第9話
オレは今、夕飯の買い出しに来ていた
時間が合う時は悟と一緒に来たりするんだけど、残念ながら今日は悟が任務で不在なので、オレ一人
「今日はハンバーグにしよう。お肉買わなきゃなぁ」
献立を決めて歩いている時だった
?「やぁ、久しぶりだね。白夜」
突然声をかけられ、オレは思考が止まった
「えっ?」
声をかけてきた本人と目があった
えっと…この人は……
?「あれ?忘れちゃったかな?昔君と会ってるはずなんだけど」
「…!!もしかして…、傑さん!?」
夏「そうだよ。良かった、思い出してくれて」
「いや、なんというか…あの時と雰囲気が変わってて、一瞬分からなくて。ごめんなさい」
夏「いいんだよ。白夜と初めて会った日から、ずいぶん時間が経ってしまったからね」
…でも、なんだろう
昔に会った傑さんと、何か違う気がしてしまう
どうみても傑さんなのに、どうしてこんな違和感を感じてしまうんだろうか
「…あの、傑さん。オレ、実は…」
夏「あぁ、分かってるよ。その制服を見ればね」
「…傑さんも、高専に通ってたんですね。あの時はオレ子供だったからよく分かんなかったけど、今思えば同じ制服だし」
夏「…そうだね。白夜、こんなところで立ち話もなんだから、喫茶店にでも入らないかい?」
「はい…!」
傑さん。
もとい、夏油傑とはオレがまだ悟と出会っていない頃に知り合った
オレが通っていた学校で呪霊が暴れだし、それを一人で祓いに来てくれたのが傑さんだった
呪霊が見えていたオレは、傑さんに話しかけられ、協力しているうちに傑さんと打ち解けていった
あの時の傑さんはカッコよくて、優しくて、強かった
なんていうか、とにかく爽やかで頼りになるカッコいいお兄さんだとオレは子供ながらに思っていた
もちろん今もその気持ちは変わらないのだが、今の傑さんは笑っているけど目が笑っていないとでも言おうか
そんな感じの違和感
傑さんであって、傑さんではないような
とりあえずオレと傑さんは近くの喫茶店へ
「…傑さんは、今も呪術師をしてるんですか?」
夏「いや、今は違うことをしてるんだ。色々あってね。高専も途中で辞めちゃって」
「え?そうなんですか?」
夏「うん。だから私に会ったことは、誰にも言わないでほしい。高専の皆とは気まずいんだ」
「…なるほど。分かりました」
夏「白夜は施設から出たのかい?」
「はい。オレを救ってくれた人がいて。今もその人と一緒にいます」
夏「そうか、それなら良かった。ずっと心配していたんだ。君の辛さを知っていたのに、私にはどうすることもできなかったからね」
「いいんです。今は幸せなので」
夏「そうか。呪術師は辛いこともたくさんあるだろうけど、頑張ってね。それじゃ、私はこれで」
「え、もう行くんですか?」
夏「あぁ。このあと用事があるんだ。ごめんね」
「いえ…。傑さん、また…!」
夏「うん、またね」
傑さんはお金だけ置いて、去っていった
「……傑さん、呪術師辞めちゃってたんだ。高専で何があったのかな」
そこで何かがあって、傑さんは少し変わってしまったということなのか
「…なんとなく悟に聞くのは抵抗あるし。硝子さんは何か知ってるかな」
悟はあまり過去の話をしようとしない
だから無理には聞けないんだよね
「傑さんに会ったことはもちろん言わないけど。過去に傑さんに何があったのかは気になる…」
あんなに強かった傑さんが呪術師を辞めてしまうほどの何かってなんだろう
(そういえば、頭に縫い目みたいな模様?があったな…。昔はそんなの無かったのに)