冬よ来るな
冬は嫌いだ
理由は寒いからか?
いいや違う、冬は
大ガマと自分とを引き裂くからだ
蛙である大ガマは冬は
冬眠に入ってしまい眠りにつく
春まで待つこの冬の期間だけは
何十年、という長い期間の
様に土蜘蛛は思えてしまう
「‥‥」
本家の者に頼んで入れてもらった
大ガマの部屋、
大ガマは布団に入り
寝息を立てて
春が来る時まで眠っている
そんな大ガマの
さらり、と栗色の髪をすいた
「これで目覚めれば
苦労はせぬのだがな」
元祖軍の子供の妖怪から
聞いた外国の御伽噺
姫が王子の接吻で目覚めるという
なんともありがちな、現実では
ありえない話
馬鹿馬鹿しいと思っていた
その話が現実で起こって欲しいと
思わず願ってしまう
「‥‥‥コレで目覚めれば」
少しの期待を胸に大ガマの唇に
口を近づけて、静かに唇を重ねて
接吻を交わした。
少しの間を置き唇を話す
‥目は開いていない
「ほらな、やはりただのお伽話だ」
くっくっ、と喉で笑い
馬鹿馬鹿しげに小さく溜息をつくと
大ガマの頭を正座した自分の膝に
置いて膝枕の形にすると
ふと、窓から見える雪に目をやった
「はよう、温くなれ」
早く来てくれ、春よ来い
そうすればこの蛙は夢の中から
現実の世界へと目覚めるのに
「憎い、冬が憎い」
春よ来い
そしてこの蛙の目を
さまさせてくれ
お前の声が今すぐに聞きたい
「冬の間だけだ、こんなに時間が
経つのが遅く感じるのは」
土蜘蛛の膝で静かに眠る大ガマは
眠りながら表情を変える
何やら寝言を言いながら
ふにゃり、と笑い始めた
そんな呑気な大ガマに
思わず頬が緩む。
「‥どんな夢を見ているのやら」
どれ、寝言でも聞いてやれと
土蜘蛛が大ガマの顔を覗き込むと
大ガマはにこにこと笑いながら
寝言を呟いた
「‥つち、ぐも‥」
「なんだ、吾輩の夢を見ておるのか」
どうやら自分の夢を見て
しまりなく笑っているらしい
そう知った土蜘蛛はなんとも言えない
愛おしさに身を焦がし、
尚更この冬が煩わしくなった。
「‥‥‥夢でもいい、お前の声を聞かせろ」
そうだ、ケータにおバク様を呼んでもらおう
そして夢の中で大ガマに会いに行こう
夢の中でもいいからお前に会いたい
冬よ、この蛙を奪ってくれるな
理由は寒いからか?
いいや違う、冬は
大ガマと自分とを引き裂くからだ
蛙である大ガマは冬は
冬眠に入ってしまい眠りにつく
春まで待つこの冬の期間だけは
何十年、という長い期間の
様に土蜘蛛は思えてしまう
「‥‥」
本家の者に頼んで入れてもらった
大ガマの部屋、
大ガマは布団に入り
寝息を立てて
春が来る時まで眠っている
そんな大ガマの
さらり、と栗色の髪をすいた
「これで目覚めれば
苦労はせぬのだがな」
元祖軍の子供の妖怪から
聞いた外国の御伽噺
姫が王子の接吻で目覚めるという
なんともありがちな、現実では
ありえない話
馬鹿馬鹿しいと思っていた
その話が現実で起こって欲しいと
思わず願ってしまう
「‥‥‥コレで目覚めれば」
少しの期待を胸に大ガマの唇に
口を近づけて、静かに唇を重ねて
接吻を交わした。
少しの間を置き唇を話す
‥目は開いていない
「ほらな、やはりただのお伽話だ」
くっくっ、と喉で笑い
馬鹿馬鹿しげに小さく溜息をつくと
大ガマの頭を正座した自分の膝に
置いて膝枕の形にすると
ふと、窓から見える雪に目をやった
「はよう、温くなれ」
早く来てくれ、春よ来い
そうすればこの蛙は夢の中から
現実の世界へと目覚めるのに
「憎い、冬が憎い」
春よ来い
そしてこの蛙の目を
さまさせてくれ
お前の声が今すぐに聞きたい
「冬の間だけだ、こんなに時間が
経つのが遅く感じるのは」
土蜘蛛の膝で静かに眠る大ガマは
眠りながら表情を変える
何やら寝言を言いながら
ふにゃり、と笑い始めた
そんな呑気な大ガマに
思わず頬が緩む。
「‥どんな夢を見ているのやら」
どれ、寝言でも聞いてやれと
土蜘蛛が大ガマの顔を覗き込むと
大ガマはにこにこと笑いながら
寝言を呟いた
「‥つち、ぐも‥」
「なんだ、吾輩の夢を見ておるのか」
どうやら自分の夢を見て
しまりなく笑っているらしい
そう知った土蜘蛛はなんとも言えない
愛おしさに身を焦がし、
尚更この冬が煩わしくなった。
「‥‥‥夢でもいい、お前の声を聞かせろ」
そうだ、ケータにおバク様を呼んでもらおう
そして夢の中で大ガマに会いに行こう
夢の中でもいいからお前に会いたい
冬よ、この蛙を奪ってくれるな
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