第5話
「うーん。三級はけっこう祓ったけど、二級いないなぁ」
しばらく呪霊狩りをしていた白夜だが、なかなか二級に出会えない
「それにしても、みんな元気だなー。色んなところで呪力がぶつかり合ってるのを感じる。オレも誰かと戦いたいけど戦いの邪魔するのも野暮だし…オレは呪霊と戯れるくらいで丁度いいんだきっと」
うんうん、と独り言をぶつぶつ言っていた時
「…?」
今までの呪霊の気配とは違う
気配の感じるところへ行くと、そこにはやけにおとなしい呪霊がいる
「…これ、二級じゃない。準一級呪霊だ」
…これも楽巌寺学長が仕組んだっぽいな
少しでも悠仁を殺す確率を上げたってところか
「どんだけ悠仁を殺したいの、あのおじいちゃん。ほんと好きになれないな…」
悟がすぐ喧嘩売る気持ちが分かったよ…
「やけに、おとなしいな…」
まるで、まだ動くな。と躾られているかのような
棘「すじこ!」
「あれ、棘!なんか久しぶりだね」
棘「しゃけ」
元気そうでなにより
「聞いてよ棘ー。二級じゃなくて準一級呪霊が……」
その時、まがまがしい呪力の気配
棘「こんぶ…」
「………」
二人は警戒しながら構える
突然、準一級呪霊が一瞬にしてやられた
棘「!!」
「…棘、逃げろ」
姿を現したのは、以前悟を襲ってきた特級呪霊の仲間と思われる特級呪霊だった
「…やぁ、オレのこと、覚えてるかな」
《覚えています》
「え、何…。何言ってるか分からないのに頭では理解できる」
そして呪霊は攻撃を始めた
「棘、オレが抑えるからその間に逃げろ!」
棘「おかか…!!」
「大丈夫。オレはやられたりしないよ」
棘「……しゃけ!」
棘は頷いて、逃げ始める
「よし。そんじゃいっちょやりますか!モグラくん!紅!」
バッグから紙を取り出し、名前を呼べばそこから呪霊が出てくる
モ『白夜は俺が守る』
紅『白夜、俺たちに任せろ』
「心強いなぁ。頼むよ、二人とも」
モグラは近距離から、紅は鳥なので遠くから攻撃する
その間にオレがタイミングを計って攻撃を仕掛けていく
「攻撃してもどんどん根っこが伸びてくる。やっかいだな」
しかもこの森の中じゃ動きづらい
…仕方ない
あれをやるか
「悟が出張行ってる間、ずっと訓練してきたんだ。今なら、できる気がする」
よし
集中だ
「モグラくん、紅!離れて!」
モグラと紅は言うとおりに離れる
「…術式反転 『赫』」
『赫』が呪霊へと放たれる
「悟よりは威力ないけど、隙を作るくらいならできるでしょ」
今のうちに広い場所へ…!
「モグラくんと紅は紙に戻って!」
紙に戻し、オレは移動する
「あ、棘!」
棘「明太子!!」
「うん、オレは大丈夫!」
オレと棘はひらけた大きな建物まで来ていた
だがすぐそこに呪霊が迫ってきている
さすがにオレの赫じゃ、少ししか押さえ込めないか
屋根を走っていると、建物の下に人影が見えた
恵「!!白夜に狗巻先輩!?」
あ、恵と加茂君だったのか
棘が口元を出す
棘『逃げろ』
恵と加茂君に迫る呪霊の攻撃に、二人は間一髪避けた
「ん?」
急に空が暗くなってきたと思ったら…
「帳…?いったい誰が…」
まぁ、この呪霊がいるってことは、外部の呪詛師だろうけど
加「何故高専に呪霊がいる。帳も誰のものだ?」
恵「多分その呪霊と組んでる呪詛師のです」
棘「ゲホッ」
加「何か知っているのか?」
「あの呪霊は、前に悟を襲った特級呪霊だよ。オレもその場にいたから分かる」
棘「ツナマヨ」
恵「そうですね。五条先生に連絡しましょう」
「それが早いかぁ。オレがやると時間かかっちゃいそうだし」
加「ちょっ…と待て。君たちは彼が何を言っているのか分かるのか?」
恵「今そんなことどうでもいいでしょ。相手は領域を使うかもしれません。距離をとって五条先生の所まで後退……」
「恵!」
かなりの速さでオレたちの後ろまで移動した呪霊
そして、恵の携帯を瞬時に壊した
棘『動くな』
棘の呪言で動きが止まる
加『赤血操術 苅祓!!(かりばらい)』
顔に直撃したが、すぐに回復
「モグラくん!」
モ『了解だ』
モグラが打撃を食らわせる
攻撃は当たっているが、それもすぐ回復してしまう
「チッ…モグラ一人じゃさすがに無理か。でも…」
ここで力を使って友達の呪霊をたくさん出して暴れれば、ここにいる恵たちまで巻き込んでしまう
それはダメだ
そこから恵の式神の鵺が空から攻撃
そして恵は隙をついて刀で攻撃した
「…効いてない、みたいだね」
ていうか恵、その刀どこから出したんだろ
《やめなさい。愚かな児等よ。私はただ、この星を守りたいだけだ》
加「呪いの戯言だ。耳を貸すな」
恵「低級呪霊のソレとはレベルが違いますよ」
《森も海も空ももう我慢ならぬと泣いています。これ以上人間との共存は不可能です。星に優しい人間がいることは彼らも知っています。しかしその慈愛がどれだけ足しになろうか。彼らは時間を欲している。時間さえあれば星はまた青く輝く》
恵「独自の言語体系を確立してるんです」
加「……狗巻を下がらせろ」
《人間のいない時間。死して賢者となりなさい》
(…悟なら、こういう時でも笑って大丈夫って言うんだろうな)