モールの中へ入り映画館へ向かう勝利と
鈴音はその間も手を繋いだままなので
天才は眉にシワがよった顰めっ面のままだった
また、手を繋いで歩いているものだから
微笑ましい顔で周りの人に見られる勝利と鈴音。



「ねぇねぇ、あそこの男の子ワイルドでカッコイイ！隣の女の子彼女かな？」
「ほんとだ、隣の女の子可愛いー…美男美女でお似合いね！」

「！！！？？」


すれ違いのおばさんとお姉さんのひそひそ
会話に天才はぐるんと振り返ると次に
歩いている鈴音と勝利に目をやる。
鈴音は聞こえていなかったようだが
勝利には聞こえていたようで、ニヤニヤしているのが見えた。



「(び、美男美女で…お似合い…)」



その言葉を反芻しながら二人を見る。
歩く2人は確かにお似合いで…彼女と彼氏
なんて言ったらピッタリで…そう思うと
ズキリ、と強く天才の胸が傷んだ
そんな天才の様子を心配そうに見ていたのは、友情のみだった。


「(美男美女でお似合い、そうだろそうだろもっと言え)」
「？勝利？どうしたの？」
「あ？なんでもねぇよなんでもねぇ…」



お似合いの言葉にニヤつく顔を隠しながらも勝利はまた強く彼女の手を握りしめた。
そんな事がありつつも勝利と鈴音、天才と友情は映画館へつき
チケットを購入するとスクリーンの方へ向かい席につき、ゆっくりと暗くなるスクリーン。


「あ！始まる始まる！」
「はしゃぐなっつの」

「………鈴音……」
「(ふ、雰囲気がぁ…着いてこなきゃ良かったかも〜…)」


仲睦まじく話す勝利と鈴音の方だけを見ている天才には映画などどうでもよかった…
ただ2人の様子を見て目をそらした。
恋の彼此が渦巻く中、映画は始まった。

映画は評判の通り、アクションのシーン
が面白くもハラハラするもので…
最後の感動の結末には鈴音は
思わずうるうると涙目になり涙を流した、
そんな鈴音に勝利は黙ってハンカチを貸してやった。
映画が終われば鈴音は勝利に貸してもらったハンカチで涙を拭きながらスクリーンから出てきた。