川のせせらぎの音と鳥の鳴き声と
森のざわめきの音が尚更その
幻想的な光景を際立たせる
夜の自然の光景と音が2人を包む…



「……塊、綺麗だね」
「……………うん」



塊の目に映っていたのは蛍ではなく…
蛍を見つめる愛花だったが
ぼんやりとしながら塊は答えた
……ボーッと、愛花を見つめていた
塊は心の中で思っていた言葉がふと、
思わず無意識に口からこぼれた



「ほんとに綺麗だ」
「だね」

「……………愛花が」

「そう…………へ？」



蛍に見とれていた愛花は
塊の口から発せられた思わぬ言葉に
流して返答しかけて……彼の言葉を
理解すると一瞬に何を言ったのか、と
頭が真っ白になると勢いよく
塊の方を向いた……




「…………………」
「っ、あ…？」



蛍を見ていただろうと思い込んでいた塊は
蛍ではなくて、愛花自身の方を向いていた
じっと見つめるその表情は幸せそうにも
見えて、でも愛おしげな…でもどこか
余裕がなさそうな照れくさそうな
顔もしていて……
距離が近いこともあり思わず
大きく心臓が跳ねて鼓動が大きく響き渡り
愛花も釣られて塊を見つめ返す




「…………」
「…………」




なんて口にしたらいいのか
なんて言ったらいいのか分からずに
ごく、と固唾を飲んでお互い見つめ合う
心臓の音が聞こえるのではないかと
塊と愛花の思うことは同じ事だった。



「…………」
「（……雰囲気凄い良いな……これなら、）」




これなら少し「前」へ行けるのではと
また固唾を飲んで前へ進んでしまおうかと
塊は考え始めた。



「（……夏なんだから）」



夏なんだから、せっかくなんだから…




「（大胆になっても、いいよな）」



大胆になって進んでもいいはずだと
塊の心の中で欲が膨らむ




「（……キス、したいかも）」




してしまおうか
そう考えてしまった