世直しマンその過去の巻

次に目を覚まし、広がった光景は
残酷で……凄惨なものであった
目の前に映ったのは血を流し傷だらけで 倒れ伏してもう動かぬ亡骸となった
家族の姿



「父さーん!!母さーん!!!世直美ーっ!!!」



それに追い打ちをかけるように世直しマンの
心に傷をつけたのは‥
星の住民からの非難の言葉だった
そしてこの日からであった
世直しマンが力に執着するようになったのは…

世直しマンは星を出ていき、
その非難の言葉と目の前で家族を
失ったという悲しみと恨みだけで
どんどん強くなった

しかし家族を失ったという悲しみは
癒えることなくその生き証人である
全身の傷も癒えることなく
仇である強盗星人を殺しても
泣き止むことなく泣き続けた…


そして世直しマンは傷だらけの醜い体を鎧に隠して宇宙から悪党を一掃するべく
凶悪な宇宙人を倒していった
倒していくうちに正義のヒーローと呼ばれる
事になり三本柱マンと会長に出会い友になった
正義のヒーロー、それが自分の生きる
道だと思っていた

もう少しで宇宙の頂点に立ち……傷も癒えると思っていた

しかしヒーロー神は、世直しマンを選ばなかった



…………………………………………………………………………………


「しかし、あくまでもこの宇宙で最強は私だ!!宇宙を統一するものは一番の力を持っていなければならないのだ!!私以外に宇宙を統一しようとする者の存在は認めん!!」
「よってヒーロー協会はつぶす!!そしてそれを果たし、私が真の全宇宙の統一者となった時…この傷から流れる血はとまり傷が泣きやむのだ!!」

「………」



大ガマはその過去を全て聞き、
世直しマンの姿と元の世界での
とある悪の大元である妖怪の
姿が重なった



「(……あぁ、こいつ誰かに似てるなと思ったら……)」



どこか誰かに似ていると感じていた
でも今、誰に似ているかが分かった
それは…




「(ウバウネだ、ウバウネに似てんだあいつ)」




トキヲ・ウバウネ
怪魔達を支配する大元の黒幕
かつて人間から全てを奪わんとした悪
…彼女はかつて無罪の罪を着せられ
人生を獄中で過ごすこととなり
そのまま死んでしまった恨みで
全てを奪うのだと…悪行に手を染めた


全てを奪わんと悪行に手を染めたウバウネ
全てを支配し正義を消さんと動く世直しマン


どうしても、大ガマにはウバウネと
世直しマンが重なって見えて…
唇を噛み、世直しマンを見上げて睨みつけた



「ふざけんなよ!!そんなんでその傷が
癒えると思ってんなら大間違いだ!!!」
「何?」
「お前がよく知ってるはずだろ!!
支配される者の苦しみや悲しみ恐怖!!
なのにその支配する悪になるなんて
天国の家族は嘆き悲しむぜ!!」
「っ!!」



大ガマの言葉に世直しマンはたじろぎ
冷や汗を垂らした…が大ガマは続ける



「俺はなぁ!!!前世であんたによく似た
悪の大元のボスをよく知ってる!!
だがそいつは自分の罪を恥じて
かつて自分には大切にしてくれていた
人が居たことを思い出して罪を
償って善行を重ねて改心した!!
でもあんたはどうだよ!?
あんたはそのまま正義のヒーローの
ままでいりゃあ良かったんだ!!
なのにどん底まで落ちやがって!!」



ウバウネはかつて自分には
仙吉という婚約者がいたことを思い出し
その仙吉が自分が死ぬまで待っていて
くれていたことを知り、罪を恥じて
後悔して改心して怪魔達と共に
善行を重ねて罪を償った

…それを知っている大ガマだからこそ語るのだ



「あんたも心の底から罪を恥じて
後悔すれば!!まだ間に合う!!
まだやり直せるんだ世直しマン!!」




そう叫び大ガマは腕を世直しマンに
伸ばした…が世直しマンはふっ、と
鼻で笑い馬鹿にしたような笑みを
浮かべて大ガマを見た




「…お前も相当の馬鹿だなラッキーマン
改心しろなどという戯言を今ここで
ほざくとは…」
「……テメェ…!!」
「…ラッキーマン」
「!会長」
「…ありがとう」



次に前に出てきたのは、会長だった
大ガマの肩に手を置いて眉を下げて、
どこか寂しそうな笑みを浮かべると
世直しマンを睨みつけた




「…世直しマン、力に寄って制圧された中で生きていかなければならない物の苦しみ悲しみはお前がよくわかっているはずじゃないか、そんな苦しみを誰にも与えないためにヒーロー神様はお前を会長にしなかったのだ、まだわからんのか世直しマン…!」
「…分かっているさ……人に従うことの情けなさを、嫌ってほどに。だからこそ私はもう誰にも従わんのだ!!私に全宇宙が従うのだ!!なあ、会長よ!ラッキーマンよ!
ここまで来たらもう答えは二つに一つだろ…」



分かってる
大ガマの言葉も良くしみた
まだ、まだ間に合ったかもしれない

だけど…



「私の力に全宇宙が従うか!?私の力に従おうとしない者に私が従うかだ!!そして従わぬ者を従わせる方法はただ一つ、この世から葬るのみ!!!」




もうここまで来てしまったんだ
戻れない所まで来たんだ
今更もう戻れない




「いくぜ」



世直しマンの体の傷からまた血が流れ
泣き声をあげ始めていた…
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