その後、鈴音は授業にほとんど
集中出来ずに受けている振りをしながらも
天才から呼び出しを受けたことが気になって
仕方なかった。
もう6時間目…これが終わってホームルームが終われば…


「…(終わって、人が居なくなったら…)」


そう、終わったら天才との約束の時間が来る…
もしかして天才から告白される、なんて
思ってしまうが…それはないと
言う思いもあり、これほどまでに授業が
長いと思ったことは無い。
授業が終わって欲しいという想いもあるが
緊張してまだ心の準備ができていないため…
まだ、まだ終わって欲しくないという思いもあった。


「…では、6時間目終了するのでーす、ホームルームまで5分間お待ちくださいなのでーす！」
「(ひゃぁぁぁもうすぐだぁぁぁ‥！！)」


鈴音は6時間目終了の言葉を
聞いて肩を跳ねさせた。
5分間というものもホームルームも
終わるのは早く…ようやく、放課後がやってきた。


「終わった終わった！」
「明日休みだから帰ろー」


クラスメイトはワイワイと話しながら
下校していくが鈴音はそのまま
座りながら天才と二人だけになるのを
待っていた…
努力が帰る気配がないのを察して
鈴音に声をかけた。


「師匠？帰らないんですか？」
「へ！？あ、うんまだ用事があってね…努力、先に帰ってて…」
「分かりました！それでは師匠また！」
「う、うんまたねー！！」


努力に手を振り見送る…
そのまま下を、机を見つめながら座り続けて
待っていれば…クラスメイトはぞろぞろと
帰りだしもう既に、教室は自分と天才のみに
なっており鈴音の心臓は大きく
高鳴りうるさくなる。


「………」
「…」


じっ、と天才の方を見れば天才は
外の方を気にする様子を見せ…
教室のドアから顔を出してキョロキョロと
当たりを見回し…人が居ないことを確認すると
鈴音の方へ歩いてくる。


「…あ」


天才が歩いてくるのを見た鈴音は
少し慌てて席から立ち、天才の方を真っ直ぐ
とみやる。
真剣な目を向ける天才に唾を飲み込んで
彼の目を見つめる…
そんな鈴音の背後を、オレンジ色の夕日が照らしていた。