の想いを断るのは申し訳ない、傷つけて
しまうことになる事は分かっていた
しかし‥


「(‥私が、私が好きなのは‥私が恋人同士になりたいのは‥)」
「(天才、だから‥だから、)」

「勝利の気持ちは嬉しいよ」
「「！！」」


勝利はその言葉に鈴音の方をまっすぐとみやり
天才はその言葉に顔を真っ青にさせた
しかし‥




「‥‥‥でも‥‥‥‥ごめんなさい‥‥私‥私、勝利の気持ちは受け取れない」
「‥‥」


帰ってきた言葉はお断りの言葉だった
目を見開いた後に、鈴音の言葉を待った


「‥‥私‥は‥勝利の言葉頼もしい仲間だと、友達だと思ってるよ、でも‥お付き合いはできない、想いは受け取れない‥だから‥勝利とは今まで通り仲のいい友達でいたい‥だから、」


ごめんなさい‥と鈴音は勝利に
改めて頭を下げた
勝利は鈴音の言葉を全て聞き終えると
少しの間目を瞑り‥‥‥目を開いて
返答を返した


「‥‥‥‥そうか、なら今まで通り仲間で、友人でいてくれよ鈴音」
「うん、これからも同じヒーローとして頑張ろうね、」
「おう、‥じゃ、来てくれてありがとうな」


勝利は静かに後ろを振り向くとそのまま
手を振りながら去って行く
それを見た天才は喜ぶでもなんでもなく‥
こちらへ歩いてくる勝利の事を影から隠れながら見ていた
勝利は天才と目を合わせると小声でこう彼に告げた。


「頑張れよ」
「！しょ‥」


彼に声をかけるその前に勝利はさっさと歩いていってしまい天才の手は宙を切る
天才はその言葉の意味を改めて認識すると
激励の言葉をくれたライバルに告げた。


「‥‥ああ、頑張る‥」


そして去っていった勝利は‥ようやく
鈴音に選ばれなかった実感が湧き‥
怒りや悲しみや空しさ、それに敗北感はどうしても込みあがっできた。



「(お前が好きなのは‥天才かよ)」


戦っていた時から何となく思っていた
鈴音が天才の事を好きなのではないかと‥
あの二人は両想いなのでは無いかと‥
しかし、そこで諦めるなんてできなかった
”負けてる”なんて最初から決めつけるのは自分のプライドが許せなかったから‥
それでも‥


「(俺の方が先に出会った‥おかしいだろ、俺は今まで勝利を掴み続けてきた！！)」


ぎゅっと拳を握り締め、歯を食いしばって、目頭が熱くなるのを必死にこらえる
誰も見てないときでさえ、涙を我慢してしまう男‥
それが彼、勝利マンであった。


「(‥だが、アイツらが付き合ったとてまだ負けた訳じゃあねぇ)」


ぐっと涙を流さぬように空を見上げる
空はまだ青かった


「天才、お前が泣かせたらすぐに奪いに行くからな」


一方影に隠れている天才と
それを知らぬ鈴音は‥


「(‥勝利‥)」


今恐らく悲痛に心を寄せている
ライバルを心配する天才‥
そしてそれは鈴音も同じだった


「‥勝利、ごめん‥‥」


去っていった勝利の方をジッ、と
見つめて下を向いていた鈴音は
そのまま下を向きつつ帰路へつこうとゆっくりと歩き始めた

彼女が来ることにあたふたとするが
ここは冷静を装うのが正解だと背を向けて
急いで玄関の方まで走るとそのまま
”今でた”というようにゆっくりと歩く。


「‥‥？‥あっ、天才‥」


そんな事も知らない鈴音は
前方に天才の姿を見つけた
天才は鈴音が自分を見ている
ことに気がついてこちらへ来る。


「‥鈴音」
「‥天才、今帰り？」


彼と会えて嬉しいのも半分、
半分は勝利を傷つけてしまったという
後悔と悲しみに染まっていた。


「‥元気ないな」
「‥えとね、少し‥ね‥」


全てを見ていた天才は知っていたが
あくまで知らない風を装い彼女を元気つけようと決めた。
下を向いて、暗い顔の彼女に天才は
その頭をぽんぽん、と軽く撫でた。


「！！」
「‥ゆっくりと心を落ち着かせるといい」
「‥‥うん、ありがとう天才‥」


天才の言葉に鈴音はまだ眉を下げつつも
笑顔をうかべた
天才はその様子を見て‥心の中で呟いた


「(‥‥勝利、お前の言葉、この天才の心によく響いたよ‥あの言葉がどういうことかは分かる)」
「(泣かせる真似なんてしない‥絶対に)」

「(‥その前に、彼女に私の心を伝えるよ‥)」


そう、天才も決めた
三日後だなんてそんなもたもたしない‥
もう悩まない、鈴音に想いを伝える、と‥



「(‥恋人同士になりたいのは天才と、って思ってたけど‥)」


横の天才を見て‥また目を逸らした。


「(‥私と天才とが‥釣り合う‥のかな‥釣り合うわけない‥)」


すれ違う2人


次回‥決着‥？