第0話
悟との生活は、とても楽しいものだった
今までのが最悪だっただけかもしれないけど
塞ぎ込んでいたオレを悟はいつも優しく包み込んでくれて
いつの間にかオレは本来の明るさを取り戻していた
五「ただいまー」
「おかえり、悟!これ、見てみて!」
五「ん?どうしたのかな?」
「この紙にね、モグラくんを出し入れ出来るようになったんだ!」
五「え?」
「ずっと考えてたんだ。モグラくんをどこかにしまえたら、いつでもどこにでも連れていけるのにって。それでね?悟に教えてもらった術式で、この紙に呪力を込めてみたらできたの!」
五「………」
五条悟はこの瞬間こう思っていた
え?この歳でもうそんなことできるようになったの?うちの子天才では?術式って言っても基本的なことしか教えてないよ?将来有望すぎるわ。そしてなに、この輝かしい笑顔。可愛すぎでは?ほんとうちの子天才。
「…悟?」
五「え?あ、ごめんごめん。目の前に可愛い生き物がいたから」
「…?」
五「それにしてもすごいね、白夜。呪霊と仲良くなれるのは白夜の能力だろうけど、これなら呪霊操術で戦いにも応用できそう」
「…オレ、モグラくんを操りたくない」
五「…白夜」
「操るんじゃなくて、モグラくんの意志を尊重して一緒に戦いたい!」
五「…!そっか。白夜がそうしたいなら、それでいいんじゃない?」
「うん!」
五(やっぱりうちの子天才…)
呪霊と友達になるには、頭を撫でることが条件だと気付いた白夜は、それからというもの、気に入った呪霊と友達になり、呪力を込めた紙に出し入れするようになった
そして気付いたことがもうひとつ
呪霊を育てれば育てるほど強くなり、下級だったモグラくんも今や二級ほどの呪霊となり、身体もかなり大きくなっていた
白夜が中学生になった頃、モグラは1級呪霊となり、かなり戦力向上した
しかもモグラは喋れるようになった
「悟、お弁当忘れてるよ」
五「あ、ほんとだ。いつもありがとね、白夜」
よしよし、と頭を撫でられる
「………」
五「あれ?どうかした?」
「ううん、何でも。今日は放課後、恵と約束してるから遅くなるかも。悟よりは早く帰ってくると思うけど」
五「はーい。恵によろしく言っといてね」
「はいはい。早く行かないと遅刻しちゃうよ?」
五「いいのいいのー。白夜も気をつけてね」
「うん。」
悟は手を振りながら出ていった
恵とは、前に悟に紹介されて仲良くなった
オレより年下だけど、とても大人っぽくてなんか落ち着くっていうか
「…それにしても、頭撫でられるだけでこんなドキドキするなんて…」
小学生の時は何ともなかったというのに
身体が成長していくにつれ、なんかおかしい…
「…これって、あれだよね……」
俗に言う、『恋』というもの。
「オレが…!?悟に…!?いやいや、確かに助けてくれて感謝してるけど…!オレは男で悟も男だし!でも…」
この気持ちに嘘はつけない
オレは五条悟が好きなんだ
「…でも、絶対に言えない。好きだなんて言って、今のこの関係がおかしくなってしまったら…そんなの嫌だ」
その時、ガチャっと音がして…
五「あ、そうだ。すっかり聞くの忘れてたんだけどさー」
「…っ!!!?」
心臓が飛び出るかと思った
さっきの独り言聞かれてないよね!!?
「な、なに?」
五「白夜、五条家の…僕の戸籍に入るつもり、ある?」
「え?戸籍って…」
五「いやさ…一応僕が引き取ったから、五条白夜って名乗ってるけど、正式には入ってないでしょ?だから白夜がどうしたいか聞こうと思って」
「でも、五条家って御三家の一つで由緒正しい家柄なんでしょ…?オレみたいなどこの馬の骨とも分からない人間が入るなんて許されないんじゃ」
五「それは大丈夫。僕が許すから」
「………」
それで通用してしまうのがこの五条悟という男なのだと小さいながらに知った覚えがある
「…ほんとに大丈夫?」
五「大丈夫大丈夫!だって僕、最強だから」
なるほど
だから悟には逆らえないわけね
「…許してくれるなら、お願いします」
五「分かったよ、白夜。正式に白夜を養子として迎えるね」
「ありがとう、悟」
五「あ、それと!」
思い出したかのように言う悟
「?」
五「僕も白夜のこと、好きだよ」
(え?)
五(え?)
(…ちょっと待って、やっぱり聞いてたの!?)
五(聞いてたっていうか、聞こえた?)
(ううっ、はずかしぬ!!!)
五(えー?僕は嬉しかったけどなー)
(っていうか遅刻するから早く行けっ…!!)
五(はーい)