第18話
「悟ー、先にお風呂入るねー」
五「どうぞ~」
白夜がお風呂へ向かったのを確認した悟は、白夜がいつも身に付けているボディバッグを持ち、中に入っている呪霊の名前が書かれた紙を取り出した
五「モグラ、紅。出てこられるか?」
二枚の紙に話しかけると、すぐに中から2体の特級呪霊が姿を現した
モ「…何だ?」
五「へぇ~、すごいね。自分たちの意志で出られるんだ」
紅「白夜は決して俺たちを縛り付けることはしない。俺たちの意志で、この紙の中に入ってるんだよ」
五「なるほどね。あ、そうそう。白夜がお風呂から出てくる前に君たち二人に話をしなくちゃいけないんだった」
これは、白夜に聞かれたくない話だ
五「実はお願い事があるんだけど、その前に確認したいことがある」
モ「なんだ?」
五「君たちって、白夜の命令に抗うことはできる?」
それを聞いたモグラと紅は目を細めた
まるで、何を言ってるんだこいつ。みたいな目
五「白夜はさ、君たち呪霊のことを友達だーって言ってるけど、実際主従関係あるでしょ?言い方悪いけど白夜が半無理矢理に友達にしてるんだから」
モ「俺たちに主従関係はない」
モグラはきっぱり言い張った
五「は?いやいやそんなわけないでしょー。君たち呪霊なんだから従わされでもしないと一緒にいないでしょ普通」
紅「そもそも、お前は最初から間違った解釈をしてる」
五「何が違うの?」
モ「白夜の呪術は、『呪霊と友達になれる』。ではない」
それを聞いた五条は、首をかしげる
五「いや、余計意味分からないんだけど。え、そこから違うの?じゃあ白夜が僕に嘘を言ってるってこと?」
紅「いや、恐らく白夜自身も勘違いしている」
五「……じゃあ、白夜の本当の能力って」
モ「白夜の能力は、『階級関係なく呪霊と話せる』。ただそれだけだ」
五「……はぁ!?それだけって……いやいや、それはないでしょ。じゃあ君たちはどうして白夜と一緒にいるんだよ。それに、白夜は『頭を撫でると友達になれる』って言ってたけど」
モ「頭を撫でることにより呪術が発動して会話できるようになるんだ」
紅「一緒にいる理由?一緒にいると楽しいから」
五「…それ、まじで言ってる?呪霊が自分の意志で人間と一緒にいるとか聞いたことないんだけど」
さすがの五条も、信じられないという表情を浮かべた
モ「お前たちだって、一緒にいて楽しいやつと一緒にいるだろ。それと同じだ。それが人間か呪霊かの違いだよ」
紅「白夜はさ、ほんとに優しい人なんだ。俺たちだって、最初は敵対心丸出しだった。けど白夜と話をしたら、あぁ、こいつは他の人間とは違うんだって思った。いわば、呪いとは関係ない、白夜の人間性に俺たちは惹かれたんだ」
五「…なるほどね。白夜が他の人間とは違うっていうのは分かるよ。あの子は本当に優しい子だ」
モ「それで?俺たちにお願いしたいことってなんだ」
あぁ、そうだね。と悟は二人に向き合う
五「今の話を聞いて安心したよ。君たちになら、任せられるって」
モ「任せられる?」
紅「どういうことだ?」
五「もしもこの先、僕の身に何かあった時にさ。きっと白夜は、僕無しじゃ生きられないって言って、暴走して敵に領域展開する。…それを、全力で止めてほしい」
モ「……」
紅「……」
五「暴走したまま領域展開しちゃったら、白夜は恐らく力を制御できず命を落とす。僕がいなかったら余計自分の命なんてどうでもよくなって暴走する。だから、そうなる前に止めてほしい。白夜を止められるのは、特級呪霊である君たちだけだ。頼めるか?」
黙って聞いていたモグラと紅は、お互い目を合わせた
モ「…わかった。白夜が死ぬのは嫌だからな。けど、お前最強なんだろ?自分の身に何かあったらって、そんなことあるのか?」
五「確かに僕は最強だけどさ、僕だって人間だよ?この先何があるか分からないからね。念には念をってわけ」
モ「…そうか」
五「そ!じゃあそういうわけで、白夜のこと、よろしく頼むね。もう戻っていいよ。そろそろ白夜もお風呂から戻る頃だし」
モグラと紅は、自身の名前が書かれた紙へ戻った
そして、何事もなかったかのように、白夜のバッグに紙を戻す五条
五(でもまさか、白夜の能力がそういうことだったとはね…。僕の六眼でも分からなかったな…。白夜自身が間違えてるくらいだから、仕方ないんだろうけど)
「悟ー、お風呂上がったよー」
五「ああ、うん。じゃあ入ってくるね」
五(本当の能力については、まぁ別に白夜に言う必要はない気がするし、いっか)