「……さっちゃん、さ」
「ん？」
「………もしかしたら友達の作り方が分からなったのかもね」
「…………かもな」


勝利マンと鈴音は2人で空を見上げた
…思えばさっちゃんも可哀想な人だった

もしもさっちゃんに友達の作り方を
教えてくれる人がいたら
…もしもさっちゃんに友がいたら…


何かが、違ったかもしれない



「………そういえばやつが渡したのは…」
「あっ、そうだ黄桜が勝利マンに渡した筒の中身、なぁに？」
「これは恐らく…」



筒の蓋を引き抜いてその中に入っていた
一枚の写真を取り出して鈴音と
共にその写真を見た
それは、幼い勝利マンと友情マン、努力マン…そして三本柱マンとその妻である三本妻が写った一家の写真…



「やはりいつも父さんが肌身離さず持っていた写真…」
「わぁ…皆ちっちゃい、可愛いねぇ…」



裏宇宙まで行った甲斐が有る形見だ、
ありがとうよ…と
勝利マンは黄桜に礼を告げた。



「父さんは家族の名前を書いたこの写真を持っていつも悪に立ち向かっていた………ん！？」
「えっ？」
「…ふっ、」
「…あ…」



裏面を見た勝利マンはふっと笑うと
鈴音にその裏面を見せた。
裏面には家族の名前が書いてあった…
だが、その隅っこに拙い子供の時で…




きざくら



と、書いてあった…



「…黄桜……」


ああ、黄桜は羨ましかったのか…
この家族が…
自分もこの家族のように…と思いながら
自分の名を書き足したのだと思うと
じぃん、と胸が暑くなりまた泣きたくなった。


「ん」
「！あ、ありがとう…」


そんな鈴音に勝利マンは
缶コーラのジュースを渡した。
鈴音は涙を引っ込ませて
コーラのプルタブを開けた、


「………寂しがり屋の……」



勝利マンは日本酒を開けてコップに
酒を注ぐとすっ、と鈴音の
方へ向けた。
その意図が分かった鈴音は微笑んで…
コーラの缶と酒の入ったコップとを合わせて乾杯をした。




「黄桜に、乾杯」
「乾杯」




喉を潤すためにコーラを喉に
流し込めば甘い味と炭酸の刺激が広がった
さぁぁ、とまた桜の花びらが散り
桜の風となり地面を染めた。


「……」
「……勝利マン！勝利マンも早く皆のところ戻っておいでよ！先待ってるね！」
「おう」


にっこり、と笑顔で手招きをして
鈴音は大好きな彼の隣へと戻っていく。
天才マンの隣へ座るとコーラをまた口に運び、天才マンはそんな彼女に愛おしげな
目線を送る…

その様子は…もう何度も見ているのに


もう…慣れているはずなのに



「……あぁ」


桜を見あげて、静かに勝利マンは呟いた





「俺の恋も…桜みてぇに簡単に散ったらよかったのにな」





自分の恋もこの桜と共に散ってしまえば
そう思ったが‥やはり、諦め切れそうにないらしい


ぐい、と酒を一気に飲み干して勝利マンは
仲間の元へと戻っていった

黄桜よ、見えるか？
お前の好きなこの桜が…