第10話
五「はい、あーん」
「あーん。モグモグ…。美味しい…!こんな美味しいの初めて食べた!」
五「そりゃ僕特製のオムライスだからね」
「いつもパンの耳とか小さいお魚とかばっかりだから、こんな豪華なご飯初めてなんだ!」
五「え……」
いま、なんて言った…?
パンの耳とか小さいお魚…?
五「…白夜、おまえそんな辛い目に合って、よくこんないい子に育ったな…」
「…辛かったよ。毎日泣いてた」
五「…そうだよね」
あー、あの施設の職員つってた男、今すぐにでもどうにかしてやりたい
イラついて仕方ないわ
「でも今はすごく幸せだよ!さとるくん、ボクに痛いことしないし、ご飯も美味しいもの食べさせてくれるし、それに」
五「それに…?」
「…ぎゅってしてくれたから。さとるくんは、すごく優しいひとなんだって、すぐ分かったよ」
五「白夜っ…!!」
思わず抱き締めてしまった
なんなの、この可愛い生き物は!!
「…ふふ。さとるくんにぎゅってされると安心する」
五「…白夜。これからもずっと、僕が君を守るから。もう、辛くて泣いたりしなくていいから」
「…ずっと、一緒にいていいの…?」
五「当たり前でしょ?」
「…ありがとう、さとるくん!」
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五「硝子。白夜めっちゃいい子だわ」
家「急だな。それは前から知ってるわ」
五「そっか。そうだな。そうだったわ」
確かに白夜は今も昔もいい子だった
普段あまりワガママを言わない子だなと思ってはいたが、言わないんじゃなくて、僕との生活自体が白夜にとっては贅沢なことだと思っているのかもしれない
珍しくワガママを言ったかと思えば寮に入りたいだったし
パンの耳や小魚など、かなり質素なものしか与えられてこなかったから、普通のご飯も白夜にとっては贅沢な食べ物だったに違いない
五「…ねぇ硝子。例の施設。ぶっ壊したら怒られると思う?」
家「まぁ怒られるだろうな、形上は。だが、あの施設は黒い噂が多い。たくさんの子供を引き取っては、劣悪な環境で、子供を使って変な実験もしていたらしい。実際白夜はその施設で酷いことをされていたわけだ。白夜大好きな学長のことだから内心ぶっ壊してやりたいと思ってるだろうな」
五「…そうだね。問題は、白夜が何て言うかだけど」
家「…白夜は優しい子だからね。酷い目に合ってたとしても、大賛成する、とはいかないか」
五「そうなんだよね。だから今まであえて手を出さずに傍観してたんだけど。今の白夜見てたら我慢できなくなりそうで」
家「それは…私も同意見だ」
五「…ま、白夜が元の身体に戻ってから、どうするか白夜に相談してみるわ」
家「それがいい。知らない間に施設が壊されてたら、さすがの白夜も怒るだろ」
五「だよね」
家「五条、これから任務じゃないの?」
五「うん。もう行くよ」
家「白夜は?」
五「一年ズに預けた。悠仁たちなら大丈夫でしょ」
家「そうか」
その頃…
悠「俺のことは悠仁って呼んでいいからな、先輩!」
「ゆーじ?」
悠「そうそう!で、伏黒は何て呼ばれたい?」
恵「別に何でも…」
「…しゅん」
白夜があらかさまに落ち込んだ
野「こら伏黒!そんな適当なこと言うから、白夜先輩落ち込んじゃったじゃない!」
恵「え、俺のせい!?えっとじゃあ……、いつも通り恵で」
「めぐみ…!」
野「よーし、私は野薔薇でいいわよ!」
「のばらちゃん!」
野「ちゃん付けも可愛い…!」
わりとすぐになついた
悠「あ、白夜先輩、指輪が宝石のと一緒にネックレスになってる!」
恵「ほんとだ」
野「今のままじゃ手が小さくてピッタリ入らないのね」
「これ、さとるくんがね。大事なものだから肌身離さず持ってなさいって」
恵「あの人が言いそうなことだな」
「これ、知らない間に指にあったんだけど、知ってる?」
恵「それは…、いや、今はまだ知らなくていい。いつか分かる時がくる」
「…そうなの?」
恵「あぁ」
「分かった!じゃあそれまで待ってる!」
野(…さすがに言えないわよね)
悠(確かに…まだ白夜先輩子供だしな。五条せんせーの恋人とか言われてもね…)
恵(無垢な白夜のままでいさせてやるのが優しさだ)