その申し出に来たか、と胸が尚更煩くなった。
鈴音は目線をあちらそちらに泳がせて…
顔を赤くさせると頷いた。


「……いい、よ」
「！……鈴音…」


夕日に照らされる中‥頬に手を添えて
腰に片腕を回して、彼女を抱き寄せた
天才が顔を近づけると、反射的に鈴音も目を瞑った。
狭い中、抱き寄せれば当然体は密着し、
大きく高鳴るお互いの胸の音が嫌でも分かった。


「……」
「…」


ゆっくり、と顔を近づけてゆく。
後10cm‥5cm‥3cmと距離が縮まり…
そして観覧車がてっぺんへ着いた頃、
天才と鈴音の唇は、静かに重なった。


「……ん…」
「……」


唇を重ねながら、無意識に少し強く
鈴音を片腕で抱きしめた
唇を重ねるだけの、触れ合うだけの純粋なキス。

唇を離すと鈴音は耳まで赤くさせて
天才の胸に顔を埋めた。


「…………キス、しちゃったね」
「……あぁ………所で、鈴音」
「…なに？」
「…どうして顔を見せてくれないんだ？」
「…恥ずかしいから」
「見せてくれ」
「やだっ…今絶対変な顔なってる」
「いいから」
「あっ！」


嫌がる鈴音の顔を無理やり向けさせて
見ると、鈴音の顔は耳まで真っ赤で…
瞳は少しうるんでおり、天才は劣情を掻き立てられた



「言った、じゃん変な顔だって…」
「全然そんな顔、していなかった…いつもと同じ、可愛いお前だよ」
「……照れるじゃん…」


ぐりぐりと頭を天才の胸に擦り付ける
その仕草が可愛くて、思わず抱きしめた。


「…ね、天才」
「…ん？」
「……天才、大好き」
「…私もだ、大好きだよ鈴音」


観覧車はもう少しで下へ到着する。
下に到着するまで天才と鈴音は
抱きしめあって、お互いの体温を感じていた。