義父からの試練
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
白玉を安全なところへ離れさせたあとで、二人は向かい合う。野次馬の妖魔たちが何だ何だと集まってくる。化鯨は言った。
「ワシからこの杖一本取れたら、お主を認めよう。取れなかったら、白玉のことは諦めて帰ってくれぬか」
「へぇ? いいのか? アンタから一本なんて、あっという間だぜ?」
「だといいがのぅ。……では」
化鯨はこつん、と杖を置く。すると、身体全体に突如、重さが増して、黒龍は思わず膝を突いた。その間、ずいっと黒龍との距離を縮め、化鯨は杖で黒龍の身体を突きとばす。と同時に、黒龍の身体は軽くなった。
「いっ!!? ちょ、不意打ちずるくねぇか!?」
「ほれ。さっさと取りに来んか。あっという間なんじゃろう?」
再び化鯨が杖をつくと、また身体中が重くなる。身動きできぬほどの重力に、身体が悲鳴を上げる。ーだが。
「これくらいで、へこたれてなんかいられねぇっつの!」
黒龍は歯を食いしばりながらも身体を持ち上げ、化鯨の突きをかわした。その際、杖にかすって重力から解き放たれる。
「む。あれで動けるとな」
「ったりめぇよ! 次はこっちの番だ!」
そう言って黒龍は術を唱える。すると、巨大な龍がその場に現れた。ぐるぐると化鯨を取り囲むと、そのままかぶりつく。が、
「…そう簡単に、食われてたまるか…っ!」
化鯨もまた、術を唱え、巨大な骨鯨に変化した。巻きつく黒龍に噛みつく化鯨。その様は、まさに大怪獣である。
と、そこへ、騒ぎを聞きつけた妖怪が一人。
「化鯨ぁあああ!! お主、海妖広場で何やっとるんじゃあああーー!?」
この海妖魔界の大陸である赤えいが現れた。巨大化して暴れる二人を怒鳴ると、化鯨と黒龍は言った。
「赤えいよ、止めんでくれ! 水を差すでない!」
「あぁ、俺たちは真剣勝負してんだ! あ、取れそう!」
「あわわ、危ない…!」
「えぇい!! 真剣勝負もここまでくるとは思わなんだ!! 一旦頭を冷やさんかぁあーー!!」
赤えいがばっと両手を広げる。すると、砂が徐々に徐々に海妖広場を覆い被さり、ザブン、と二人に降り注いだ。
ーーー
砂の滝にうたれて、二人は人の姿に戻る。赤えいが仁王立ちで二人を見下ろしていた。
「化鯨よ。もっと場所があったじゃろ。場所が。あとあれ重量オーバーなるから止めてって言ったはずじゃよね?」
「…すまぬ…」
「そして黒龍殿も。血気盛んなのは結構じゃが、ここは戦いの場ではない。公共の場じゃぞ」
「あー、ははは。ついつい、ヒートアップしすぎちまった……」
「全く…急に重くなるから何事かと思ったわい…」
赤えいのへきへきした様子に、化鯨と黒龍は苦笑いを浮かべる。と、そこへ、目をキラキラさせた白玉が拍手しながら戻ってきた。
「お二人とも、すごかったですー! 骨爺さまのお姿、久々に見ました! そして黒龍さまのお姿、すごくかっこよかったですー!」
「白玉、お主もお主よ。何故止めなかった」
赤えいの問いに、白玉はこう答える。
「骨爺さまなりに考えた、試練だったそうなので! 止めちゃうのは、黒龍さまに対しても失礼かなと!」
「その前にワシの腰がやられてしまうわい」
赤えいの愚痴に、白玉はくすっと笑みをこぼす。そして、化鯨に振り向くとこう言った。
「骨爺さま、これで、黒龍さまとの交際を認めてもらえますか?」
「……」
化鯨がちらっと黒龍を見やれば、黒龍の手には骨の杖。はぁ、とため息をついて、化鯨は言った。
「……認めよう。ワシの敗けじゃ。白玉を頼んだぞ」
「! こちらこそ」
「ありがとうございます、骨爺さまー!」
黒龍が何か言う前に、ぎゅーっと化鯨に抱きつく白玉。そんな白玉に、黒龍は声をかける。
「おいおい、こっちにもバグしてくれねぇのか?」
「もちろんです! 黒龍さまもお疲れさまでした! かっこよかったですー!」
今度は黒龍にむかってぎゅーっと抱きついた白玉。
愛しい者の笑顔に、黒龍と化鯨は顔を見合わせ、どちらからともなく笑ったのだった。
(了)
「ワシからこの杖一本取れたら、お主を認めよう。取れなかったら、白玉のことは諦めて帰ってくれぬか」
「へぇ? いいのか? アンタから一本なんて、あっという間だぜ?」
「だといいがのぅ。……では」
化鯨はこつん、と杖を置く。すると、身体全体に突如、重さが増して、黒龍は思わず膝を突いた。その間、ずいっと黒龍との距離を縮め、化鯨は杖で黒龍の身体を突きとばす。と同時に、黒龍の身体は軽くなった。
「いっ!!? ちょ、不意打ちずるくねぇか!?」
「ほれ。さっさと取りに来んか。あっという間なんじゃろう?」
再び化鯨が杖をつくと、また身体中が重くなる。身動きできぬほどの重力に、身体が悲鳴を上げる。ーだが。
「これくらいで、へこたれてなんかいられねぇっつの!」
黒龍は歯を食いしばりながらも身体を持ち上げ、化鯨の突きをかわした。その際、杖にかすって重力から解き放たれる。
「む。あれで動けるとな」
「ったりめぇよ! 次はこっちの番だ!」
そう言って黒龍は術を唱える。すると、巨大な龍がその場に現れた。ぐるぐると化鯨を取り囲むと、そのままかぶりつく。が、
「…そう簡単に、食われてたまるか…っ!」
化鯨もまた、術を唱え、巨大な骨鯨に変化した。巻きつく黒龍に噛みつく化鯨。その様は、まさに大怪獣である。
と、そこへ、騒ぎを聞きつけた妖怪が一人。
「化鯨ぁあああ!! お主、海妖広場で何やっとるんじゃあああーー!?」
この海妖魔界の大陸である赤えいが現れた。巨大化して暴れる二人を怒鳴ると、化鯨と黒龍は言った。
「赤えいよ、止めんでくれ! 水を差すでない!」
「あぁ、俺たちは真剣勝負してんだ! あ、取れそう!」
「あわわ、危ない…!」
「えぇい!! 真剣勝負もここまでくるとは思わなんだ!! 一旦頭を冷やさんかぁあーー!!」
赤えいがばっと両手を広げる。すると、砂が徐々に徐々に海妖広場を覆い被さり、ザブン、と二人に降り注いだ。
ーーー
砂の滝にうたれて、二人は人の姿に戻る。赤えいが仁王立ちで二人を見下ろしていた。
「化鯨よ。もっと場所があったじゃろ。場所が。あとあれ重量オーバーなるから止めてって言ったはずじゃよね?」
「…すまぬ…」
「そして黒龍殿も。血気盛んなのは結構じゃが、ここは戦いの場ではない。公共の場じゃぞ」
「あー、ははは。ついつい、ヒートアップしすぎちまった……」
「全く…急に重くなるから何事かと思ったわい…」
赤えいのへきへきした様子に、化鯨と黒龍は苦笑いを浮かべる。と、そこへ、目をキラキラさせた白玉が拍手しながら戻ってきた。
「お二人とも、すごかったですー! 骨爺さまのお姿、久々に見ました! そして黒龍さまのお姿、すごくかっこよかったですー!」
「白玉、お主もお主よ。何故止めなかった」
赤えいの問いに、白玉はこう答える。
「骨爺さまなりに考えた、試練だったそうなので! 止めちゃうのは、黒龍さまに対しても失礼かなと!」
「その前にワシの腰がやられてしまうわい」
赤えいの愚痴に、白玉はくすっと笑みをこぼす。そして、化鯨に振り向くとこう言った。
「骨爺さま、これで、黒龍さまとの交際を認めてもらえますか?」
「……」
化鯨がちらっと黒龍を見やれば、黒龍の手には骨の杖。はぁ、とため息をついて、化鯨は言った。
「……認めよう。ワシの敗けじゃ。白玉を頼んだぞ」
「! こちらこそ」
「ありがとうございます、骨爺さまー!」
黒龍が何か言う前に、ぎゅーっと化鯨に抱きつく白玉。そんな白玉に、黒龍は声をかける。
「おいおい、こっちにもバグしてくれねぇのか?」
「もちろんです! 黒龍さまもお疲れさまでした! かっこよかったですー!」
今度は黒龍にむかってぎゅーっと抱きついた白玉。
愛しい者の笑顔に、黒龍と化鯨は顔を見合わせ、どちらからともなく笑ったのだった。
(了)