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第拾参話


この日はなぜか珍しい訪問者が来ていた


しのぶに、完全に治るまで休むように言われ、オレはお言葉に甘え、ベッドに入っていたのだが




コンコン、と扉を叩く音

ちなみにオレの部屋は誰かが不用意に入らないよう、扉のところに『柱以外立ち入り禁止』と貼られているのだ


「はーい。どちら様?」


とりあえず返事をしてみた

義勇?ではないよね
任務に行ったばかりだし


伊「俺だ。伊黒小芭内だ。入ってもいいか」


え?
小芭内?


「どうぞ」


どうしたんだろう、オレのところに来るなんて



伊「ふせっているらしいな。鬼なのに治りが遅いのか」

「あー、うん。甘味不足だったのが後に引いてて。それよりオレに何か用事でもあった?」

伊「いや…。ただ、白夜とこうして落ち着いて話をする機会が今まで無かったからな。こういう時でもないと話せないだろ」

「…確かに。鬼になる前からオレ任務続きで、柱合会議さえ行けなかったもんね」

伊「…白夜、聞きたいことがある」

「うん?」

伊「……甘露寺の好きな甘味を教えてくれ」


いやぁ、さすがぶれないなぁ


「それがここに来た理由だね?分かりやすいなぁ」


伊「し、仕方ないだろ!よく甘露寺と一緒に甘味処に行ってるのは白夜しかいないんだ」

「まぁいいけど。そうだなぁ、蜜璃がよく食べてるのは…」


オレは小芭内に色々教えてあげた



「でもやっぱり一番は桜餅みたい」


伊「なるほど。白夜、助かった。感謝する」

「どういたしまして」

伊「礼と言ってはなんだが、これを渡しておく」

「ん?あ、甘味!ありがとう!」

伊「こちらこそ色々教えてもらったからな」

「小芭内、お願いがあるんだけど」

伊「なんだ」


「…義勇と、もう少し仲良くできないかなぁなんて」


小芭内は少し黙り込んだあと



伊「…無理だな」

「え」

伊「冨岡とは根本的に合わない。あいつの考えていることすら分からないしな」

「…うーん。柱合会議前はいつも離れたところに1人でいるってしのぶに聞いてさ…なんか、寂しいなって」

伊「…お前がいてやればいいだろ」

「え?」


伊「お前が一緒にいれば、冨岡が1人になることはない。まぁお前が冨岡といるのは不服だが」


「む、なるほど…いや、そういう問題じゃないような…」

伊「冨岡だって、俺たちよりお前が一緒のほうが嬉しいだろ」

「そんなこと…。きっと義勇だって柱のみんなと仲良くなりたいと思ってるはず……」

伊「冨岡がどう思っているかすら分からないからな。俺には無理だ」

「そっかぁ…まぁ無理にとは言えないしな」

伊「白夜、今度時間があれば一緒に甘味処にでも行かないか?次はもっと明るい場所で話がしたい」

「うん、そうだね。オレとしては義勇も一緒がいいけど」

伊「それは却下だ」

「えー…」

伊「それじゃあな。早く怪我を治せ」

「うん、ありがとう」



小芭内はそう言って部屋を後にした



「…小芭内とあんなに話したの初めてかも。人間だったころは任務任務で、柱のみんなとなかなか会えなかったからなぁ」


昔を思い出しながら干渉に浸っていた時

また扉を叩く音が



今度は誰だろうと扉を開ける



実「よぉ」

「実弥…!」


不死川実弥がやってきた


「どうしてオレのところに…」

実「お前がここにいるって聞いてな。飢餓状態で怪我が治らなかったとかなんとか」

「そっか…あはは、情けないことにね」

実「鬼になる前はこんなふうに怪我して休むなんてことなかったのによ」

「確かにそうかも…鬼だから怪我なんてすぐ治ると思って油断してたのかもしれない」


実「たくっ、気を付けろ」


「…ごめんね、実弥。鬼のオレがまだ鬼殺隊にいるの、嫌だよね。ほんとなら、自死しなきゃいけないのに」


実「冗談でもそんなこと言うな。お前を生かすと決めたのは柱全員の意思だ。それにな、自死なんてしたら冨岡を裏切ることになんだよ」

「え?」

実「普段は全く喋らねぇやつがだ。お前を生かすために俺たちに頭下げて懇願したんだ。冨岡を擁護する気はねぇが、せめてお前は冨岡を裏切るようなことはすんじゃねぇ」


「………」


それを聞いたオレは色んな思いが込み上げてきて、気が付いたら涙が溢れていた


実「白夜…!?」


「ごめんっ…そうだよね…義勇がいなかったらオレ、どうなってたか。義勇のためにも生きなきゃだめだよね…」


実「…おぅ」


「…嬉しかった…義勇がオレのこと大事に思ってくれてることもだけど。実弥が義勇のためにそこまで言ってくれたことが…」


実「なんだそりゃ。つか、別に冨岡のためじゃねぇからな!」

「…ふふ」

実「笑うんじゃねぇ!」



以前柱合会議でバチバチに言い合っていた二人だが、あの時は柱として自分の意見をぶつけ合っていただけ

仕事以外の時は、普通に仲が良かったりするのだ


「ありがとう、実弥」

実「…礼を言われるようなことはしてねぇ。そうだ、これ。見舞い用の菓子」



手渡されたのは


「これ、おはぎだ…。あれ?でもおはぎって実弥の好物なんじゃ…もらっていいの?」

実「見舞い用つっただろうが。四の五の言わず食えばいいんだよ」


「…ありがとう、実弥」



口は悪いけど、ほんとは家族思いで、鬼殺隊にいるらしい弟のことをとても心配している優しいお兄さんなんだよね



実「そんじゃ俺はもう行く。それ食ってさっさと怪我治せ」


「…うんっ、ありがとう」











(…今日はなんだか、珍しい人たちと話せて、楽しかったし、嬉しかった。たまにはこういうのもいいな)
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