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第拾伍話


それからというもの、炭治郎はずっと義勇に話しかけ続けた

義勇困惑してるなぁってオレでも分かったけど、これは義勇のためだ

さすがに厠や風呂の時はそっとしておいてもいいかな…って思ったりもしたが…

これも義勇のためっ!


そんなこんなで4日目
炭治郎から逃げていた義勇が根負けし、橋の上で止まった



義「俺は最終選別を突破していない」

「……」

炭「えっ、最終選別って藤の山のですか?」

義「そうだ。あの年に俺は、俺と同じく鬼に身内を殺された少年…錆兎という宍色の髪の少年と共に選別を受けた」

炭「…!」


…そうだ
確か炭治郎は、錆兎に会ったんだよね


義「十三歳だった。同じ年で天涯孤独。すぐに仲良くなった。錆兎は正義感が強く心の優しい少年だった。あの年の選別で死んだのは錆兎1人だけだ。彼があの山の鬼を殆ど1人で倒してしまったんだ。錆兎以外の全員が選別に受かった。俺は最初に襲いかかってきた鬼に怪我を負わされて朦朧としていた。その時も錆兎が助けてくれた。錆兎は俺を別の少年に預けて助けを呼ぶ声の方へ行ってしまった。気がついた時には選別が終わっていた」



あの時のことは、今でも覚えている

錆兎以外の人が全員選別を通り、錆兎は死んでしまったと聞いた時、オレは義勇の気持ちを考えたら辛くて辛くて泣いてしまった

だから義勇の気持ちも、すごく分かるんだ



義「俺は確かに七日間生き延びて選別に受かったが…。一体の鬼も倒さず助けられただけの人間が果たして選別に通ったと言えるのだろうか。俺は水柱になっていい人間じゃない。そもそも柱たちと対等に肩を並べていい人間ですらない。俺は彼らとは違う。本来なら鬼殺隊に俺の居場所はない」



そして、またその辛い義勇の心が伝わってきて、また涙が溢れだした

炭治郎もまた、目に涙を浮かべていた



義「柱に稽古をつけてもらえ。それが一番いい。俺には痣も出ない。…錆兎なら出たかもしれないが。もう俺に構うな。時間の無駄だ」


そう言って義勇は歩きだす





「待って義勇…っ!確かに最終選別が終わった時はそんなふうに思っても仕方ないかもしれない。だけど、だからって今まで頑張ってきた義勇まで否定しないで!」


義「……!」


「柱はそう簡単になれるものじゃない。オレは知ってるよ。義勇が死に物狂いで訓練して鬼と戦って強くなったこと。新しい型まで作るぐらい、義勇はずっと頑張ってきたんだよっ!並大抵の努力じゃ、今の義勇にはなれないはずだ!」


義「…白夜」


「柱であるオレが言うんだから、間違いない。義勇は水柱にふさわしい人間だ…っ!!それだけの努力をしてきたんだよ!!義勇は、大切な人をもう二度と失いたくないっていう思いで、必死に努力して強くなったはずだ。なのに、こんなところで止まっちゃダメだよっ!」



そして炭治郎も言葉を紡いだ



炭「義勇さんは錆兎から託されたものを、繋いでいかないんですか?」


義「…!!(頬を張り飛ばされた衝撃と痛みが鮮やかに蘇る。何故忘れていた?錆兎のとあのやりとり。大事なことだろう。思い出したくなかった。涙が止まらなくなるから。思い出すと悲しすぎて何もできなくなったから。蔦子姉さん。錆兎。未熟でごめん…)」



なにやら炭治郎が考えている様子だけど…



そうしているうちに背を向けていた義勇がくるっとこちらに向いた



義「白夜、炭治郎。遅れてしまったが俺も稽古に」

炭「義勇さん、ざるそば早食い勝負しませんか?」

「え」

義(なんで?)




そのあと結局何故かざるそばを三人で食べた


義勇は前向きな気持ちになってくれたらしく、柱稽古に参加すると言ってくれたので、ホッとしている

数日後、炭治郎も無事全快し、柱稽古へ参加





「あー、暇だなぁ。まだ誰も来ないし。ね、義勇」

義「そうだな…」

「そうだ。ねぇ義勇、会わせたい人がいるんだけど、一緒に来てくれるかな?」

義「あぁ、構わない」

「ありがとう!」




そしてオレは、あるところへ義勇とともに来ていた



「しのぶ、いるー?」

し「白夜さん、どうぞ」


扉を開けると、そこにはしのぶ
そして…



珠「お久しぶりですね、白夜さん」

「珠世さん!」


そこには久しぶりの珠世さんがいた
しのぶから、珠世さんがしのぶと一緒に薬を作っていると聞いていたのだ



珠「その様子だと人間に戻れたのですね。良かったです」

「珠世さんのおかげです!ありがとうございました」

珠「いいえ。それよりその方は…」

「あ、えっと…紹介しますね。水柱の冨岡義勇。オレの…大事な人です。オレは義勇と一緒の時間を過ごしたくて人間に戻りたかったんです」

珠「そうでしたか」

義「…白夜を人間に戻す薬を作ってくれて助かった。礼を言う」

珠「いえ、白夜さんには血を分けていただいたので、そのお礼です。今も研究で役立ってますから」

「それなら良かったです。あの…愈史郎は…?」



すると珠世さんは、愈史郎のいる場所を教えてくれた






「愈史郎~…いる?」


部屋に入ると…



愈「…誰かと思えば白夜か。人間に戻れたんだな」

「愈史郎!うん、珠世さんのおかげで」

愈「当然だ」

「ふふ、相変わらずだなぁ。そうだ、あの時の約束を果たしに来たよ」

愈「なるほどそいつか」

義「冨岡義勇だ。白夜が世話になった」

愈「ふーん、お前が。実力はあるみたいだな。柱か?」

「すごい、よく分かったね。義勇は水柱だよ」


さすが愈史郎…!!


愈「ふん、それくらい分かる。おい冨岡、白夜はお前に心底惚れているそうだ。一生を添い遂げたいほどにな」

「なっ…!愈史郎…!!」


恥ずかしいんだけど…!!


すると義勇は顔色ひとつ変えずに言った


義「知っている。そして俺も同じ思いでいるから問題ない」


「…っ!!義勇…」


嬉しい……


愈「…そうか、なら貫き通せ」

義「もちろんだ」



…なんか、二人相性は良さげ?


愈「ほら、お前ら柱なんだろ。こんなところで油を売っている暇があるなら柱稽古とやらに精を出せ」


そう言って、追い出されてしまった





「…帰って二人で手合わせしよっか。柱は柱同士で稽古してるし」

義「…そうだな」










(あ…義勇から手を繋いでくれた…!今は皆柱稽古でいないから気にせず繋げる)
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