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第拾伍話


「…いたたた、これは厠に行くのも一苦労だね」

義「すまない…、加減ができなかった」

「いいよー、するの久しぶりだったもんね。それにしても、オレ鬼なのに何で痛みが治らないんだろ…」

義「…切り傷とかじゃないからか?」

「え、そういうこと?怪我した時は回復するけど、肩こり腰痛とかは違うの?複雑だなぁ」

義「…それとも、白夜だからか?白夜は他の鬼とは違うし」

「え、そういう違いはいらないんだけど」

義「ふ…確かにな」



あ…義勇が笑った
久しぶりに見たなぁ






「…よし。義勇、準備できたよ。薬、飲むね」

義「あぁ。何があってもそばにいる。安心して飲むといい」

「うん、ありがとう」


オレは薬を飲み、横になった





それからしばらく、白夜は意識がほとんどない状態で

身体が熱くて、息が苦しくて




そんな時、走馬灯のように人間のころの記憶が鮮明に浮かんでいた
そのほとんどが、義勇との記憶だった
オレ、ほんとに義勇のことが好きなんだなぁって改めて感じたんだ


あぁ…義勇が手を握ってくれている
なんとなくそんな気がした







義勇side


薬を飲み始めてから白夜は眠ったが、少ししてから『ううっ…』と唸りだした
汗が溢れ出し、俺は手拭いで額の汗を拭く

鬼から人間に戻るのは、やはり苦しみを伴うのか

少しでも安心できれば。
そう思い、白夜の手を握る



義「…白夜、」




そんな状態が1、2日続いた


だが、確実に変化していた

手を握っていた義勇はすぐに気付いた



義「あ…、鋭かった爪が」


鬼特有の鋭い爪が、人間の爪の形に戻っている


義「白夜…!白夜!」


必死に名前を呼んだ








白夜side



あれ…義勇の声がする

オレの名前を呼んでる…





ゆっくり目を開けると、目の前に義勇の顔が映った



「あ…義勇…」

義「白夜…っ、」



義勇が嬉しそうに涙ぐんでいる


「オレ…人間に、戻れた…?」

義「…あぁ、人間だ。白夜は人間だ。爪も元の長さに戻っている。それに、目にあった上弦零の文字も無くなっている」

「ほんと…?オレ、戻れたんだ…っ。ありがとう…義勇っ」



嬉しい…本当に嬉しい

これで義勇と同じ時間を過ごしていけるんだ



あまりの嬉しさに、義勇に抱き付いた
義勇もぎゅっと抱き締めてくれる



義「白夜、もうおまえは鬼じゃない。怪我をしても、鬼のようにすぐに回復はしない。だからそれだけは気を付けてくれ」

「うん…分かった、気を付ける」

義「あぁ…」




二人はしばらく、お互いに抱き締め合っていた






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それから。

お館様に人間に戻ったことを手紙で報告
心配してくれていたしのぶにも戻ったことを伝えた
本当に良かった。と泣いて喜んでくれた



そして、大きな出来事がもう1つ


刀鍛治の里に現れた上弦伍と肆が、炭治郎、不死川玄弥、無一郎、蜜璃によって討ち取られたことだ

しかも禰豆子が太陽を克服し、少しだが話せるようになっていた


オレは微力ながら、みんなの手当てをしていた


「大丈夫か?蜜璃。痛いとこはない?」

蜜「はい!もう大丈夫です!」

「そっか。美味しいものいっぱい食べて元気になってね」

蜜「ありがとうございます!白夜さんも人間に戻って良かった…!」

「ありがとう、蜜璃」



それから無一郎のところへ


「無一郎?」

無「あ、白夜さん」

「良かった。元気そうだね」

無「はい。おかげさまで。白夜さんこそ、人間に戻れて良かったです」

「ありがとう。無一郎…なんか雰囲気変わったね。目に光が灯ってるっていうか」

無「…炭治郎のおかげです」

「そっか。さすが炭治郎だなぁ」



なんにせよ、いい方向に向かってて良かった





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蜜璃と無一郎がほぼ全快したころ、産屋敷邸で緊急柱合会議が開かれていた


実「あーあァ、羨ましいことだぜぇ。なんで俺は上弦に遭遇しねぇのかねぇ」

小芭「こればかりはな。遭わない者はとんとない。甘露寺と時透、その後体の方はどうだ」

蜜「あっ、うん。ありがとう、随分よくなったよ」

無「僕も…。まだ本調子じゃないですけど…」

行冥「これ以上柱が欠ければ鬼殺隊が危うい…。死なずに上弦二体を倒したことは尊いことだ」

し「今回のお二人ですが…傷の治りが異常に早い。何があったんですか?」

義「その件も含めてお館様からお話があるだろう」

「そうだね、みんな久しぶりに会えてオレは嬉しいなぁ」

実「そうだ白夜。人間に戻れて良かったじゃねぇか」

小芭「確かに鬼から人間に戻れる事例は無かったからな。めでたいことだ」

「えへへ。ありがとう。やっとみんなの前に堂々と顔を出せるよ」


やっぱり人間っていいな


そんなことを話していると、襖が開き、お館様の奥さんであるあまねさんが現れた



あ「大変お待たせ致しました。本日の柱合会議、産屋敷輝哉の代理を産屋敷あまねが務めさせていただきます。そして当主の輝哉が病状の悪化により、今後皆様の前へ出ることが不可能となった旨、心よりお詫び申し上げます」


柱全員がバシッとあまね様へ頭を下げた


「…承知致しました。お館様が1日でも長く、その命の灯火燃やしてくださることを祈り申し上げます…。あまね様もお心強く持たれますよう…」


代表して大黒柱である白夜が言葉を返した


あ「柱の皆様には心より感謝申し上げます。すでにお聞き及びとは思いますが、以前鬼であった白夜様以外に、日の光を克服した鬼が現れた以上、鬼無辻無惨は目の色を変えてそれを狙ってくるでしょう。己も太陽を克服するために。大規模な総力戦が近づいています」


…そうだよね
オレはなぜか無惨のお気に入りだったみたいで、狙われたりはしなかったけど
オレは人間に戻っているから、無惨怒ってそうだし


あ「上弦の肆・伍との戦いで甘露寺様、時透様の御二人に独特な紋様の痣が発現したという報告が上がっております。御二人には痣の発現の条件を御教示願いたく存じます」



「「!?」」

蜜「痣?」



痣…



あ「戦国の時代、鬼無辻無惨をあと一歩という所まで追い詰めた始まりの呼吸の剣士たち。彼らは全員に鬼の紋様と似た痣が発現していたそうです」


それを聞いた柱は驚きを隠せない


あ「伝え聞くなどして、ご存じの方はご存じです」

実「俺は初耳です。何故伏せられていたのです?」

あ「痣が発現しないため、思いつめてしまう方が随分いらっしゃいました。それ故に痣については伝承が曖昧な部分が多いです。当時は重要視されていなかったせいかもしれませんし、鬼殺隊がこれまで何度も壊滅させられかけ、その過程で継承が途切れたからかもしれません」


…なるほど
鬼殺隊は何度も苦しい思いをしながら継承されていった集まりなんだな


あ「ただ一つ、はっきりと記し残されていた言葉があります。"痣の者が1人現れると共鳴するように周りの者たちにも痣が現れる"。今この世代で最初に痣が現れた方。柱の階級ではありませんでしたが、竈門炭治郎様。彼が最初の痣の者」


炭治郎…



あ「ですがご本人にもはっきりと痣の発現の方法が分からない様子でしたのでひとまず置いておきましたが、この度それに続いて柱の御二人が覚醒された。御教示願います。甘露寺様、時透様」



蜜「はっ、はい!あの時はですね、確かに凄く体が軽かったです、えーっと、えーっと。ぐあああ~ってきました!グッてしてぐぁーって。心臓とかがばくんばくんして耳もキーンてして、メキメキメキィって!!」



全「…………」



…全然分からん。





蜜「申し訳ありません、穴があったら入りたいです…」

「…蜜璃、よく頑張ったよ」

蜜「ううっ…白夜さん…」


よしよし。




無「痣というものに自覚はありませんでしたが、あの時の戦闘を思い返してみた時に、思い当たること、いつもと違うことがいくつかありました。その条件を満たせば恐らくみんな痣が浮き出す。今からその方法を御伝えします」













(…痣が出ると、格段に強くなれる。けど、なんの代償も無しに強くなれるわけがないよね…)
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