「こんな形のクリスマスパーティーも悪くないよね…えへ、楽しいなぁ」



ケーキを早めに食べ終えて手に着いた
クリームを舐め取りながら少し遠くで
騒ぐ仲間を見て微笑ましそうに眺める鈴音。
そんな彼女に背後から近寄る影…
その影は鈴音を後ろから突然抱きしめた。


「っきゃ！？誰…っあ、」


抱きしめたのはもちろん…


「ふっ、私だ」
「天才、もうびっくりしたじゃん…」


天才マンだった
彼はにこやかに笑顔をうかべて
マントを手に持ったまま腕を回して
彼女をマントで包むようにして抱きしめていた。


「…本当はこうやって温めてあげたかったんだ、どうだ？暖かいだろう？」
「うん、暖かい！…天才マンの暖かさがね、伝わってくるよ…」



彼の腕に手を重ねて頭を天才マンの
胸に任せると、体温が伝わり暖かくなる。
しばらくお互いに目を閉じてそうやって
抱きしめあっていると天才マンが目を開き




「…ラッキーちゃん」
「なぁに…？」


鈴音の耳元で、囁いた



「………………デートの時以来、キスしてないな」


「っうぇ！？」



いきなりそんなことを言われて真っ赤になり
振り向くと、天才マンも頬もほんのりと
赤く色づいていて…何が言いたいかが鈴音には分かり…
ギクシャクとした様子で彼に聞いた。



「…えと…天才マン、もしかして…したいの？………キス………」
「したい」
「！！…………ど、しよ…ね」



皆の方をちらりと見る。
皆は騒いでいて気づいてない様子だが…
やはり人の目が気になる。



「…ダメか？」
「……したくない、って言ったら、嘘になる………したい、けどあの…人の目が…」
「だったらほら、そこの木の影ですればいい」


そう指さした先にはおおきな木が。
あそこの木ならば確かに隠れて見えなく
なるかもしれない…と思い少し悩むと鈴音は…真っ赤になりちいさく頷いた



「……いーよ……」
「！、よかった…」



OKが出ると手を引き鈴音を
木の影に連れていき木に鈴音を
よりかかせると壁ドンの形で手を置く。


「てんさ、」
「シー…」
「っん、」



指で”静かに”のジェスチャーをすると
天才マンは鈴音の唇に自分の唇を重ねて押し当てた。
まだ、りんごのように赤い頬で目を細める
と目を閉じて彼の背に腕を回して身を任せて
お互いの唇の感触を味わうかのように
小さくリップ音を立てて何度か離れて、
また唇を押し当ててを繰り返してキスを交わすと、名残惜しげに離れた。



「………ん、へへ…」
「…やっぱり、」
「…ん？」
「キスした後のお前は可愛いね」
「……ありがと、でもね、照れちゃう…じゃん」
「照れてもらえるとこちらも嬉しい…さて、そろそろ戻ろうか？…皆に茶化されるぞ」
「…うん」



天才マンはそう笑う鈴音の手を
恋人繋ぎの形で握って皆の元へ戻った。
いきなりキスしたい、と言い出したのには…理由があった



「(もしかしたら…永遠に会えなくなってしまうかもしれないから…)」



そう、もしかしたらさっちゃんによって
最後になってしまうかもしれないから…
だから、大事な君とその時までそばに居た
い
そう心の中で呟いて鈴音の手を強く握った。




「超ちゃん、戻ってきたな天才マンとラッキーちゃん」
「チューしてたんだよきっと…！いやー若いなぁ2人とも！木の影にわざわざ隠れてたんだからねー」
「…私も恋人欲しい」



そうおっさんらしい会話をする
世直しマンと会長に対して…皆に紛れて1人…



「……」



勝利マンはその様子を見て切なげに
顔を歪めるとふい、と顔を背けて…
また鈴音の方に目をやる…




そんな彼のことを見ていたのが1人…



「…(まただわ…また勝利マン様…あの二人を見て…)」


ラマンちゃんだった
ラマンちゃんはその目線を追っていく…
そしてその目線の先にいたのは…



「…ラッキー、ちゃん？」



そう、天才マンと手を繋ぎ笑いあう
鈴音の姿があった
勝利マンと2人とを何度も見やって…
1つの答えがラマンちゃんの頭に浮かんだ




「…もしかして…勝利マン様は…ラッキーちゃんの事を…」



不安とショックの思いの中そんなことは無いと
思いたかったが…勝利マンのあの鈴音を
見る切なげで辛そうな表情が物語っていて…
ラマンちゃんはぎゅ、と両手を握って
勝利マンを見つめる…
そして勝利マンはラッキーちゃんを見つめていた…