第壱話
「この辺来るの久しぶりだなぁ!全然変わってない」
修行した日々が思い出される
あの頃は辛かったなぁ
先生の修行めちゃくちゃ厳しかったし
まぁオレのためにしてくれたことだって理解していたし、それが先生の優しさだった
「あ、先生の家!」
うん、やっぱり変わってないな
家に近づくと
「…!」
鱗滝「…久しぶりだな、白夜」
先生が出てきた
「…さすが先生ですね。匂いでオレが来ると分かったんですか?」
鱗滝「あぁ」
先生といい炭治郎といい、鼻が利く人と縁があるなオレ
「先生、義勇からの手紙は読まれましたか?」
鱗滝「今しがた読み終えた」
「なら話が早いですね。その件、お引き受けいただけますか?」
鱗滝「義勇とお前からの頼みだ。断る理由もないだろう」
「ありがとうございます。鬼である妹のことも、巻き込んでしまうことになりますが、それでもいいんでしょうか」
鱗滝「承知の上だ。それに、弟子のお前たちが責任を取るというのだ。師範であるワシが責任を取らないわけにはいかない」
「先生…」
あぁ、やはり先生は優しい人だ
鱗滝「白夜、お前はこんなところに来ていて大丈夫なのか?」
「実は働きすぎと言われてしまって、しばらく休息せよと伝令がきたんです。ただ、目に見えるような深い傷もなく、普通に元気なのであの子の様子を見ていたいなと思って。先生にも会いたかったですし」
鱗滝「そうか。なら、次の任務が来るまで、ここでゆっくりするといい」
「ありがとうございます!では、お言葉に甘えて。ふふ、何だか昔を思い出しますね」
義勇と錆兎が来るまでは、こうして先生と二人で暮らしていた
鱗滝「そうだな。お前はいつもそうやって笑っていた」
「先生が幼いオレを引き取って、育ててくれたからですよ」
鱗滝「…そうか」
「先生、オレにできることがあれば何でも言ってください。修行でも、食料調達でも、何でもお手伝いします」
鱗滝「全く…まぁ、そうだな。お前がいれば修行も格段と質が上がるだろう。大黒柱と修行ができることなんて継子にでもならない限り、できないからな」
継子か…
オレの継子になりたいと言ってくれる隊士はたくさんいるけど
オレが継子にしたいと思う子はまだいない
鱗滝「…白夜、自分の容姿で辛くなったことはもうないか?」
「…!先生、オレはもう昔の弱いオレではありません。オレを襲おうとした輩がいても、もう負けません。心配してくれて、ありがとうございます」
自分で言うのもあれだが、客観的に見てもオレは容姿に恵まれている
そのためか、オレの身体目当ての輩を何度も見てきた
見た目が良ければ、あいつらはオレが男でもいいらしい
幼いころは抵抗も出来ず、されるがままになるしかなかったが、今は違う
オレには戦う力がある
そして、その力をくれたのは紛れもなく先生だ
鱗滝「そうか、ならいい」
(…本当に優しいな、先生は)