鈴音は読書が好きだったりする
ファンタジー物やホラーやコメディ‥
幅広いジャンルを好んで本に目を通す。
だから図書室にも足繁く通っているのだが
最近の彼女が借りているのは‥


「あ、あった！これも借りちゃお」


恋愛小説である、今彼女が手にしているのは
「青春ラブストーリー」という恋愛青春小説。
最近鈴音は恋愛小説を毎日のように借り始めた


「‥恋、かぁ‥」


小説の表紙に目を通しながらぽつりと
呟いた
やはり自分も女の子、恋には興味津々だし
憧れもあるのだ。
でも恋というものがよくまだ分からないから‥こうして恋物語からヒントを得ようと
しようとしているのだ。



「教室戻って読んじゃお‥！放課後だし誰もいないし‥少し遅くなってもいい、よね？」


現在は放課後、ほとんどの生徒は帰路に
ついて学校はしんと静まり返っている
やはり青春ものの小説ならば学校で読んだ
方が雰囲気が出る、と鈴音は
自分の教室の自分の席に向かうために
図書室を出て廊下に出ると歩き出した。


「彼氏、いいよなぁ‥」


表紙にはキラキラと美しい容姿をした
男の子とかわいい女の子が手を取り合って
微笑んでいる。
自分もこんなふうに誰か異性とラブラブになりたい、と妄想をふくらませた。


「私もいつか素敵な男の人と‥」


目を閉じて妄想する、美しい綺麗な男性と
手を取って微笑み合う妄想を‥
鈴音が頭に無意識に思い浮かべた のはサラサラの金髪に綺麗な三日月を
連想させるような緑の瞳の彼が自分に
微笑んでゆっくりと顔を近づける姿。



「‥鈴音‥」
「ってうわわわーーー！？」



何故か無意識に天才のことを妄想してしまい
顔を真っ赤にしながら手をばたつかせて
頭の中の妄想をかき消した。


「なんでそこで天才が出てくんの！？」



頬をまだ暑くさせながらも足を急がせる。
何故そこで仲間である彼が出てくるのだ、と頭を振った。


「んもー‥てか私一人でなにやってんだろ、恥ずかしくなっちゃったよ」


ブツブツ言いながらも自分の教室へつき
扉を勢いよく開けて自分の席に着いた
席に着いた鈴音は気を取り直して
ご機嫌で本を開くと小説を読み始めた。
小説の内容は学園一の美少年に惚れられた
平凡な女の子の恋物語だ。
最初こそは女の子は彼が自分を好いているだ
なんて信じられなくて‥彼の事を避けてしまうが
彼が自分と距離を置きかけた頃に女の子も
自分の恋心に気づいて‥彼に想いを伝えると
言うものだった。


「‥‥」


黙って目を通して読む鈴音、
素敵な恋物語だと心打たれるが、その物語に
何処か共感できるものがある気がして‥



「なんでだろ‥？なんか、同じだって思っちゃうのは‥」


何に共感しているのだろうと
自分で自分が分からなくなる。
ぱらり、とページをめくると挿絵があった。
男の子の容姿は金髪の美少年でキザで‥
鈴音はくすり、と笑った。


「ふふ、天才みたい」


天才の事を思い出して笑みがこぼれる
天才の姿が頭の中に浮かぶと自然に
胸の鼓動が早くなってふわふわと幸せな
気分になる。
こんな気分、前まではならなかったのに‥



「またドキドキしてる‥」


高鳴る胸に手を当てる。
そんな自分の病状に無視をして小説に目をやる。
小説には「彼を見ていると胸が高鳴ってふわふわと幸せな気分になるの」
と、女の子が友人の女の子に恋の悩みを
打ち明けているシーンがあった。
そのシーンを読み進めると
「彼を見ていると胸がドキドキする」
「彼のことを目で追ってしまう」
「彼の事を思っていると幸せ」

と言う内容が‥



「‥あれ？」


ここで鈴音は疑問に思った。
このワードがやけに気になる‥と言うか、
何か‥一致しているような‥しっくりと来るような気がした、でもそのしっくりとが
分からなくて‥なんなのだろうと頭を動かした。


「‥胸がドキドキ？」


この一行で頭に浮かんだのは、また天才の顔だった。
世直しマンとの戦いの時
花見の時
席替えで隣になったばかりの時‥
そしてふとした時‥



「天才の近くにいた時、とか‥ドキドキしてたような気がする」


それだけじゃあない
やけに彼の行動が気になって
見ちゃって‥
でも目が合うと嬉しくてこそばゆくって‥

まさか、という可能性が頭に現れて
汗を垂らしてはは、と笑った。


「あは、いやいやまさか‥」


もしかしてというとある答えが浮かんで‥
それを否定するかのように頭を横に降った。