「あぁ～～！暑い～～！！」


お母さんったら酷いや！！！ただでさえ、こんなに暑さに弱い私を家から追い出すんだもん！！
そんなことを胸の内で言いながら、天野景奈は真昼のアスファルトを歩いていた。


真上から照りつける太陽も、その陽の光を浴びたアスファルトも、どちらからの熱もじわじわと景奈に確実なダメージを与えていく。
そんなダメージを受けながら、景奈はもう一度、「もう！暑すぎ～～～！！」と叫んでいた。


だいたい、あの居候のジバ猫が悪いのだ。
人が一日に一本って決めてるアイスを「あついニャン！」とか言って、勝手盗むもんだから、私がアイスを食べ過ぎてる！なんてお母さんに怒られてしまったんだ。
でも、たしかに、どうしても暑くて……という時に一日二本……食べてしまった時も……あったかもしれないよ？だけどさ？箱入りの棒アイスを3日で空にするなんて……そんなにいっぱい食べてないもん！！！絶対あのジバ猫のせいだもん！！！……なんて、お母さんに言ったって分かっては貰えないのは分かりきっている。だからこうやって私は「そんなにアイスが食べたいなら自分で買ってきなさい！！」って言われて自ら赴いているのだから。

アイスの為なら、仕方ねぇ…………。だけど、ジバニャン……お前は帰ったらムゲンほっぺたもちもちの系に処す…………。と景奈は強く心に誓った。
ムゲンほっぺたもちもちの刑が何かは今考えついた景奈にもよく分からない。


そんなこんなで、アイスのため、ヨロズマートへの道を歩いていた時だった。


目の前、数メートル先に、夏の風にそよそよと銀色の髪を揺らす人影が居た。

その、真夏に現れた妖精のような儚げで綺麗な髪に、「ついに幻覚を……？！」なんて思い、ゴシゴシと目を擦ってみたが目の前の景色は変わらない。
じゃあ、もしかして外国の子なのかな…………あんな道路の真ん中に立って、もしかして道に迷っちゃったのかな……。

後ろ姿から察するに、女の子、しかも弟であるケータと……同い年か年下くらいに見える背丈の少女を、じっと見つめ…………というと、ちょっと変態っぽいな……見守っていた時だった。


その少女が振り向いた。

その瞬間、その少女と、目が合ったような気が…………いや、確実に合ってる。
その子めっちゃこっち見てるもん…………。
っていうか、本当に銀髪だし、おめめなんか綺麗な緑じゃん！！！って、それよりばちくそ美少女じゃん？？？？


そんな景奈の抑えられない美少女センサーが反応したのか、つい


「えっ…………ちょっと待って……銀髪緑眼のめちゃくちゃ美少女いる…………」


と、声に出して言ってしまっていた。


ていうか、あの子、ちょっと顔赤くない？そりゃこんな炎天下であんな着物を着てたら当り前……え、じゃあ早く助けてあげなきゃ…………！


「ちょっと！ねぇ！そこの女の子！」


と、景奈は、突然話しかけたら……なんて考える間もなく、その少女に話し掛けるため、駆け出していた。