歌仙兼定×女審神者
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私室に隣接する簡易キッチンから淹れたての珈琲を手に戻ると、こたつテーブルに入った歌仙さんが右腕を枕にすっかり寝入っていた。たまに深くなる呼吸に合わせて、背中がかすかに上下している。だらりと床に落ちた左手の隣には、文庫本が開いたページを下にして転がっていた。 音を立てないようにそっと2つのカップを置き、文庫に栞紐を挟んでその隣に並べ、こたつ布団を持ち上げて隣に潜り込んでみる。まだ起きない。
左手を枕にして向き合うように寝顔をのぞき込んでみる。あまり寝心地が良くないのか、精悍な眉の間には深くしわが刻まれていて、どこか不機嫌そうに見えた。右手で顔にかかる癖のある前髪を払い、眉間をそっと撫でてみる。「んん」とむずがるような声を上げたのがなんだか少しおかしくて、こみ上げてきた笑いを唇を噛んで堪えた。こんな風に無防備な顔を彼が私に見せてくれるようになったのが、とても嬉しくてたまらなく愛しい。
すこし不機嫌な眉、その下の閉じた瞼を彩る濃いまつげ。すぅ、と真っすぐに通った鼻梁の下にある、意外と大きな口。うっすらと開かれた肉感的な唇からは白い歯が覗いている。その奥にある真っ赤な舌の熱を思い出して背中が甘く痺れた。沸いた衝動のままに身体を少しだけ乗り出してその唇の横、白い頬に唇を寄せる。胸の奥がじわりと暖かくなった。歌仙さんが目を覚まさないのを良いことに、2度、3度と触れるだけの口づけを頬に送りって身体を離す。心なしか歌仙さんの眉間から皴が無くなって、少しだけ微笑んでいるように見えた。
──せっかく淹れた珈琲だけど、このまま私も一緒に寝てしまおうかな。
多幸感でふわふわとした頭でそんなことを考えて、枕代わりのクッションを取りに行くために立ち上がろうとした、のだけれど。
いつの間にか腰に回されていた左腕に引き寄せられる。あっという間に歌仙さんに私を抱き込まれた私は、寝転んだその上に一緒に倒れこんでしまう。
「ちょっと、歌仙さん。いきなり危ないでしょ」
「君が離れようとするのが悪い」
不機嫌そうなセリフと裏腹に、楽し気に喉の奥で笑いながら歌仙さんが言う。もー、と口先だけで文句を言って顔を上げると、とろりと優しく融けた翡翠色の瞳がこちらを見つめていた。この瞳はずるいな、といつも思う。この瞳を見てしまうと、私は何も言えなくなってしまうのだから。
抗議の意味を込めて、胸元に額をグリグリと押し付けながら「珈琲は?」と聞くと「君が淹れたのは、冷めても美味しいから」という言葉が返ってきた。ほんとうに、ずるい人だ。そんな風に言われたら何も言えなくなってしまうじゃないか。
歌仙さんに促されて仕方なくもう一度顔を上げると、くるりと視界が回って私と歌仙さんの位置が入れ替わった。そっと啄むように私の頬に唇が落ちてくる。流されているなぁ、と思うけれど、悪い気はしない。たまにはこんな休日を過ごしたって良いよね、と自分に言い訳をしながら、私は目を閉じて彼の口づけを享受することにしたのだった。
とても幸せな休日の午後のお話。
左手を枕にして向き合うように寝顔をのぞき込んでみる。あまり寝心地が良くないのか、精悍な眉の間には深くしわが刻まれていて、どこか不機嫌そうに見えた。右手で顔にかかる癖のある前髪を払い、眉間をそっと撫でてみる。「んん」とむずがるような声を上げたのがなんだか少しおかしくて、こみ上げてきた笑いを唇を噛んで堪えた。こんな風に無防備な顔を彼が私に見せてくれるようになったのが、とても嬉しくてたまらなく愛しい。
すこし不機嫌な眉、その下の閉じた瞼を彩る濃いまつげ。すぅ、と真っすぐに通った鼻梁の下にある、意外と大きな口。うっすらと開かれた肉感的な唇からは白い歯が覗いている。その奥にある真っ赤な舌の熱を思い出して背中が甘く痺れた。沸いた衝動のままに身体を少しだけ乗り出してその唇の横、白い頬に唇を寄せる。胸の奥がじわりと暖かくなった。歌仙さんが目を覚まさないのを良いことに、2度、3度と触れるだけの口づけを頬に送りって身体を離す。心なしか歌仙さんの眉間から皴が無くなって、少しだけ微笑んでいるように見えた。
──せっかく淹れた珈琲だけど、このまま私も一緒に寝てしまおうかな。
多幸感でふわふわとした頭でそんなことを考えて、枕代わりのクッションを取りに行くために立ち上がろうとした、のだけれど。
いつの間にか腰に回されていた左腕に引き寄せられる。あっという間に歌仙さんに私を抱き込まれた私は、寝転んだその上に一緒に倒れこんでしまう。
「ちょっと、歌仙さん。いきなり危ないでしょ」
「君が離れようとするのが悪い」
不機嫌そうなセリフと裏腹に、楽し気に喉の奥で笑いながら歌仙さんが言う。もー、と口先だけで文句を言って顔を上げると、とろりと優しく融けた翡翠色の瞳がこちらを見つめていた。この瞳はずるいな、といつも思う。この瞳を見てしまうと、私は何も言えなくなってしまうのだから。
抗議の意味を込めて、胸元に額をグリグリと押し付けながら「珈琲は?」と聞くと「君が淹れたのは、冷めても美味しいから」という言葉が返ってきた。ほんとうに、ずるい人だ。そんな風に言われたら何も言えなくなってしまうじゃないか。
歌仙さんに促されて仕方なくもう一度顔を上げると、くるりと視界が回って私と歌仙さんの位置が入れ替わった。そっと啄むように私の頬に唇が落ちてくる。流されているなぁ、と思うけれど、悪い気はしない。たまにはこんな休日を過ごしたって良いよね、と自分に言い訳をしながら、私は目を閉じて彼の口づけを享受することにしたのだった。
とても幸せな休日の午後のお話。
3/3ページ