第拾参話
義「…!あそこか」
白夜のカラスに連れられ、義勇は白夜のもとへ
義「白夜…!!」
義勇は白夜の血だらけになった姿に動揺した
義「血が止まっていない…、なぜ傷が塞がらない!?」
あれ…、声が聞こえる
「…ぎ、ゆう…?」
一瞬だけ見えた義勇の顔
「…オレは夢でも見てるのかな」
義「夢じゃない。白夜、何があった」
「……」
白夜は義勇の顔を見るなり、再び意識を失った
義「白夜っ!」
義勇はすぐに白夜を抱え、走り出す
義(…あそこにいけば、傷が治らない原因が分かるかもしれない)
し「…こんな朝早くからどちら様…って、冨岡さん?それに…白夜さん…!?一体何があったのですか!?」
血だらけの白夜を見て、驚くしのぶ
義「詳しいことは俺にも分からない。突然白夜のカラスが俺のところに来て、白夜が動けないと叫んでいて」
し「見に行ったらこの状態だったと」
義「あぁ。鬼なら傷はすぐ治るはずなのに、白夜の傷が治っていない。胡蝶、白夜を看てくれ」
し「…分かりました。白夜さんを中まで運んでください」
義「分かった」
診察室のベッドに白夜を寝かせる
し「診察をするので、冨岡さんは待っていていただけますか?」
義「…承知した。白夜を頼む」
そう言って義勇は診察室から出た
それからしばらく経った頃、しのぶが出てきた
し「…冨岡さん、個室に移動させたいので、白夜さんを運んでいただけますか?」
義「…それはいいが、白夜は大丈夫なのか?」
し「…一応止血剤は打ちましたが気休め程度かと思います。そして白夜さんの状態ですが、おそらく重度の飢餓状態に陥っていると思われます。そのため回復力が急激に低下し、治りが遅くなっているんです」
義「飢餓状態…」
し「白夜さんのことですから、鬼になってしまった後ろめたさがあって、任務に没頭し、甘味補給するのを忘れていたのかもしれません。なので、白夜さんが目を覚ましたらたくさん甘味を食べさせてください。そうすればすぐに傷も治るはずです」
義「…承知した。白夜は個室に運べばいいんだな?」
し「はい。他の隊士に白夜さんが鬼だとばれてしまわないよう配慮して個室で様子を見ます。それなら冨岡さんも来やすいでしょうし」
義「…助かる」
義勇は白夜を個室へと運び、寝かせた
義「…白夜、いつもの甘味を買ってくる」
眠っている白夜にそう呟くと、義勇は蝶屋敷を後にした
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甘味をありったけ用意し、義勇はベッドのそばの椅子に腰かける
義「…白夜、早く目を覚ませ……頼む…」
義勇は白夜の手を握り、目を覚ましてくれることを願った
そしていつの間にか眠ってしまった頃
……あたたかい手だ
いつもはオレより冷たいのに、今はオレのほうが冷たい
この手を、オレは知っている
「………」
オレはゆっくりと目を開けた
そこにはオレの手を握りながら眠ってしまった義勇がいて
「…やっぱり義勇だった」
手を握り返したら、起きるだろうか
あれ、あんまり身体が動かないな
飢餓状態だからか
血もたくさん流してしまったらしい
身体に巻いてある包帯が血で滲んでいる
残っている力で、義勇の手を握り返してみた
義「…っ!!」
さすが全集中常中ができる柱の1人だ
一瞬で起きた
「…義勇」
義「白夜…っ!目を覚ましたんだな…」
「…うん。迷惑かけちゃったね。ごめん」
義「そんなことはいい。白夜、何があった?どうして白夜ほどの強い者がこんなに血だらけになる!?」
「…任務に向かう途中、甘味補給するの忘れてたことを思い出したんだけど、軽度の飢餓状態だったし動けたから、さっさと鬼を倒して帰ろうと思ってたんだ。そしたら…」
義「そしたら、なんだ」
「…突然目の前に、上弦の参が現れた」
義「上弦の参だと…」
「そう。彼はオレがどれだけ強いのか知りたくて探してたらしい。そしてオレを見つけて戦いになったんだ。途中夜明けも近くなって、あいつは逃げたんだけど…」
義「そうだったのか…上弦の参相手に1人で戦うのは危険だということは俺にも分かる。白夜が鬼でなければ死んでいたかもしれない」
「…そうだね。杏寿郎でも勝てなかった相手だからね。鬼になって命が助かるなんて…情けないなぁ」
義「俺は白夜が生きていてくれれば、何だっていい」
「…ありがとう、義勇」
(義勇、ずっと手を握ってくれてたの?)
義(あぁ。握った時白夜の手がいつもより冷たくて不安になった…)
(ごめんね、不安にさせて)