「いやただの迷い‥だよね‥？でも‥」



小説のページをじっとガン見した後に
隣の天才の席を見やる、
彼の机の横にはまだ天才自身のカバンが
あって‥まだ帰ってないことがわかった。



「‥天才の事を見るとドキドキ、って‥なにそれ‥やだ、まるで‥」



この謎の共感や、想いの正体にようやく
気づいて‥真っ赤になった顔を隠すように
俯いて頬に手をやった。
自分の頬は熱がある訳でもないのに暑い。



「‥天才のこと、好きみたいじゃんか‥」



要約自覚出来た、とでも言うように
真っ赤な顔で頭を抱えて小さな声で呟いた。
鈴音はようやく分かったのだ



自分が、天才の事を好きなんだと



しかし恋を自覚できたからと言って
必ず恋が叶うものでは無い、と
鈴音はため息をついた。
両片思いであるということにも気づかずに



「‥天才を好き‥だったしても‥叶うわけないじゃん、ねぇ？」



付き合いたいかといえば‥彼が恋人
だったらそれは嬉しいと思うが‥



「だって天才だよ‥？モテるじゃんか‥私よりも可愛い子や美しい女性のが似合うよ」


自分は子供っぽくて‥背も小さくて‥
天才の横に並んでも似合わない、と
ため息をついた
モデルのように美しい女性が天才の横に立っている妄想をして勝手にブルーになって
また2回目のため息。


「‥無理だろうな‥でも‥」


優しく慰めてくれて‥
時には助けてくれた優しい天才。
そんな彼を想うと、ふわふわと幸せな
気分になった。


「‥好きなん、だよな‥でも‥」


後ろ向きな気持ちと一途な恋心が反発
しあって心の中はぐちゃぐちゃだ。
鈴音は窓の方が後ろになるように
椅子を座ったまま移動させて、後ろの窓に
頭を預けて天井を向いた。


「‥ぐちゃぐちゃで、どうしたらいいのかわかんなくなっちゃうよ‥」


そう呟いて、小説を読む気分でもなくなり
そのまま扉の方を向いたままぼーっと
し始めた鈴音はそのうち夕日の
温かさのせいで眠気に誘われて目を閉じ、
うとうとと寝こけてしまった。
誰かが教室へ来る事も気づかずに‥