Live the life you love
日が落ちた頃、母さんから醤油切らしたから買ってきて♪と言われ、オレはおつかいに出ていた
「はぁ…お腹空いた」
だが、醤油を買わないと料理も完成しない
早く買おう…
その時、目の前から歩いてくる、金髪の少年が見えた
あいつ、この間キヨマサにやられたって言ってたやつだよね
「…ん?」
様子がおかしい
よく見れば、身体中傷だらけだった
「どうしたの、その怪我」
タ「え…、あ、あなたは…」
「…よく怪我するね、君は。ほら、とりあえずベンチ座って。手当てするから」
タ「…はい」
この前より元気ないな…
「よし、これで大丈夫かな。ところで、何があったか話してくれる?」
タ「…オレはキヨマサくんの、奴隷なんです」
「…は?」
タ「…少し前、喧嘩賭博に参加させられてボコられて…最終的にバットで何度も殴られて…オレ、このまま死ぬかもって…」
「………」
タ「…あ、あの?」
「あぁ、ごめんね。話してくれてありがとう。そういや君の名前、聞いてなかったね」
タ「あ、オレ、花垣武道って言います」
「よし。じゃあタケミチ、今度また喧嘩賭博があると分かったら、ここに電話して」
メモ用紙に番号をさっと書いて、タケミチに渡した
タ「え?あの…」
「いい?日時と場所。絶対連絡すること!絶対だよ」
タ「は、はい!」
「うん。それじゃ、気を付けて帰るんだよ。またね」
タ「あ、ありがとうございました」
タケミチと別れたオレは、怒りが沸き上がっていた
「…まさか、喧嘩賭博までしてるなんて。しかも、奴隷?バットで無抵抗なやつを殴る?ありえない。クズにも程がある。出来ることならオレ直々にしめてやりたいけど、マイキーが怒るし…」
ここはやはりドラケンとマイキーにしめてもらうしかない
「あれ…?そういやオレ、タケミチに名前言ってなかったな…」
ま、いっか
オレの名前なんて教えたところで、何が変わるわけでもない
「はー、お腹空いた…早く醤油買わなきゃ」
翌日のことだった
タ『あ、あの!花垣武道です…!』
「あぁ、昨日の。怪我は大丈夫?」
タケミチから連絡があったのだ
タ『はい…!手当てしてくれて、ありがとうございました』
「いえいえ。それで、分かったの?例の喧嘩賭博」
タ『はい…今日の放課後、またやるそうです…』
時間と場所を教えてもらい、オレはすぐにドラケンに連絡した
「…ドラケン、今日空いてる?」
ド『あぁ、空いてるけど』
「前に話したキヨマサってやつのことだけど、喧嘩賭博とかしてるらしくて。今日の放課後もやるって情報掴んだから、様子見てきてほしいんだけど、いい?」
ド『分かった。喧嘩賭博って、東卍の名を汚す気かよ…ありえねぇ』
「…うん。オレも許せない。だから頼んだよ、ドラケン。そうだ、マイキーは?」
ド『あぁ、ここにいる。ちょっと待ってろ。おい、マイキー!今日暇かぁ?』
ドラケンがマイキーに聞いてくれてるらしい
ド『白夜、マイキーも一緒に行くっつってるから、オレらで行ってくるわ』
「そっか、ありがとう。頼むね」
そして、その日の放課後
オレは気になって喧嘩賭博がある広場へ様子を見に行った
タ「ちょっと待ったー!!!!」
ん?
今のって、タケミチの声だよね
そっと覗いてみると、どうやら喧嘩が始まった瞬間タケミチが叫んだようだ
タ「いやぁ、毎回毎回似たような試合じゃつまんなくないすか?もっとおもしれーもん見たいっしょ。た、例えばさ。キング対奴隷」
タケミチ…おまえまさか…
タ「キヨマサ先輩。タイマン買ってくれよ」
「へぇ…仲間思いじゃん。そういうの、嫌いじゃない」
そして二人のタイマンが始まったが、それはキヨマサによる一方的なものでしかなく
けど、タケミチはいくらやられても倒れず諦めなかった
必死にキヨマサに食らいつくその姿勢に、周りも騒然とし始めた
タ「まだまだ…、こんなんじゃオレの12年、へたれた心は…直らねぇんだよ!」
タケミチ…?
それ、どういう意味だ?
タ「逃げて…逃げて…逃げて逃げて」
あ「もう引けよタケミチ!!十分気合い見せたよー!!」
タ「引けねぇんだよ!!!引けねぇ理由が、あるんだよ!!」
「…っ!」
なんだ、この強い意志は…
タ「東京卍會、キヨマサ。勝つにはオレを殺すしかねぇぞ。ぜってー負けねぇ!」
タケミチ…おまえはすごいやつだよ
キ「バット持ってこい!!上等だ!!殺してやるよ」
「…は?」
バット?
何言ってんだこいつ
これはタイマンだ
拳と拳で成立する戦いだ
なのにバットは完璧なルール違反
周りのギャラリーも、さすがに引いていた
キ「早くしろコラァ!!」
「…もう、我慢できない」
オレが足を進めようとした時
ド「おいキヨマサァ」
キ「あぁ!?あ…っ」
ド「客が引いてんぞー」
「…はぁ。間に合ったか…」
そこには、東京卍會、副総長の龍宮寺堅。通称ドラケン
そして…
ド「むきになってんじゃねぇよ。主催がよぉ」
マ「ねぇねぇケンチン」
ド「あ?こういうとこで、そのあだ名呼ぶんじゃねぇよ」
マ「どら焼き無くなっちゃった」
相変わらずだなぁ、マイキーは
その瞬間、全員が頭を下げた
『お疲れ様です!!総長!!!!』
総長と呼ばれたのが、東京卍會、総長の佐野万次郎
通称マイキー
赤「佐野くん!オレ、三番隊の特攻やってます、赤石っす!」
赤石とかいうやつが声をかけたが、マイキーは無視して通りすぎた
ド「邪魔。マイキーは興味ねぇやつとはしゃべんねぇんだよ」
赤「すいません…」
キ「お疲れ様です。あっ…!?」
すぐそばにきたマイキーに挨拶したキヨマサだが、すぐにドラケンに蹴りを入れられた
ド「キヨマサァ。いつからそんなに偉くなったんだ?総長に挨拶する時はその角度な」
キ「は、はい…」
そして、キヨマサも眼中になく歩き続けたマイキーはタケミチの前へ
マ「おまえ、名前は?」
タ「は、花垣武道…」
マ「そっか。タケミっち…」
タ「は…?タケミっち?」
ド「マイキーがそう言うんだからそうだろ?タケミっち」
タ「へ?」
すると、倒れこんでいたタケミチの頭を手に添え、顔を近づけたマイキーは
マ「おまえ、ホントに中学生?」
タ「…っ!!」
マ「タケミっち、今日からオレのダチ。な!」
タ「へっ…!?」
…マイキーらしいというか、なんというか…
そして、マイキーはキヨマサへ向かう
マ「おまえがこれの主催?」
キ「は、はい」
マ「ふっ」
マイキーは笑ったかと思えば、キヨマサに蹴りを入れた
マイキーの蹴りは、そんじょそこらの蹴りとは全く違う
一発入れられれば立ち上がることさえ不可能なくらい、強い蹴りだ
マ「誰だおまえ」
マイキーはキヨマサの頭を掴み、何度も殴っていた
マ「さて。帰ろっか、ケンチン。喧嘩賭博とかくだらね。ハクが機嫌悪くなんのも分かるわ」
ド「東卍の名前を落とすような真似すんなよ」
マ「タケミっち」
タ「あっ」
マ「またね」
ド「てめぇらボーッとしてないで解散しろー」
マイキーとドラケンはそう言って帰っていった
「マイキー、ドラケン」
オレは二人のところへ
マ「あ、ハク!いたなら声かけてくれればいいじゃん!」
ド「よぉ。来てたのか」
「今声かけたんだからいいでしょ?それより、来てくれてありがとね。おかげでスッキリしたよ」
マ「ハクの頼みなら行くに決まってんでしょ?それに東卍の名を汚す真似はオレも許せねぇし」
「そっか。ドラケンもありがと」
ド「別にこれくらいなんてことねぇよ」
「ふふ。そうだマイキー。これ、お礼にあげる」
渡したのはどら焼きとたい焼きのダブルコンボ
マ「え、マジ!!?すげー嬉しい!!ありがとな、ハク!」
「どういたしまして!」
(あ、そうだ被り物の話だけど!)
マ(あー、そうそう。三ツ谷からもらったろ?あれ被ってなら集会出ていいよ)
ド(…。白夜が不憫で可哀想にしか思えねぇな)
(そ、それでもオレは幻扱いされたくない…!)