「着いてきてくれてありがとうございます‥実は、貴方と師匠の事が気になって」
「っ！？」


自分と鈴音のことが気になる、
そのワードにびくり、と体を跳ねさせた。
まさか‥努力も彼女を‥？


「わ、私と‥鈴音の事が気になる？それは、どうして？」
「‥最近、天才は師匠の方を見て暗い顔をしている事が多いなと思い‥師匠と何かあったのかと」
「‥‥それは」
「あ、安心してください！」


努力の言葉にぱっ、天才は顔を上げた。
努力は笑顔を浮かべている


「先に行っておきますが、私は師匠に恋愛感情は持っていませんので！！」
「！？そ、そうなのか‥！？と、いうよりなぜ私が彼女を好きだと！！」
「友情兄さんから借りた恋愛小説の知識で、もしかしてと思いました！！」


そう、努力は鈴音ト天才の変化に気がついており‥
最初は分からずに努力は友情に聞いたのだが教えて貰えず、
そこで友情は黙って恋愛小説を渡して
「これを読んで考えたらわかるはずだよ」
と助言した。
まさか努力にまでバレていたのかと真っ赤になり
天才はバレていたのかと恥ずかしくなった、が
努力が鈴音に恋愛感情を持っていなかったことに安心した。


「何かあったという訳では無いんだ‥私は、確かに鈴音が好きだ‥だが、だが‥1度私は彼女を殺そうとしたんだ‥そんな私が、彼女の隣に立てるのかと心配になって」
「‥天才‥」


珍しく暗い表情をして語る天才に
努力も眉を下げて彼の想いを聞く。


「‥別の男性の方が‥相応しいのではないかと思ってしまうんだ、でも‥でも諦めたくないという思いもあって‥どうしたらいいのか‥」
「それなら簡単な事ですよ！！」
「！」
「諦めたくないのなら努力！！何よりも努力です！！確かに過去は変えられませんが、未来はまだ変えられる！！」
「努力‥」
「努力すればいずれ叶います！！天才！！」


努力の励ましの言葉‥
今の天才にじーん、と届いた。
そうだ、今の自分に足りないのは‥努力だと
諦めずに‥アタックすれば希望はあるのだと
天才の心の霧は晴れた。


「‥ありがとう努力！！悩みが晴れた、感謝する」
「いえいえ！！役に立てたのなら何よりです！！」


こうして天才と努力は颯爽と屋上から
出ていって教室へと戻り‥
鈴音の隣で授業を済ませた。
そんなことがあったことを知らぬ鈴音は
昨日から天才の様子を心配していたのだが‥
天才の様子が改善したことを知り、
小さく安心の息をついた。