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第拾肆話


あれから、時間と場所を炭治郎から教えてもらい、オレはその場所へ向かうことにした


し「白夜さん。甘味補給は忘れないようにしてください。それと治るからといって、怪我ばかりしないように気を付けてくださいね」

「ありがとう、しのぶ。色々お世話になりました。甘味たくさん持ったから大丈夫だし、怪我も気を付ける」

し「はい。冨岡さんには、ここを出ることを伝えたんですか?」

「うん。人間に戻れる方法の手がかりになるかもしれないからって、ちゃんと文には書いたよ」

し「それならいいんです。白夜さん、くれぐれもお気をつけて」

「うん、ありがとう。行ってきます」





そしてオレは歩きだした




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「えっと…この辺りのはずなんだけど」



キョロキョロしていたら、『おい。』と話しかけられた


愈「銀髪に狐の面…お前が白夜か?」

「そうだけど、君が炭治郎の言ってた、愈史郎さん?」

愈「…約束通り、1人で来たようだな」


あれ…無視された

一応オレがどんな風貌をしているか、炭治郎経由で伝えてもらったから、それを見て声をかけてくれたんだろう

1人で来い、というのも、恐らくオレが無惨と繋がっていたら危険だと思ったからだよね


「うん、1人だよ」

愈「…ついてこい」



そう言って愈史郎さんは歩きだす

…うーん、オレ初対面から嫌われてる?
いやいやでも炭治郎から、愈史郎さんはいい鬼だって聞いたし!


愈「誰にも見られてないうちに、こっちへ来い」

「え?壁…じゃないの?」

愈「俺の血鬼術で隠してるんだ。さっさと来い」

「は、はい!」



言われた通り壁に向かって歩けば、するりと抜けた


「すご…」


こういう血鬼術もあるんだなぁ


そして、すり抜けた先には家が立っていた


愈「いいか。今からあの方の所へ連れていく。くれぐれも、失礼のないようにしろ。それから、あの方に傷一つ付けてみろ。お前を絶対に許さない」


「は、はい…」


ものすごい威圧感



そして、オレは愈史郎さんに案内されて屋敷へ入っていく


愈「珠世様、失礼します」


「あ…」



そこにいたのは、想像していたよりもはるかに綺麗な人…いや鬼か


珠「はじめまして。珠世と申します」

「はじめまして。白夜です」

珠「白夜さん、炭治郎さんから話は聞いています。人間の頃の記憶を思い出したとか」

「はい。思い出すきっかけをくれた人がいて。あ、すみません。ずっと面をしたままだと失礼ですよね」


オレはすぐに狐の面を取った


愈「…おまえその目!!」

珠「愈史郎、落ち着いて。白夜さんに敵意はありません」


オレの目に刻まれた『上弦 零』の文字に、すぐ反応した二人

そりゃそうだよね
普通なら十二鬼月だもん


「驚かせてすみません。無惨が勝手にオレに与えたもので…でも誓ってあなたたちに危害を加えることはしません!」

珠「分かっています。あなたに悪意は感じませんから」

「ありがとうございます…」

愈「……」


まだ愈史郎さんは睨んでるけど


珠「それで、私に聞きたいことというのは…?」


「…はい。炭治郎から聞きました。人間に戻れる薬は作れると」

珠「…はい、その通りです。ですが、今はまだ鬼舞辻に近い鬼の血が足りていないので、なかなか進まないんです」

「…あの!それなら、オレの血はどうでしょうか。オレは大量に無惨の血を与えられました。オレの血なら、やつに一番近いと思います」

珠「白夜さん…いいんですか?」

「はい。オレは、人間に戻りたい。そのためなら、いくらでも血を採ってもらって構いません」


珠「分かりました。白夜さんは鬼になってまだ日は浅いですか?」


「え?そうですね…まだそんなに経ってないと思います」


珠「…そうですか。でしたら白夜さんの血を使えば、白夜さんに効く薬はすぐに作れるかもしれません。禰豆子さんは鬼になって2年ほど経過しているので薬を作るにはもう少し精度の高いものが必要ですが、白夜さんはまだ日が経っていないので、多少精度が低くても効くはずです」


「本当ですか!?」


珠「はい。少しお時間いただいてもよろしいですか?」

「はい!良ければここで待たせてもらってもいいでしょうか?」

珠「はい、大丈夫ですよ」




その後、珠世さんに血を採ってもらい、オレは薬ができるまでゆっくりすることにした




愈「おいお前」


縁側に座っていたら、愈史郎さんに声をかけられた



「愈史郎さん。あの、オレ白夜っていう名前があるんですけど…」


愈「なぜ人間に戻りたいと願う?」


やっぱり無視されるのね…


「…愈史郎さんは、一生を共に添い遂げたい。そう思える大好きな人っていますか?」


愈「…急に何の話だ」


「オレはいます。一生を共に添い遂げたい人が」


愈「…それは、人間なのか」


「はい。オレはその人と同じ時間を過ごして、同じように歳を取って、そして、一緒に死を迎えたいんです」


愈「…そんなに好きなのか、その人間が」


「…はい!大好きです」


愈「…まぁ、その気持ちは分からないでもない」


「愈史郎さん…」


愈「…仕方ないから、ゆっくりしていけ。珠世様には近づくなよ、白夜」


「はい、ありがとうございま…え?今白夜って言いました!?」

愈「その敬語も鬱陶しいから普通でいい」

「じゃあ愈史郎!今オレのこと名前で呼んだよね!?」

愈「うるさい」

「嬉しいなぁ。愈史郎は珠世さんのこと、好きなの?」

愈「急になんだ」

「いや、なんとなく」


愈「もはや好きというものは通り越している。今はただ、珠世様のそばに居られればいい」


「そっか」


いいよね、そういう関係も



愈「白夜はなぜ鬼になった?」

「急に連れ去られて、無理やり鬼にされたんだ。よく分かんないけど、無惨がオレのことを気に入ったっぽくて…」

愈「なるほど。鬼にすれば美しい容姿のまま、ずっと生きている。つまりはそういうことだろう」


「…オレは永遠の命より、今ある一瞬の大切な人との時間が何より欲しい。たとえ命が尽きたとしても」


愈「そうか」



炭治郎が言っていた通り、愈史郎っていい鬼だ



愈「…白夜の好きな人間の名前は?」


「…義勇。冨岡義勇っていうんだ」


愈「…そいつも、鬼殺隊なのか」


「そうだよ。すごくカッコ良くて優しくて強くて…」


愈「そこまで聞いてない」













(ごめんごめん。好きな人のことって、語ると止まらなくなるんだよね)
愈(……確かにそうかもしれない)
(え?)
愈(なんでもない!!)
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