里親になると決意し、数ヶ月‥
養育里親希望者の説明会や
色んな手続きを終え‥
夏の日、その時はやってきた




「うー、ひっく、ぐす‥ふぇぇ‥」
「よしよし、泣かないで泣かないで‥」




その子はグズグズと泣きながら
彼が来るのを待っていた。
そして昼過ぎ‥静かにブーツの音が
聞こえてきて、赤ちゃんは顔を上げた




「う？」
「！あ、お待ちしてました！



勝利マンさん」





長い期間を得て‥とうとうその日はやってきた
そう、今日は‥勝利マンが自身が助けた
あの赤ちゃんが正式に彼の子になる日‥




「！！あー！うー！」
「‥待たせたな」




ここまで長くかかってしまった
この子を迎えに行くのに‥
長くかかってしまったが、
もう決めたんだ


この子を自分の娘として
人生かけて守るのだと





「もうどこへも行かないからな」




自分を幸せにしてくれるのだと
何も疑わずに笑うこの子との間に
いずれ、「血の繋がり」と言う
壁が立ちはだかるのは知っている
だが、その時が来れば伝えよう


血の繋がりなんて関係ないと





「やっと見つけた、俺の娘」
「あー！」




これからは自分がこの子の帰る場所だと
大切に抱き抱えて‥勝利マンは帰路へついた




「勝利マン、この子の名前何にするんすか？」
「ん、そうだな‥」




自分の腕の中で笑う赤ちゃんを
眺めつつ‥しばらく足を止めて
名前を何にするか悩んでいる、と
その時ふっと降りてきた。





「‥‥‥そうだ、」




誰にも負けない子になって欲しい
弱い心に負けない子になって欲しい
心も体も強い子になって欲しい
そんな思いを込めて‥




「勝代」




勝代と書いてカヨ
そう、決めた。





「勝代、お前は勝代だ
俺からとってな」
「勝代‥勝代！いい名前っすね！」
「どうだ？勝代」




そう尋ねれば、きゃっきゃ！と
明るく笑う娘を見て
勝利マンは娘を抱きしめた




「そうか嬉しいか、勝代！
‥俺が幸せにするからな」





だから、どうかいつか自分を父と
呼んで欲しい



この日、勝利マンは改めて
1人の父親となった。