。アリスはそっとリドルの唇から人差し指を離す。
「分かったよ」
「ありがとうございます」
そのやり取りの後、アリスはもう一つ、「リドルに話したかったこと」を話し始めた。
「私、もっと強くなります。貴方を守れるくらいに。だって私は貴方を守りたいから。それに、もう私は『ハートの女王の手記』に書かれていた『迷子の女の子』じゃなくて、『ハーツラビュル寮の寮生』です。だから」
そう言ってリドルの前に跪く。そして、リドルの右手をとった。
「リドル寮長 の仰せのままに」
と言って、右の手の甲にキスをした。リドルは唐突なアリスの行動に、今度は心臓が止まるような思いをさせられた。
「き、キミは一体何を……?!」
そう聞くとアリスはキョトンとした表情を浮かべた。なので、リドルは「何も意識していないんだ」と言うことを察して、心を落ち着けた。
「……なんでもないよ。でも、こういうことはボク以外の人にしないように。これは命令だよ。破ったら……お分かりだね?」
いつもの表情でそういうと、アリスは顔を引き締め、左足を引いて敬礼し、大きく口を開けて返事をした。
「はい、寮長」
アリスはこの時に、リドルのことが好きだからこそ「リドルを守る騎士」になることを誓った。リドルの歩く道に怪物が現れたら命をかけて守り、棘のついた薔薇の蔓が生い茂っていたら剣で切り開いて、リドルの身体に傷一つつかないようにする。絶対にリドルをハッピーエンドに導いてみせる、自分の人生を賭けて、と。
アリスは当初、実家か麓の病院で療養、という話になっていた。だが、オイスターソースタルトの件の際、学園保健医に「安静」を命じられていたのに勝手に抜け出した。そのことから、ナイトレイブンカレッジの医務室で絶対に抜け出せないように監視されていたのだ。
「内申点に響く」等学園長に脅されたこともあり、流石にアリスも、抜け出したりせずに、大人しく医務室で療養していた。
その間、エース達やトレイ達が毎日見舞いに来てくれていた。特にエースには「決闘の時、初めから別の作戦で行くつもりだっただろ」と詰め寄られ、なんで言えばいいか分からずにたじろいだ。だが、エースは庇って貰ったこともあり、「次からはちゃんと言えよ、友達なんだから」とあっさり許してもらえて、アリスは驚いた。そして、「友達」と言ってもらえたことを心の中でとても喜んだ。
そして、寮に戻った日の夜、アリスはリドルに呼び出された。その時丁度エース達と居たので、「お前、医務室を抜け出したことを怒られんじゃね」と笑われながら、リドルの部屋へ向かった。
ドアをノックし、「どうぞ」と聞こえてきたので少し怯えながら入るアリス。エース達の言うように、安静指示が出ていたのに、医務室を抜け出したことを怒られるのではないかと思っていたのだ。
しかし、そうではなかった。リドルの部屋に入ると、リドルに包み紙を渡された。
「リドル寮長、これは?」
「……キミへのお詫びの気持ちだよ。キミの病気のことは知っていたのに、ボクは」
「そんな!あれは決闘中の出来事ですから、仕方のないことです。それに決闘を申し込んだのは私の方ですから」
リドルはすまなさそうな顔をして「ごめん」と言おうとしたが、アリスはそれを遮った。確かにアリスの言う通りである。そして、「お詫びの気持ち」のプレゼントの受け取りを拒否しようとしたが、そこはリドルに押し切られた。
「分かりました。有り難く受け取ります。……あの、ここで中を開けてもいいですか?」
生まれて初めてリドルにプレゼントを貰ったアリスは、中身が気になって仕方がなかった。リドルはアリスがあまりにもそわそわとしているので、その場で開けることを許可した。アリスが中身をそっと開けてみると、中には黒いリボンが入っていた。
「リボン?」
「そうだよ。……キミに似合うと思って」
そう言うリドルは少し照れ臭そうにしている。アリスがリボンを隅々まで見ると、隅に小さく、赤い薔薇の刺繍がされていた。
「これ、もしかして……」
「ボクが魔法で刺繍をしたんだ」
そう言われて、アリスは心から喜んだ。産まれてから今まで家族に疎まれ、クリスマスプレゼントすら貰ったことがないアリスにとっては、これが「初めてのプレゼント」だった。しかもその「初めてのプレゼント」を、アリスにとって大事な人から貰ったのだ。もう故人となった兄から過去に教えられた通り、普段はあまり笑わないように、凛々しい表情を意識しているアリスも、表情が緩み、微笑んだ。
刺繍をじっと見つめて微笑むアリスを見たリドルは、「アリスがちゃんと笑った顔は久々に見た」と思った。
「リドル……寮長。ありがとうございます。とても嬉しいです」
アリスはあまりの嬉しさに、素に戻って「リドル」と言いかけた。だが、ここは学園で、ハーツラビュル寮であることを思い出して、「寮長」を付け足した。そしてその言葉を言うアリスの顔は、とても嬉しそうに笑っていて、リドルは体温が上がるのを感じた。
アリスはここで一つ「我儘」を思いついた。
「お詫びの気持ちっていうなら、私の髪にリボンを結んでくださいよ」
昔、髪の長さを整えてくれた魔法をかけてくれたことを思い出しながら言うアリス。これがアリスの「リドルへの初恋」なのだ。
「えぇっ?!まぁ、いいけど……。じゃあそこの椅子にお座り」
「はい」
リドルはアリスの要求に驚いていたが、その要求を飲んで、椅子に座るよう促した。そして、櫛でアリスの髪を綺麗に梳かしてから、頭の上でリボン結びをした。
「ボクは女の子の髪をちゃんと扱ったことがないから、これくらいしかできないけど……」
と自信なさげに言うリドル。アリスはポケットの中から古い手鏡を出して、結んでもらったリボンを見てこう言った。
「これがいいです。可愛い……。あっ、リドル寮長、昔、私の髪を魔法で整えてくれた時に言ってたじゃないですか。『ボクがやったんだから可愛くて当然』って」
アリスがリドルの口真似をしながら言うと、リドルは少し「うっ」と言う顔をした。
「む、昔の話じゃないか……。でも、そんなことも言ったね。まぁ、このボクがやったんだから可愛くて当然さ」
そして、昔と同じように言ってみせた。アリスはその言葉にクスリと笑って、久々に心の中が満たされるのを感じた。
そして、話をするならこのタイミングか、と思い、手鏡をポケットにしまい、椅子から立ち上がった。アリスはリドルと向き合い、目線を上に上げ、目を合わせて話を始めた。
「リドル寮長。寮長は自分にも他人にも厳しいところがいいところですけど……今回みたいにやりすぎはよくないですよ。あと、
アリスが言いたかったことは、殆どトレイが言ってくれたが、念の為もう一度釘を刺すように言った。アリスのいう「友達」はトレイ達のことである。
「……うん。そうだね。分かったよ。これからは注意する。……アリスは友達が出来たかい?」
今度はちゃんとアリスの声が届いた。そして、リドルは昔、アリスにトレイ達のことを話して「アリスもそんな友達が欲しい」と嘆いていたことを思い出した。なのでアリスに「友達はできたか」と問いかけたのだ。
「はい。……とびっきりの、私を退屈させない友達ができました」
アリスは、エース達を思い浮かべながら言う。クラスは違うが、一緒にいたら楽しいと思える友達が。この時、ようやくリドルにアリスの"声"が届いた瞬間だった。
アリスがリボンのことで、ニコニコとしていると、急にリドルがしょんぼりとした顔でこう言ってきた。
「アリス。……ボクはキミを知らなさすぎた。正直、驚いたよ。あんなに強くなっていたなんて」
アリスはそう言われて、表情を引き締める。そしてリドルに「無知」であったことを謝まった。
「私も、リドル寮長のことを知らなさすぎました。パーティーで会ってもいつも自分のことばかりで……もっとリドル寮長の話を聞けばよかったと後悔してます。そうすれば、リドル寮長が辛い思いをしていることにもっと早く気がつけたのに……ごめんなさい」
「……お互い様だね」
「……」
リドルは優しい目をしているが、アリスの目は寂しい目をしていた。まだ過去を後悔しているのだ。
「アリス、これからはちゃんとキミ自身のことを見るよ。だってキミはボクの」
婚約者、と言いかけたところでアリスが自分の人差し指をリドルの唇に当てた。
「それは『親同士が勝手に決めた』婚約者でしょう。……私のことを見てくれるんだったら、そう言うの抜きで見てほしいです。……"アリス"自身を」
アリスがいきなり自分の唇に指を当ててきたことに心臓が跳ね上がる思いをしたリドルだが、アリスの言葉は真剣そのものだった。アリスはそっとリドルの唇から人差し指を離す。
「分かったよ」
「ありがとうございます」
そのやり取りの後、アリスはもう一つ、「リドルに話したかったこと」を話し始めた。
「私、もっと強くなります。貴方を守れるくらいに。だって私は貴方を守りたいから。それに、もう私は『ハートの女王の手記』に書かれていた『迷子の女の子』じゃなくて、『ハーツラビュル寮の寮生』です。だから」
そう言ってリドルの前に跪く。そして、リドルの右手をとった。
「
と言って、右の手の甲にキスをした。リドルは唐突なアリスの行動に、今度は心臓が止まるような思いをさせられた。
「き、キミは一体何を……?!」
そう聞くとアリスはキョトンとした表情を浮かべた。なので、リドルは「何も意識していないんだ」と言うことを察して、心を落ち着けた。
「……なんでもないよ。でも、こういうことはボク以外の人にしないように。これは命令だよ。破ったら……お分かりだね?」
いつもの表情でそういうと、アリスは顔を引き締め、左足を引いて敬礼し、大きく口を開けて返事をした。
「はい、寮長」
アリスはこの時に、リドルのことが好きだからこそ「リドルを守る騎士」になることを誓った。リドルの歩く道に怪物が現れたら命をかけて守り、棘のついた薔薇の蔓が生い茂っていたら剣で切り開いて、リドルの身体に傷一つつかないようにする。絶対にリドルをハッピーエンドに導いてみせる、自分の人生を賭けて、と。