そう言いながら、わしゃわしゃと頭を撫でられた。

全く！そんなことを言われたり、こんな風に頭を撫でられるような歳じゃないのに！

と、胸の内で悪態をつきながらも、その手つきと口調はなんだか先程話していた兄を思い出させるような不思議な懐かしさを感じた。
そういえば、景奈も弟が居るようなことを言っていたしそれが影響して白夜のことも弟のように見ているのかもしれない。
じゃあ、まだ少しだけ我慢をしてあげてもいいだろう。

決して、撫でられるのが心地良いとかではない。決して。
これは、兄を思い出したのと、ここまでの景奈の心遣いに、振り払うに振り払えないだけなんだから。

白夜の表情は、むす……っと眉をひそめていて……
だが、そんな表情をしながらも、されるがままであるし、その頬は僅かに赤く染めている。
そんなことに気づいていた景奈は「可愛いんだから～～！！」なんて、胸の内で叫びながら、白夜を撫でていた。


「あっ……やばい、もうこんな時間か……。」


白夜をひとしきり撫でた後、景奈はふと、店内の時計を目にし「うげ……」と声を上げる。
白夜もつられてそちらを向けば、時計の針はもうすぐ5時になる時刻を指していた。


「もう少し 白夜ちゃんと一緒に居たいんだけど……今日お母さんに晩ご飯のお手伝いをするように頼まれてるんだよね……。」

「あら、そうなの……それじゃあ早く帰らなきゃね。」

「本当にごめんね……！白夜ちゃん、大丈夫？一人で帰れる……？」

「馬鹿にしないで。
それにこの後、金の卵の前で待ち合わせをしてるから大丈夫よ。」

「あはは、そっか！それなら大丈夫だ！
じゃあね、白夜ちゃん！また一緒に遊ぼうね！」


フラッペのカップを手で掴み、空いたもう片方の手でもう一度白夜の頭を撫でると、景奈は手を振りながら風のように店から飛び出して行ってしまった。

まるで、普段から一緒に遊んでいる友人にする挨拶のような挨拶だけを残して。