土蜘蛛と大ガマ その再会の巻

土蜘蛛は黙り込んだ後に
また口の端を上げて笑うと口を開く




「宇宙一のヒーローラッキーマンとやらが
どんなに強い男かと思えば訳の分からぬ
読まわいごとを抜かす男か…くだらん!
だがお前がどれだけ強くともこの世を
救えるのはお前ではなくこの救世主マンだ!」
「…………」
「聞いておるのかラッキーマ………」


「やめろよ!!」


「!ぬぉっ!?」




突然黙り込んでいた大ガマが
大声を上げ、土蜘蛛は驚いて
肩を跳ねさせると大ガマは
土蜘蛛に向かって突進していき
彼の事を押し倒した
何事かと大ガマを見れば…
顔を上げた大ガマはボロボロと
涙を流していた。





「やめろよ……やめろ…………
ラッキーマンって呼ぶな……
ラッキーマンだなんて呼ぶなよ!!
もう一度、「大ガマ」って呼んでくれよ!!」
「…………………何を」
「なぁ…妖魔界は…この世界には
ないんだよ……皆は元の世界で転生
して…俺、俺だけ、この世界に転生
して来て…本家軍の皆も…
ケータも…妖怪の仲間も…
知ってるやつは誰一人居なくて!!
いきなり知らない世界で人間として
生きろだなんて!!」



土蜘蛛は押し倒された体制のままで
泣く大ガマの涙を顔に受けながら聞く。
やっと会えたずっと会いたかった好騎手
なのに、何も覚えておらず自分を否定する
この絶望は…大ガマにとって計り知れない
物だった。




「やっとあんたに会えて嬉しかった!!
なのに、なんだよ覚えてないって!!
やめろ、やめろよ!!なぁ!!
「大ガマ」って呼んでくれよ!!
もう………もう……!!」





涙を流しながら大ガマは下にいる
土蜘蛛に叫んだ。





「俺の事を「大ガマ」だって知ってる奴も!!
元の世界への繋がりも!!




もう、お前しかいねぇんだよぉぉぉぉお!!!!」




しゃくりあげて泣きながら叫んだ
大ガマの声は廊下に響き渡った
転生してから、「洋一」「ラッキーマン」と
呼ばれることはあっても本当の名
「大ガマ」の名を呼ばれることは無かった

それもそのはず、妖怪大ガマである
自分を知るものは誰一人居ないのだから


その孤独が…どれだけ辛くて
どれだけ元の故郷の世界を思ったか
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