第拾参話
義「白夜」
「ん?」
義勇が何やら大きな包みを取り出した
その包みを開くと…
「これ…!」
義「白夜がよく食べている甘味をたくさん買ってきた。これを食べて、早く元気になれ」
「義勇……ありがと…」
義勇はほんとに優しいな
「あ…どうしよ…オレまだ身体が思い通りに動かなくて。手に力が入らないんだよね…もう少し回復してからにするよ」
そう伝えたら、義勇は突然買ってきた甘味を自らの口に入れた
「…?義勇…?」
一体どうしたのかと思った瞬間
「んっ…!!?」
気付いたら、目の前に義勇がいて。
口付けをされたかと思えば、オレの口の中に甘味が入ってきた
義「…どうだ。これなら甘味も食べれて口付けもできる。一石二鳥だ」
いや、一石二鳥て……
こちとら心の準備もしてないよ!!?
「…びっくりした」
まさか口移しとは思わなかった……
「でもおかげで少し身体が動くようになって……ん!!?」
再び甘味を口移しで与えられる
「…っ、んんっ!」
義「食べたか?」
「いや、あのほんとに…もう身体動くから……自分で食べられます…」
義「………」
あ、義勇がちょっとしょんぼりした
「…しょうがないなぁ。じゃあさっきは口付けだったから、次はぎゅってしてほしい。義勇に抱きしめられると、すごく落ち着くから」
義「分かった」
そう言うと、義勇はすぐにオレを抱きしめる
そうそう…これなんだよね
オレが好きなの
すごく安心する
義勇の体温も、匂いも、声も全てが
「…オレ、贅沢だなぁ」
義「贅沢?」
「だってさ、義勇って顔もいいし優しいし強いから、きっと女の子にモテたりするでしょ?そんな義勇をオレが独り占めしてるのが贅沢だなって」
義「それは俺の台詞だ」
「え?」
義「お前は誰にでも愛されている。柱の者たちも皆白夜を好き好んでいる。そんな白夜をこうして抱き締められるのはとても贅沢なことだ」
「義勇…」
あぁ、幸せだなぁ
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し「それで?二人で寄り添いながら寝ていたと」
「…はい」
朝様子を見に来たしのぶに、義勇と二人で抱き締めながら寝ていたのを見られてしまったのだ
し「個室とはいえ、白夜さんの様子くらい私だって見に来ます。くれぐれも、ここで変なことはしないようにお願いしますよ?」
義「…承知した」
し「全く…。どうやら白夜さんの怪我もだいぶ治っているようですね。でも、無理は禁物ですよ?任務要請がくるまではここで大人しくしていてください」
「分かった…。」
し「歩き回る時は、必ず面を着けてくださいね?」
「はい…」
し「冨岡さん。外であなたの烏が待っています。任務要請かと思いますので行ったほうがいいですよ」
義「…分かった。すぐに行く。白夜、俺は任務に行ってくる。ここでゆっくりしていろ」
「うん。そうさせてもらうよ。気を付けてね、義勇。色々ありがとう」
義「あぁ」
義勇は名残惜しそうな顔をしながら任務へと向かっていった
し「白夜さん」
「ん?」
し「…邪魔をしてしまって、申し訳ありません。でも、白夜さんは鬼とはいえ、飢餓状態が完全に治まっているわけではないので、どうか安静にしていただきたいのですよ」
「しのぶ……」
し「屋敷の中は自由に行き来していただいても構いません。くれぐれも無理はしないように、お願いしますよ?」
「分かった。ありがとう、しのぶ」
しのぶは優しい笑顔で部屋を後にした
「…あ、義勇が持ってきてくれた甘味。せっかくだから食べようかな。身体も動くようになってきたし」
うん、美味しい
「…義勇、いつ帰ってくるかな。って!!何今の…!オレ女々しすぎでしょ…!さっき任務に行ったばっかなんだから!」
あー…
義勇に抱き締められてた時間が幸せすぎて、今のこの時間が物足りなさを感じてしまう
「あー…どうしようもないくらい好きだ…」
(早くあの手で、抱き締めてほしい…)