「なんでこんなことになったのかしら…………。」


白夜は、あの後、人間の少女に話し掛けられ、その後、あれよあれよという間に公園の木陰のベンチに連れていかれ、「冷たいもの買ってくるね！」なんて言い残して、どこかへ行ってしまった。

嵐のように現れ、去っていった少女が「汗でも拭いてて！」と言って渡してくれた青いハンカチを膝に置き、端の方を弄りながら「なんなのよ……。」と、一人、呟いた。


「ごめんね！待った？」


タッタッタッ！と軽やかな足音をさせて、少女が戻ってきた。
その両手には2本のペットボトルが握られており、
「スポドリと麦茶、どっちがいい？」
と、スポーツドリンクと、麦茶、二つのペットボトルを白夜に差し出しながら笑いかける少女。


「あっ、でも日本語分かるかな……えっと……スポーツドリンク……アンド…………えっと……。」

「……ふふ、麦茶をいただくわ、ありがとう。」


何の事かは分からないが、何か思い悩んでいる様子に微笑みながら、少女から麦茶を受け取った。

そんな白夜の様子を、少しだけ不思議そうに見つめた後、「うん！どうぞ。」と言うと、白夜の座るベンチの空いたスペースに腰を下ろした。


知らない人間から受け取った飲み物なんて……と少し敬遠したくなるような気持ちもあったが、せっかく買ってきてくれたものだし、それに封を切られていないペットボトルだし、なにより少女が言うように酷く喉が渇いてしまっている。

横で少女が、じっとこちらを見つめているような視線に知らないふりをしながら、ペットボトルの封を開け、麦茶を一口二口、こくこくと喉に流し込んだ。よく冷えた液体が体に染み渡る感覚がとても心地良い。

そんな白夜の様子を見て、少女も安心したのか、自分もスポーツドリンクの封を開け、ごくごくと勢いよく喉に流し込んでいた。


「はぁ～～～生き返る！
最近すっごく暑いもんねぇ……あ、大丈夫？本当に具合悪くしてたりしてない？」

「大丈夫よ、麦茶のおかげで暑さも吹き飛んだし。
あっ……そうだ、麦茶のお代…………。」

「えっ！いいよ、いいよ！
これくらいお姉さんに奢らせてよ。」


自販機で慌てて買ってきただけで、そんな高い物じゃないからさ！と財布を取り出そうと鞄を探る白夜を慌てて止める。
「そういう訳には…………。」と食い下がろうともしたが、少女の「いいって、いいって～！無事でなによりだよ。」と屈託の無い表情に絆され、「分かったわ。」と鞄から手を離した。