第19話


五「白夜遅いな…」


いくら待っても戻らない白夜に、五条悟は様子を見に行くことにした


トイレの近くへ行くと、なぜか人だかりになっており、悲鳴が聞こえたり、早く救急車を呼べ!と叫ぶ声が響いている


五(…なんだ?何かあったのか?)



騒ぎの中心をそっと覗き込むと、そこにいたのは






五「…は……?」





お腹から血を流して倒れている、白夜だった





五「…なん、で……」




一瞬にして、頭が真っ白になった

だが、体は無意識に白夜のもとへ



白夜のそばまで来た悟は、何も言わずそっと白夜を抱き上げた

そして




五「…お前ら邪魔だ。そこどけ」




白夜を囲っていた人たちに、睨むようにそう言い放つ
悟の威圧に圧倒された人たちはそっと道を開けた

開いた道を通った後、悟は一瞬でその場から消えた














コンコンコン!!


家「はいはい、聞こえてる。誰だ?」


扉を開けると、怖い顔をした五条悟と、その手に抱き抱えられた血だらけの白夜がいた



家「…っ!五条…、何があった…」

五「…白夜を……白夜を、助けてくれ……頼む、硝子…」

家「…わかった。すぐに治療を始める。五条、早まるなよ」

五「…何が」

家「…おまえ、今にも人を殺しそうな顔してる。白夜をやった犯人を殺すつもりか?」

五「…だったら?」

家「…やめとけ。そいつがただの人間だったら、おまえ呪詛師になるぞ」

五「僕が呪詛師になろうとどうだっていい…」

家「バカか!おまえが傷つこうがどうだっていい。けど五条が呪詛師になったら、傷つくのは白夜だ。自分のせいでおまえが呪詛師になったんだって一生傷つくんだよ!」

五「…っ!」

家「白夜は私が必ず助ける。だから五条、お前は少し頭を冷やせ」


五「……分かった。白夜を、頼む…」



白夜を家入に引き渡し、悟は待合室のソファに座り込んだ



五(…白夜が、傷つく。そんなこと分かってる…分かってるのに僕は何をしようとしてた…?硝子がいてくれて、良かった…)





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家入のおかげで冷静になった五条は、補助監督や空いている呪術師に、白夜が倒れていた付近の防犯カメラを探すように連絡していた

仕事上、呪術師に理解のある知り合いの警察にも連絡を取り、犯人を探すようにお願いをした



悠「…先生!!」

恵「五条先生…!白夜は!?」

野「生きてんだよね!?」



白夜のことを聞きつけた一年生三人が息を切らしながらやってきた




五「…今、硝子に治療してもらってる」


恵「…今日、デートだったんですよね?五条先生、白夜と一緒にいたんじゃないんですか。なんで白夜だけこんな目に合ってんですか…!あんた何してたんですか…!」

悠「伏黒…!やめろって!五条先生が悪いわけじゃねぇだろ!」

野「伏黒…」

恵「分かってる…!分かってるけど…!!」



五「………怒られて当然だよ。白夜から目を離したのは事実。僕が悪い」


悠「先生…。先生は悪くねぇよ。白夜先輩を傷付けたやつが悪いんだ!」

野「あーもう!ここで言い合ってても仕方ないでしょ。とにかく今は、白夜先輩が助かるように祈るしかないわ」





どれぐらい時間が経ったのか分からなくなっていた頃
扉が開き、家入が出てきた



家「…なんとか、命はとりとめた。急所を刺されていて少しでも治療が遅れていたら危ないところだった。普通に救急車で運ばれていたら間に合わなかったな。五条、おまえが一瞬でここまで運んできたからこそ、助かったんだ」


五「……!」



悠「…良かったぁ……」

恵「はぁ……」

野「…先輩…ほんとに、良かった…」





五「…硝子、ありがとう」

家「どういたしまして」




その後、一年生は犯人探しをすると言って出ていき、家入は引き続き白夜を診るため診察室へ戻った



一人になった五条は、壁に寄りかかり、力が抜けたように座り込む



五「……良かった…助かって、良かった……」


ホッとして気が抜けたのか、勝手に目から涙が溢れ、頬に伝っていた


五「…はは……。白夜が死ぬかもしれないって思ったら、怖くて怖くて堪らなかった……こんな感情、初めてかもしれない。自分が死にそうだった時はこんな感情無かったのにな…」


自分が思っている以上に白夜が大切で、大好きな存在なんだと、実感した五条だった













五(…白夜を刺したやつを僕は許さない…。殺さなきゃいいんだろ?これは、僕の復讐だ)
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